ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

スガさん、総合的・俯瞰的に判断しなよ

 内田樹さんが「なぜ菅政権は最初にいきなりこんな「悪手」を打ってきたのか?」とTweetしている。
 本人は「悪手」だと思ってないからというのが一番妥当な答えなのだが、その理由(根拠)は、①学者と➁学問と③に対する“無知と無恥(慢心・傲り)”の現れなのでは……と今さらながらに思う。あとは、「前例の打破」とか言いながら、アベの「遺言」という「前例」はそのまま踏襲するというご都合主義。

 まず①学者について、内田さんの言(10月8日付)。
https://twitter.com/levinassien/status/1314035798941921281
 なぜ菅政権は最初にいきなりこんな「悪手」を打ってきたのか?それについて納得のゆく説明をまだ聴きません。学術会議にマウントしてみせることにそれほどの政治的優先性があるとは思えない。おそらく「学者は恫喝すればすぐに縮み上がる」という成功体験が官邸の気を緩ませたのだと思います。
 2014年の学校教育法改正でほとんど一夜にして日本中の大学教授会は「教授会自治」の権利を奪われました。そして大学は限りなく株式会社に似たものに改変された。でも、それに抗議して辞職した学者も、罷業した学者もいなかった。「なんだ学者ってまるでヘタレじゃないか」と政治家たちは思った。
 「大学人」は本質的に「サラリーマン」です。だから我が身大事で黙って「上」に従う。でも、「学術共同体=ギルド」に属する学者は「職人」的エートスを色濃く残す前近代的な存在です。その違いを政治家たちは見落とした。そして「職人の矜持」という虎の尾を踏んだ。という仮説はどうですか。

 ➁学問に関しては、静岡県知事で比較経済史を専門とする学者の川勝平太がこんなことを言っている(10月7日 定例記者会見)。
「菅総理の教養レベルが露見した」 日本学術会議問題で静岡県の川勝知事が批判(静岡朝日テレビ) - Yahoo!ニュース
 菅義偉という人物の教養のレベルが図らずも露見したということではないか。菅義偉さんは秋田に生まれ、小学校、中学校、高校を出られて、東京に行って働いて、勉強せんといかんと言うことで(大学に)通われて、学位を取られた。その後、政治の道に入っていかれて。しかも時間を無駄にしないように、なるべく有権者と多くお目にかかっておられると。言い換えると、学問された人ではない。単位を取るために大学を出られた」………
 「ともかく、おかしなことをしたと思うが、周りにアドバイザーはいるはず、こういうことをすると、自らの教養が露見しますと、教養の無さが、ということについて、言う人がいなかったのも、本当に残念です」…… 
 「公務員に対する任命権が自分にあるからとか、総括的にできればそれでいいとかおっしゃっているが、そんなの何も語っていないのに等しい。もし今度6人が落とされるのであれば、学問がなっていないということであれば、もっともな理由。それ以外の理由は、よほど法律に違反していない限り、そうしたもの(政治的発言)は言うに任せるということであり、信教の自由、学問の自由、言論の自由というのは基本中の基本で。そこに権力が介入して、権力の言う人たちだけになったら、御用学者ばかりじゃないですか。そんな人は学者じゃないです。まさに日本の学問立国に泥を塗るようなことではなかったかと、非常に心配しております。汚点です。なるべく汚点は早く拭った方がいいと思っている」……

 ③法については、憲法学者長谷部恭男氏石川健治が「立憲デモクラシーの会」の会見で、法秩序や安定性が揺らぐ危険性を指摘している(10月6日)。
*Choose Life Project作成の動画
Choose Life Project on Twitter: "「法秩序の統一性、連続性を破壊する行為」

学術会議が推薦した会員を菅総理が任命しなかった問題。政府は会員が公務員であることから「公務員の選定、罷免は国民固有の権利」と定める憲法15条を根拠に「問題ない」としています。それに対し憲法学者からはー。

#日本学術会議への人事介入に抗議する… https://t.co/rO3p6SUP2t"

以下、動画から起こしたもの

 10月7日衆議院内閣委員会で大塚幸寛内閣府官房長と三ッ林裕己副大臣が、憲法第15条・第1項「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」を根拠に、任命権者たる内閣総理大臣日本学術会議からの推薦の通りに任命しなければならないというわけではないと答弁している。
 
時間的な順番は前後するが(政府答弁の内容は前日と同じなので)これに対し、長谷部氏は、
公務員といっても各種様々な公務員があるわけでありまして、それについて「選定」とか「罷免」とかということが一律に言えるかというと、そんなことは言えるはずがない。それぞれの公務員に即していろいろな個別の制度がある。したがいまして、学術会議の会員に関して言えば、「学術会議法」という特別な法があるので、その具体的な建付けがどうなっているのか、それをすっ飛ばして憲法15条1項に「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」からというのは、どう考えても憲法論としては大変に乱暴な議論であります。
とコメントし、

 石川氏も、
『一般法』が『特別法』を破る*という不可思議な現象がこのところ続いているわけですね。『特別法』が『一般法』を破らないと法秩序の統一性が保たれません。憲法内部でも実は同じことがありまして、23条の学問の自由と15条(公務員の選定罷免)の関係を考えたら、23条が15条を破る関係にある。そうでないと、国立大学の教員というのは公務員でありましたから、15条に基づいていつでも罷免できるという理屈にならないとおかしいですよね。かりに公務員であるとしても、その前に大学人であり学問共同体の一員であるという実態の方を優先するというのが23条(学問の自由)の保障の意味なんですね。憲法レベルで『一般法』が『特別法』を破ろうとしている。きわめて危険なことをやっているという認識をもっていただければ、と思います。
と述べている。
*「破る」という表現よりも「蔽う」「上書きする」の方がいいという意見も目にした。

 スガさん、いずれにしても、総合的・俯瞰的な観点に立って判断したら、ここはまだ間に合うから、“撤退”するのが妥当だと思うよ。




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