「オリンピックで、私、通訳ボランティアをするつもりなのよ」と知人は言った。確か5年前の飲み会の帰り途のこと。「だから、今、英会話の勉強してるんだあ」「孫の世話しながら、毎日やってるの」と意気軒高だった。その後、一度電話で話しただけで会っていないが、ボランティアの件はどうしたのだろうか。
五輪組織委の前会長の森氏の暴言をきっかけに五輪ボランティアの辞退が続出したと報じられたのが2カ月前のこと。自民党の2F氏は「辞めたらまた集めればいい」と言っていた。今、ボランティアはどうなっているのか。3月16日付河北新報と4月23日付サンケイBizが宮城県の様子を報じている。
宮城の五輪ボランティア600人辞退か 不足の恐れ、計画修正も | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
感染拡大で辞退者続出、オンラインに変更…五輪ボランティア研修にも影響 - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト
これによると、宮城県の都市ボランティア登録者は、昨年の五輪延期前は1,781人だったが、コロナの感染不安などを理由に1,690人(今年3月2日現在)に減少し、現在の登録者は約1,100人ということだ。当初の人数から約35%の人が辞退したことになる。
全国には組織委と東京都が募集したボランティアが11万人、これに競技開催地ごとに募集する都市ボランティアが加わる。森発言で1,000人程が辞退したと伝えられたが、その後の状況について、大会組織委から説明はない。もし、この宮城県の辞退割合を組織委+東京都の11万人に当てはめれば、約4万人近くの方が辞退という計算になる。これでオリンピックが開催されたとして、大会運営や競技が円滑に進んでいくものなのだろうか。
鈴木耕さんが昨日「五輪ボランティアが激減しているらしい」とTweetしているが、看過できないことが書いてあった。
https://twitter.com/kou_1970/status/1385786964138336258
五輪ボランティアが激減しているらしい。組織委はそれを明かさない。だが、有料ボランティア(ヘンなの)を電通等が大募集始めたという。それほどボランティアは減っている。だから同じ仕事で有料と無料が出現。メチャクチャです。
“有料ボランティア” ―― すごいのが出てきた。4月21日付Yahooニュースが日刊ゲンダイの記事を伝えている。一部引用する。
東京五輪ボランティア「足りている」の裏で…アルバイト大量募集の怪(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース
大会開始まで100日を切った東京オリンピック・パラリンピック。国民の7割以上がいまだに反対しているが、聖火リレーなど開催に向けての既成事実だけは積み上げられている。そんな中、五輪名を伏せた奇怪なアルバイト募集が大量に行われている。
…………
サッカー計10試合を行う宮城県は、都市ボランティアの約1700人に意向を確認したところ、「参加できる」という人は66%しかいなかった。コロナ感染への不安のみならず、大学を卒業した、県外に引っ越した人など最終的には3分の1のボランティアの辞退が濃厚。宮城県の担当者は辞退者はさらに増えると予想し、「2人で当たる業務を1人に変更する」などするという。
これでは大会運営そのものが危うく、人員配置などを根本的に見直さなくてはならない。その折、なぜか急に人材派遣・イベント会社が「アルバイト」を大量募集し始めている。
しかも、実に奇妙なことに募集案内にはオリンピックの「オ」の字も出てこない。「夏季国際スポーツイベント」「4年に一度の“あの”スポーツイベント」「7月下旬~イベント」など微妙な言葉が並ぶのだ。商標権から東京ディズニーランドを「大型テーマパーク」と表示する例はあるが、勤務地を見ると、「有明テニスの森公園」「国立競技場」といった具合にバレバレ。今回はなんと「東京2020オフィシャルサポーター」を務める「パソナ」ですら、「世界的スポーツ大会の競技会場で働けるチャンス」「時給1600円」「仕事内容はお客様の誘導」と五輪名を出さずに募集している(派遣スタッフは別)。
■求人会社は「機密情報なので」と怯えた様子
神経質過ぎる動きだが、日刊ゲンダイが複数の業者を問い合わせても口を揃えてノーコメント。ある業者に「募集しているかだけでも教えてほしい」とお願いしても、散々たらい回しされた揚げ句、「機密情報であるから教えられない」と驚きの回答が……。再度、「ネットの求人欄に時給1300円で、メディアへの食事提供と業務内容も詳しく出ていますが?」と食い下がってはみたが、女性スタッフが「上長が『機密だと言っている』ので」とニベもない。何かやましいところがあるのか、怯えている様子さえある。
こうなると、ますます怪しい。念のため、他の派遣会社の求人内容も紹介しておくと、「テニス会場での受付や誘導」「オリンピックスタジアムエリアでの入場者の案内」「選手村内食堂での選手への飲食サービス」「記録計測等のIT機器のセットアップ」などボランティアの業務とほぼ重なっている。
……組織委員会の広報担当者に聞いてみた。
「そういったアルバイトの求人は組織委員会として把握していません」……
晴海の選手村でのアルバイトは、時給1300円(夜勤は1625円)。ボランティアはどの会場に派遣されるか分からないが、こちらは勤務地先が確定している。水泳の池江璃花子選手らに会える可能性も確実に高いだろう。ただ、「選手への接触・撮影・SNS発信等は一切できません」と秘密厳守を求められる。
■テニス会場スタッフは「時給1400円」
また、テニスの大坂なおみ選手が見たければ、有明テニスの森の仕事は時給1400円。こちらは服装規定があり、白系のインナー、黒チノパン、スニーカー(ノーブランドかアシックス)だ。アディダスやナイキの靴が駄目なのは、恐らくアシックス社が「東京2020ゴールドパートナー」でお金を出しており、間違ってテレビに映ったらマズイからだろう。
善意の気持ちから“無給”のボランティアとして働く人のためにも、あまり積極的に勧めたくはないが、同じ仕事をして“お給料”までいただける。もちろん、大会や選手を盛り上げたいとする気持ちは同じはずだ。
東京五輪のホームページには《オリンピック・パラリンピックの成功は、まさに「大会の顔」となるボランティアの皆さんの活躍にかかっています!》と書かれている。何かがおかしい、と言わざるを得ない。
出所はわからないが、ARAI Shin-ichiさんが紹介しているこんな記事も見た。
ARAI Shin-ichi on Twitter: "これか?… "
これはもう無茶苦茶と言うしかない。しかも、この「有料ボランティア」の時給は、例によって中抜きされている可能性が濃厚で、原資の詳細は闇の中である。
見えない予算:「守秘義務で…」五輪担当相、人件費詳細把握できず | 毎日新聞
こんな偽善と虚飾にまみれた行事を、なぜ、国難の、それ以上に、世界的災禍のさ中に催行する必要があろうか。
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