ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

ビルマから その後

 堀潤さんが昨夜(2月17日)に配信した動画「国が壊れていく ミャンマーからのSOSに沈黙しないために」を見た。
 2月1日の軍によるクーデターから2週間以上が過ぎたが、現地でも、日本でも、人々の抗議行動が続いている。現地の様子や彼らの声を紹介する貴重な機会をつくった堀さんを労い、感謝したい。少しだけ要約して以下に記す。

https://www.youtube.com/watch?v=3rPpGdA5ICI&feature=youtu.be

——(ヤンゴンでデモに参加している女性に)連日どんな思いで抗議活動に参加しているのですか?

 怒りもあるし、自分たちの未来が暗くなっていくのを感じて、家にじっとしていられなくなった。家にいると涙が出てくる。他の人たちと声を上げようと思い、外に出た。毎日ではないけれど……。

——送っていただいた今日のヤンゴンの写真を見ると、たくさんの人々が街頭に出ているのがわかりますが、軍に対してどんなことを抗議しているのですか?
 
 私は今まで、軍というのは国を守る、国民を守るものだと思っていたが、国民を守らず、法律も守らずで、そんな軍人たちをどうして信用できるかということ。スーチーさんや大統領を自由にしてほしいと思う。

―—(在日ビルマミャンマー)人の)〇〇さんはいかがですか?

 このパンデミックの中でさしたる展望もなく、私利私欲にかられて起こしたクーデターだと思う。外資はすぐ反応していて、日本のスズキも工場の操業を止めたし、キリンも撤退を表明したりしているが、タイからドルは入ってくるし、中国マネーも(ビルマが「一帯一路」の域に位置していて)言うことを聞いとけば大丈夫だろうと思っている。今回の抗議行動ではメディアはゴム弾だと誤って報道しているが、実際には2日目に少女に実弾が使われて亡くなった。今も無差別の銃撃が起きているが、不気味なことに、死者数が出ていない。マンダレーでも弾圧があり、逮捕された人が生きて帰れるかわからない。今は数字が出てこないので、わからない状況だ。都市部では目立った制圧は起こっていない。嵐の前の静けさとは思いたくないが、今後、夜間に制圧に出たりとか、ドローンで放火したりとか、恩赦で釈放した元受刑者に暴動を起こさせたりして、そこで軍が国民を守りますと言って制圧をする。そういう卑劣なプロパガンダにいかに国際社会の視線が向くかどうか。これだけ日本を含めて世界に情報が伝わらないのは、ミャンマー鎖国政策に踊らされている証だと思う。

―—故障したのか、車が止まって道路をふさいでいる写真が見えます。こういうのがあちらこちらにあるようですが……。

 ミャンマーでは抗議の方法を外国の例から学んでいろいろと試しているが、これはミャンマー独自だと思う。車をわざと故障させて道を通れなくする。こういうのは日本ではないかも知れないが、乗用車だけでなく、バスとかトラックとか、人々の気持ちがまとまって、こうした行動に結びついている。何とか国際的な注目をひこうというのが目的だ。戦車も通れなくなるし……。今、公務員もたくさんボイコットに参加しているけど、中にはボイコットに参加しない職階の高い人もいて、彼らは車で出勤するから、彼らが登庁できないようにという意味もある。朝SNSで呼びかけられ、拡散して、みんなが動いた。

 SNSで呼びかけられてすぐにこうなったのがうれしい……というか。こんなにミャンマーの人々が団結して行動するというのがなかったので。このまま結束して進めたらいいなと本心から思った。見て、本当にうれしかった。

―—今までこれほどミャンマーの人が結束することはなかったということですが、今回結束が強いのはどうしてなんでしょうか?

