ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

マフィアと政府の原風景

 時事通信の今月7月の世論調査(7月9日~12日実施)によると、内閣支持率は29.3%(ー3.8)で、不支持率は49.8%(+5.6)となった。支持率が3割を切るのは、スガ政権では初めてであり、内閣としては「加計学園」問題で揺れていた前アベ政権の2017年7月以来、4年ぶりのことだという。
菅内閣支持29.3%、発足後最低 初の3割割れ―時事世論調査:時事ドットコム

 支持率下落の要因はいくつもあるだろうが、飲み屋さんや酒問屋に対する「圧力」問題は大きい。酒類の提供を拒む飲食店の情報を取引銀行(金融機関)に流すとか、グルメサイトに情報を上げてもらうとか、やることが「陰湿」で、まともに問題に向き合おうという姿勢がない。お店や問屋が悪意で要請に従わないとでも本気で思っているのだろうか。――お店にとっては死活問題だ。「自公以外に投票」を呼びかけるポスターが拡散するのも当然の成り行きと思う。
「自公以外に投票」ポスターがネットで拡散、飲食店5万店への掲示目指す | Buzzap!

 関係文書が発覚するにしたがい、これが「政府ぐるみの要請」だったことが明らかになっている。しかし、政府は最初に発言した西村大臣に責任をかぶせて逃げ切ろうとしている。西村大臣は一人、ボスの代わりに泥をかぶるのだろうか。

 こういうのを見るにつけ、日本の政府が「マフィア」か「暴力団」と変わらないとよく思う。しかし、遡ってみると、これもあながち的外れではないかも知れない。
 我々は一応民主制国家で生活している。民主主義政府を組織し、法律を守り…などと、繰り返し繰り返し教育されてきた。「社会契約説」ではないが、市民は政府と一種の「契約」関係にあり、身の安全や財産を守ってもらう代わりに政府に一定の権力行使を認めるし、その財源となる税を負担する。身の安全と税のバーターなら封建社会の領主と領民にの間にも同じような庇護関係はあるが、近代民主制国家の場合、もし契約違反が判明すれば、革命や選挙で、政府を作り替えてもいいことになっている。もっとも旧体制の封建社会であっても、あまりにひどい領主は領民から袋叩きにされることはあっただろうが…。

 しかし、そもそも成立段階の政府権力を見た人はいない。生まれて気がつけば、だいたいの人はみんなすでに国家の一員である。「社会契約」は、理屈はわかるが、後付けの話に過ぎず、スタート時点で市民間に政府形成にあたっての合意があったということ自体、壮大なフィクションである。むしろ、「地域暴力団」同士の抗争が「広域化」し、勝ち残った「暴力団」が最終的に自らを正当化するために「政府」を称し、民を支配したというのが実態ではなかろうか。現在は事実上壊滅状態にあるが、「イスラム国」は国家の原初の姿をよく示していたように思う。

 今の政府も、国家成立の原風景、あるいは「記憶」をどこかに残存(温存)させている。時折「暴力団」によく似た相貌を見せるのはそのせいではないか。しかし、その「暴力団」であっても(いや、それゆえに?)、1930年代の大恐慌のときにアル・カポネは窮乏する人びとに向けて炊き出しをしているのだ。これと比べ、ひたすら酒の提供を敵視し、飲み屋の締め上げに邁進する今の日本政府の姿は何なのか。マフィアの人道にももとるということか。

 それでも日本国は「暴力団」とはちがって一応民主制国家だ。政府は「ボスの下に」ではなく「国民のために」を、その存在意義としている(はず!)。「社会契約」論はともかく、国をどうするかは国民の意思に委ねられているはずだ。

追記)7月16日付「東洋経済」の泉宏氏の記事も参照いただきたい。
菅政権は末期に、酒取引停止問題で露呈した限界 | 国内政治 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース


↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村

 

「偉い人が見るためだけのオリンピック」

Bach,You are liar!…

確かにそう聞こえた。
小池都知事との会談のため東京都庁を訪れたIOCバッハ会長らが記念撮影に並んで、しばらくすると男性の声が響いた。

Bach,You are liar! Airport is dangerous! Bubble is broken!

小池都知事から笑顔は消えたが、バッハは平静を装っているように見えた。

バッハ会長に「お前はウソつきだ!」と罵声。小池都知事との記念撮影でハプニング | ハフポスト

東京オリンピック開幕まで一週間。甘く杜撰な感染対策があちこちで露呈し、感染爆発はもとより、大会中に悲惨な事故が誘発されるような嫌な予感もある。自分たちのオリンピックだ、何とか成功させようとみんなの意気が上がれば、不測のことでも何とかなるかもしれないが、負のスパイラルにある今、ちょっとしたことでも「おおごと(致命傷)」になりかねない。

五輪貴族(オリンピックファミリー?)と呼ばれる人びとは、こうしたムード(空気)を肌身に感じることはないのだろうか。作家の日野百草(ひの・ひゃくそう)が、五輪貴族とおぼしき外国人をよく乗せているというタクシーの運転手に話を聞いている。7月14日付、NEWSポストセブンの記事より引用する。

