ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

アベノミクスの後始末

 「アベノミクス」の私的定義:安倍政権下の経済政策の呼称(自称)。その勘所は株式市場に大金を注ぎ込み、株価を実体よりも「水増し」させ、日本経済が好調であるかのように偽装すること。「憲法改正」のための目くらましのひとつ。安倍政権の“主”はあくまで「憲法9条改正」であり、経済政策は“従”である。したがって、極論すれば、「憲法9条を変えた男・安倍晋三」という自己満足の「称号」が手にできるなら、経済社会が将来的にどうなろうが知ったことではない、ということ。

 2012年12月に政権の座に返り咲いた自民党安倍晋三は、下野している間に温めていたと思われる政策スローガンを打ち出し、新味を出すことに傾注する。「アベノミクス」はその大黒柱だった。その先棒を担がせるべく、2013年3月日本銀行(日銀)総裁に黒田東彦(はるひこ)が据えられる。期待(指示?)通り、黒田は「異次元金融緩和」を開始。それまで残高上限2兆1,000億円と設定されていた日銀のETF(上場投資信託)買い入れの上限を取っ払い、市場への膨大な資金供給を重ねていく。(下参照)。
 
 2010年10月 ETF買入残高上限 4,500億円
 2011年 3月    〃      9,000億円
 2011年 8月    〃     1兆4,000億円
 2012年 4月    〃     1兆6,000億円
 2013年 1月    〃     2兆1,000億円           
 2013年 4月 年1兆円増(前年に対して年間1兆円に相当するペースで増額)
 2014年10月 年3兆円増( 同年間3兆円 )
 2016年 3月 年3兆3,000億円増
 2016年 7月 年6兆円増
 2020年 3月 年間約12兆円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う
               (日興アセットマネジメント作成)
https://www.nikkoam.com/products/etf/we-love-etf/kihon/kihon12


 もちろん当初からこれほど膨大な額になるとは思っていなかっただろうが、その結果、5月27日に発表された2019年度決算で、日銀のETFの3月末の保有額は約31兆2,000億円(時価ベース)に膨らんでいる。日銀は3月に今回の新型コロナウイルスによる経済危機で、保有額をさらに増やすと発表しており、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をも上回ることになるという。これはつまり、日銀と年金積立を合算すると60兆円を超える大金(公金!)が株式市場に投入されていることになる。

日銀、年内にも日本市場最大の株主に 先進国では異例 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

 今回のコロナ禍で株価は大暴落しており、その下支えとして大量の資金投入もやむを得ないとみなされがちだが、安倍政権の昨今の“火事場泥棒”ぶりを考え合わせると、コロナで損失を出した株主への損失補填に見えなくもない。だが、他に打つ手がないのも確かで、株価が下がれば資金を入れ、また下がればさらに資金を入れなければならないという泥沼にはまっていて、「出口」はほとんど見えない。

 この後始末はどうつけるのだろうか。事態はかなり深刻で、一見株式と無関係に暮らしている人々も、今後年金をはじめあまねく巻き添えにされることは避けられそうにない。「みんなで痛みを分かち合いましょう」などという能天気な話では済まないだろう。………そのとき“責任”をとるべき輩はどうしているか?
 政治にしろ、経済にしろ、これまで当該責任者にひとつひとつ責任をとらせてこなかったツケがここにも現れているのかもしれない。それにしても……である。



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