今年の5月から全国の自治体で導入が進められてきた情報システム「HER-SYS」。コロナの感染者の情報を集約する国のデータベースということだが、システムがいまだに整備中で集計機能が使えないようで、感染者の「発症日」や「職業」などのデータを国は把握できていないことが判明した。今年の5月から導入が始まり、それから4か月。今までいったい何をもとに感染症対策を議論してきたのか。どうしてGo To キャンペーンを前倒しできたのか―—すべて“カン”ということらしい。
フロントガラスを曇らせたまま走行する一台のバス。しかし、運転手はワイパーをかけようとしない。おまけに、この運転手、すっかりやる気がなく、「ああ、早く休んでゴルフでもしたいなあ。休ませないと病気になっちゃうぞー。」などと乗客につぶやいている……という感じ。
以下、8月26日のNHKニュースより。
感染者情報の国のデータベース 一部データを把握できず | 新型コロナウイルス | NHKニュース
厚生労働省によりますと、国内の感染者の情報を集計する新しい情報システム、「HER-SYS」のデータは現在も分析に使用できていません。理由について厚生労働省は、「集計機能を整理中」と説明しています。このため、従来のデータベースで分析を続けてきましたが、HER-SYSへの移行に伴い、入力されるデータの減少が進み、特に先月以降は感染状況について詳細な分析ができていないということです。
先週発表された最新の週報には、「HER-SYSが導入されて以降、調査が過小評価になっている。今後、従来のシステムを使った国内の新型コロナウイルス感染症の詳細な分析は不可能になったと考えられ、法に基づくサーベイランス=発生動向調査からの情報還元が困難な状況になった」などと記載されています。
感染症の調査が専門で、国立病院機構三重病院の谷口清州臨床研究部長は、「感染症対策を進めるためには、今、何が起こっているかを迅速かつ統一的に把握することが必要不可欠で、時間と場所、人の情報は疫学の3要素だ。発症日別の感染状況など対策に必要な情報がほとんど出てこない状態になっているのだとすれば極めて問題だと思う」と話しています。
また、「HER-SYS」について、「報告を求める項目が非常に多岐にわたっていて、保健所や医療機関などの大きな負担になっている。入力した情報すべてが本当に必要なのかが疑問で、分析されていないのであればむだな作業になってしまう。分析しないデータを要求してはいけないというのはサーベイランスの大原則で、適切な状況ではない。感染症対策には国だけでなく保健所や医療機関、国民が関わっているのに、必要な情報を提供できていないことが1番の問題だ」と指摘しています。
国立感染症研究所で感染状況の調査を担当している砂川富正室長は、「HER-SYS」が分析に使えなくなっていることについて「必要な項目の情報が十分に得られなかったり、正確性が判別できない問題が起きている。各地の自治体では『HER-SYS』への移行が進んでいるが、そのことによって、全国の情報を分析して還元できなくなっている」と話しています。
研究所では、感染状況の詳しい分析は、以前から使ってきたシステムで集めたデータを使って行っていますが、現在、「HER-SYS」でしか得られないデータもあり、実際より感染者数が少ないデータを使って分析する結果になっているとしています。
砂川室長は「全国統一の届け出基準に基づく正確な情報を元に、新型コロナウイルスの感染の広がりや、重症者の動向を継続的に見ることが必要だが、今後、情報分析に影響が出てくることが懸念される」と指摘しています。
さらに、砂川室長は、「HER-SYS」について、感染状況の分析に欠かせない項目が医療機関や保健所が必ず入力しないといけない項目として示されていないとして「入力されたデータの正確性を担保する仕組みを作るとともに、保健所と医療機関の負担にならない形で入力する項目を整理することなどが必要だ」と、システムを改善する必要性を強調しました。