ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

東京よりヤバい沖縄 

 毎日、新規のコロナ感染者数が過去最高を記録した都道府県が続出している。中でも一番心配なのは沖縄である。玉城・沖縄県知事は、県外からの来県を慎重に判断するよう呼び掛けているが、来県する観光客にその危機感が共有されているようには見えない。
 8月8日付「琉球新報」が伝える旅行者の声。

連休、お盆、沖縄へ続々 那覇空港に到着 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
 
 会社の同僚と東京から来県した20代の女性は「沖縄旅行は何カ月も前に決めていた。ずっと在宅勤務だったのでリフレッシュしたくて、予定通り沖縄に来た」と説明した。女性は「クラスターが発生している場所に行かないように、行動範囲を狭めたい」と強調した。
 京都に留学中のブラジル人女性(25)とフランス人男性(27)は、沖縄で新規感染者が増えている情報を知らずに訪れた。女性は「(滞在中)マスクとアルコール消毒液を使えば、問題ないと思う」と話した。

 沖縄のコロナ感染には「米兵ルート」という“ブラック・ボックス”がある。8月7日付 YAHOOニュースが伝える「現代ビジネス」の記事によれば、米軍基地の感染率は“全国一”となっている沖縄県民の感染率より高いが、その感染状況の調査が不透明だという。

東京よりヤバい「沖縄のコロナ危機」すでに悲劇が起きている…!(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

 沖縄には約2万3000人の兵士とその家族が約2万人いて、米軍関係者は合計4万3000人ということになる。兵士は3分の1が基地の外で居住し、住民の生活圏に入り込んでいる。
 米軍基地で感染が急速に広がった7月7日以降の感染者は、7つの基地で合計285人にもなり、全国一となった沖縄県民の感染率より高い。その米兵らの感染状況が何とも不透明なのだ。
 東京にある在日米軍司令部は、日本政府からの要請を受けて、全国の米軍基地の感染者数の一覧表を公式ホームページで公表するようになった。基地ごとに人数が記載されているが、更新は週に1回だけと間が空いているうえ、回復した人は一覧表から削除しているため、感染者の総数を知ることはできない。
 例えば、7月16日の感染者は10カ所の基地で140人とあり、1週間後の7月24日は11カ所で189人に増えたものの、さらに1週間後の7月31日は同じく11カ所で127人に減っている。しかも掲載されているのは○○日現在の感染数のみで属性や感染経路は公表していない。
 防衛省の記者会見で「改善を申し入れる考えはないか」と問われた河野太郎防衛相は「在日米軍とそれぞれ担当する保健所の間で、情報のやり取りが既に行われておりますので、それ以上必要ないと思っております」と答えた。
 だが、沖縄県地域保健課によると、米軍から連絡があるのは感染が判明した米兵らが立ち寄った飲食店の名前だけだという。担当者はこういう。
 「店に立ち寄った人物の名前はもちろん、性別、年代さえ言わない。複数で店を訪れたのであれば、濃厚接触者にもなるその同行者の行動履歴も追わなければならないが、その情報もない。該当する保健所には店名だけ伝えているが、これでは対策の取りようがない」
 「善き隣人でありたい」と口癖のように言う在沖米軍の実態がこれなのだ。

感染拡大のおそれを押しつけられる沖縄
 外務省と在日米軍司令部は7月29日、新型コロナ対策をめぐり、異例の共同声明を発表し、「情報共有が可能な限り迅速に行われることを確保するために、引き続き一体となって取り組んでいく」としたが、最初から協力体制など存在していないのに、なにが「引き続き一体となって」だ。
 沖縄県玉城デニー知事は7月31日、県独自の緊急事態宣言を発令し、8月1日から同15日まで「沖縄本島全域で不要不急の外出自粛を求めるとともに、県外からの渡航については慎重な判断を求める」とした。
 もちろん沖縄は政府が推進する「GoToトラベル」の対象地域に含まれる。だが、「GoTo」開始前の1週間で1日平均1人だった沖縄の感染者は8月4日までの1週間で58人に急拡大した。
 当の沖縄県が「来てほしくない」と宣言しているにもかかわらず、「行きましょう」と背中を押す政府。感染拡大のおそれを押しつけられた沖縄にとっては、いい迷惑でしかない。アベノマスクといい、「GoTo」といい、無策なうえに、つくづく嫌がらせが好きな政府だ、とため息が出てくる。

 もはや「無策」なのではなく、“有害”でしかない。





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