オリンピックファミリーをよく乗せるタクシー運転手「勝手にやってろ、ですよ」|NEWSポストセブン

 4度目の緊急事態宣言が決まった雨の東京、神田駅近く、個人タクシーを拾いしばし雑談。初老の運転手がオリンピックファミリーを何度も乗せたと語る。
「昨日の夜は外人さんを2人、六本木ですね。あと銀座に1人」
 オリンピックファミリー、こうして聞くとなんだかマフィアとか秘密結社みたいだが、そもそも自分たちで名乗ったのだから凄い。
「コロナの前は(インバウンドで)外人さんなんて珍しくもなかったけど、最近は外人さん珍しいんで、ああオリンピックが始まるんだなという感じです」
……
「どこの国の人かわかりませんが、恰幅のいい人でした。選手ですかね」
 さすがに選手ではないと思うし、彼らはむやみに都内を徘徊してはいないだろう(と信じたい)。乗せたのはオリンピックファミリーの中でも大会関係者、もしくは来日したスポンサー企業の関係者かもしれない。IOCは役員、選手や大会関係者で構成されるオリンピックファミリーにスポンサーも入ると明言している。

「あと先週は東京駅から豊洲の公園にも乗せましたよ。外人さんなんで選手村かと思ったらスルーでした」
 豊洲ぐるり公園は以前から穴場で酒が飲めた。選手村とは豊洲大橋を挟んですぐの場所だ。
「羨ましいですね、日本人なら怒られるんでしょうね」

 人間というのは基本、個々人それぞれの事情のみで動いている。当たり前の話だが、疫禍はその個々人を衝突させる。オリンピックをしたい政府、自治体、選手、そして金の絡む関係者のオリンピックファミリーと、そうではない企業や一般国民――前者は「別枠」で特別待遇、後者にはコロナ禍だから我慢しろ、それどころかお前たちのせいで蔓延しているくらいの勢いで責任を転嫁している。
「正直に言えば怖いですけどね、だって日本よりコロナ凄い国もいっぱいあるでしょう。私も1回目のワクチンは打ってますけど、本当に安心かなんてわかりませんからね」

 オリンピックファミリーは3日間の待機期間という「別枠」で自由に移動できる。IOCのコーツ調整委員長もバッハ会長も特例で来日した。一応、行動計画の提出というエクスキューズはあるが、その他オリンピックファミリーやスポンサーに関してはホテルで14日間の待機期間中となっていても、レストランやコンビニへは行っても構わないとなっている。レストランは個室が条件だが、そんなもの誰がチェックするというのか。選手村すら複数人での会食と感染を防げなかったのに。
「意味ないですよね。私もたくさん乗せましたけど、タクシー使えばあちこち行けるし、タクシーで繁華街のコンビニ行ったっていいんですから」
 まったくそのとおりで遊ぶ言い訳の「ちょっと遠くのコンビニまで」だって可能だ。衆目を気にしなければならないバッハ会長のような有名人はともかく、来日スポンサー企業の民間人など、オリンピックで来日した待機期間中の外国人とは誰もわからない。在日外国人との区別なんかつかない。それなのに、本来なら待機期間であるはずの来日外国人がオリンピックファミリーだからという「別枠」で街中に繰り出している。大会中はもっと増える。

「オリンピックファミリーじゃなきゃ外出るなって、面白いですよね」
面白いという言葉とは裏腹に、運転手さんの機嫌が悪くなっているのが声色でわかる。この「オリンピックファミリー」はIOC委員など3千人余、各国オリンピック委員会の関係者1万4800人余を指すが、IOCによって実質的にスポンサー企業や代理店とその関係者も「ファミリー」に迎えられた。1都3県は完全無観客となるが、彼らオリンピックファミリーは一般観客を締め出したスタジアムでゆったりと、文字通りのVIP待遇で観戦する。
「勝手にやってろ、ですよ。あ、これ書いちゃっていいですからね」
 意気投合したのかすっかりぶっちゃけてくれた。「勝手にやってろ」これほどまでに一般国民興ざめのオリンピックがあっただろうか。確かに関係ないのだから勝手にやればいいとなる。
「どうせオリンピックファミリーじゃないし」
 これ、日本中の一般国民の気持ちを代弁してくれたような気がする。「どうせオリンピックファミリーじゃないし」いい言葉だ。以前、吉祥寺で取材した飲食店の店主は「他人のメダルなんてどうでもいいよ」と言っていた。これまた力のあるいい言葉だ。感動、興奮、メダル何個と大騒ぎ、国威発揚オリンピック大好きの日本人だったはずなのに。一般国民は自国開催なのに観客席には入れてもらえないどころか「オリンピックファミリー」にも入れてもらえない。つまりオリンピックにとって日本の一般国民なんて赤の他人だったということか。
……