 2011年の民政移行後に知識をつけ、今回の抗議行動の一翼を担っているのが「Z世代」(1990年代後半以降生まれ)だ。彼らは政治に興味がなく、温厚で穏やかだと言われてきた。しかし、NLD(国民民主連盟)のナンバー2の女性で、今回拘束されているナンキンさんも非常に驚いていると発信している。なぜ今回、1980年代の民主化革命を知らず、サフラン革命(2007年の反政府運動)のときも赤ん坊か子どもだった世代が、軍事政権に対する抗議行動に情熱を傾けるのか、非常に心強いと言っている。私もそうだ。80年代の民主化のときには3歳だった。でも、今のこの異常事態に対しては、国外にいても一緒に声を上げなければならないと思う。それはもちろん国民意識もある。しかし、それ以上にこれは異常事態だと思う。議会制民主主義を一夜にして破壊するクーデターを起こす、しかも、このコロナ禍に。こういうのを前例や「成功例」にしてはいけないと思う。他の国も同じだ。民主主義がどれだけ 微妙なラインで保たれているのか。あのアメリカでさえ、連邦議会に人が押し寄せるという醜悪な出来事が起こった。いかに法が大事か。それに対して、蝶をハンマーで叩くかのような、あるいは、赤子の手をもって叩きつけるような、そんな場面を見せられたのだ。ある程度の知識があれば、どう見ても、これは間違っていると思えるような事態だ。

——(映像を見ながら)夜なんですけど、住宅街でみんなで歌を歌っているんですね。

 これは革命の歌で、1988年に学生たちが歌ったものですね。

——こうやってみなさん携帯電話を照らして、夜に連帯の意思表示をしている。みなさんが暴力は絶対使わないと結束しているのには感銘を受けます。みなさんがそう考えるのはどういう理由なんですか?

 スーチーさんも非暴力をテーマにしてきた。暴力をふるわれても解決にはならないし、よい結果も得られない。リーダーたちが暴力で拘束されたけれども、自分たちは同じことはしない。けれども心の中に抑えておけない気持ちは伝えようということ。 

 この革命歌はKansasの Dust in the Wind の替え歌で、この歌は、1980年代の非暴力の革命が敗れ、国外に亡命する者もいる中、ミャンマーの山岳地帯に逃がれ、少数民族と合流し、武器をもって戦おうとした人たちのキャンプの中で、革命歌として歌われていたものだ。それが歌い継がれ、BBCを介してヤンゴンの都市部に流れた。それを今の映像のように全員が歌っている。心の中では武器をとって戦いたいという思いはあるが、それが叶わないということもわかっている。あまりにも巨大な軍。最新の装備が無防備な国民に向けられる。だから、夜になってこうして歌われている。そういうところをわかっていただけたらと思う。

——この映像は夜に赤い火の玉のようなものが地表に落ちて、炎が燃え広がろうとしているように見えます。ドローンによって放火されていると解説されているものですが、これについてはいかがですか?

 これは正体不明だ。けれども、釈放された受刑者が町を燃やそうとして捕まった事例がたくさんある。「捕まった」というのは警察ではなく(警察に突き出しても無意味なので)市民が拘束しているという意味だが、デモを収束させたいがために、ありえない話だが、2万何千人という受刑者を恩赦で釈放して火を持たせる。ところが、市民が彼らを捕まえるので、ドローンをつかって火事を起こす。これをフェイクニュースだという人もいるが、ミャンマーは今普通の社会常識ではあり得ない策略がなされている。


 警察からお金をもらって放火するようにと言われた子どもの映像もあった。怯えながら打ち明けている姿が痛々しい。

 情報発信が叶わない、情報が正確に伝わらないという、この状況、何とかならないか。少しでも手助けになれば……と。

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追記:2月19日、毎日新聞BBCが、9日に首都ネピドーであったデモに参加し、銃撃された20歳の女性が死亡したと伝えている。

ミャンマー抗議デモで初の死者 首都で銃撃受けた20歳女性 | 毎日新聞
ミャンマー抗議デモ、初の死者 重体だった20歳女性が死亡 - BBCニュース



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