なんだか偉い人が見るためだけのオリンピックになっちゃいましたね
 無観客でオリンピックファミリーだけが観戦するのだから、そういうことになるのだろう。来日しても別枠で待機期間もなし崩し、好き放題のオリンピックファミリーを尻目に日本の一般国民はひたすら我慢の日々である。封建時代の小作人はこんな気持ちだったのか。コロナが収まらないのも緊急事態宣言も一般国民のせい、ウガンダが撒き散らしても一般国民のせい、フランス、エジプト、スリランカ、ガーナ、セルビアと陽性患者が来日しても一般国民のせい、これからもオリンピックファミリーがコロナを撒き散らしても全部一般国民のせいになるだろう。オリンピックファミリーを特別扱いした一般国民に対するエクストリーム責任転嫁が続くだろう。エビデンスはなくともオリンピック様は「別枠」なのだ。
 いつの間にか一般国民のせいになった「一億総懺悔」、この令和にも健在である。

 太字は当方が施した。

「一億総懺悔」とは「一億総無責任」、つまりは、誰も責任をとらないことの裏返しだ。しかし、東京五輪の開催に、スガやバッハと一般国民が、同等な責任を負っているはずもない。「一億総懺悔」とはスガやバッハなど、「偉い人」の責任を不問にするためのスローガンだ。「偉い人」にはしかるべき責任をとらせないといけない。



↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村

バッハの顔がこわばるとき

 Web上で「#次にバッハ会長がしそうなこと」というハッシュタグがトレンドになっているという。どれどれと眺めてみると……。うーん、みなさん、さすがだ。

News about #次にバッハ会長がしそうなこと on Twitter

たとえば、
「広島訪問中、フクシマと言い違う」
〇「菅さんに挨拶する時に『 Hello Abe 』と言う」
〇「開会式の日に間違えてここ(百貨店のOlympic)に行ってしまう。」
〇「ベンツに乗りながら、iPhone片手に、ペプシコーラを飲む。」

 * 注)ワールドワイドオリンピックパートナーにはトヨタサムスン、コカコーラの名が…。
 「youは何しに日本へ?(テレ東番組)でインタビューされちゃう」というのもあった(笑)。
 個人的には、こういうのは痛快で楽しいのだが、これだけで溜飲を下げるとなると、やはり「屈折」したものを感じる。何かもう「一撃」加えられることはないかと。たとえば、昨日14日、TBSの澤田大樹記者の質問に顔をこわばらせたバッハ会長のことを知ると、見える形で事実をつきつけていくことも大切だと思う。ここはジャーナリストの方々に少し頑張ってほしいと願うしかない。
 以下、日刊スポーツの記事より。

上機嫌一転「検査体制機能している」バッハ会長“違反”指摘に顔色こわばる - 東京オリンピック2020 : 日刊スポーツ

…上機嫌のバッハ氏は(菅首相との)面会後、取材陣から「(大会関係者向け規則集)『プレーブック』が守られていないとの報道もある。リスクがすでに日本に持ち込まれているのでは。約束違反では」と指摘されると、顔色がこわばった。「日本国民にリスクとなるプレーブック違反があったとの報告は、私のところには届いていない」と即座に否定。「検査体制はしっかりと機能している」とアピールした。
来日中の米国と英国籍の東京五輪スタッフ4人が麻薬取締法違反容疑で逮捕されたが、4人は逮捕前、東京・六本木のバーで飲酒していたという。プレーブックでは入国後の隔離期間が終わった後も原則、食事の場所はルームサービス、宿泊先レストラン、会場の食事施設を指定されている。コロナ対策の実効性が疑問視される事件も、日本国民のリスクにならないと示唆した形だ。

 続々と来日する外国人関係者のことばかりでなく、最前線で彼らと接触しているボランティアのことを「可視化」することも大事なことではないかと思う。ジャーナリストの田中龍作さんがこれを写真入りで伝えている。7月14日付記事より。

田中龍作ジャーナル | カメラが捉えた 選手村ボランティアが公共交通機関で媒介する世界の変異株

…選手村で活動するボランティアの数は明らかにされていないが、目視しただけでも夥しい数である。1千人を超えるのではないだろうか。
 ボランティアたちの多くは公共交通機関で移動する。選手村の最寄り駅は都営大江戸線の「勝どき」だ。
 ブルーのユニフォームに身を固めたボランティアたちが、途切れることなく駅に吸い込まれていく。
 世界の変異株が一堂に会する選手村から、都営大江戸線に乗り、ウイルスを東京中に運び出すのである。その後、ウイルスは東京から地方に拡散される。
 選手が陽性者でなくても、ウイルスの保有者であるケースは珍しくない。そのウイルスをボランティアが下界に拡散させることになる。悲劇である。
 ボランティアを責めるわけでは決してない。彼らこそ最大の犠牲者である。

 首都・東京の感染者数は昨日1,000人を超えた。専門家の予測よりも上昇ペースが早い。このパンデミックにオリンピックを強行する愚行に異を唱えないことは、これに同調(賛成)することだ。
 バッハ会長へ、まだ中止を諦めたわけではないから…。くれぐれも、次の挨拶でとちらないように願う。ただし、アソーに、「あなたは昔オリンピック選手だったそうですが、得意技は…?」(そりゃあ、スガの空手か?)とかいうんだったら大いに歓迎する(空手はまだオリンピック種目じゃなかったですね、お粗末…)。



↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村