ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

アベノヒストリー 「戦勝記念日」のお祝い

 安倍晋三氏がロシアのプーチン大統領に妙な電話をしたと話題になっている。5月8日、朝6:22頃、BS-1のNHKワールドニュースで、ロシアの報道として「安倍総理第二次世界大戦戦勝記念日のお祝いを述べました」と短く伝えたとのこと。一例として「じいさん」さんのTwitterをお借りして引用させていただく。

じいさん on Twitter: "あ、今朝の国営ロシア🇷🇺TVで「第二次大戦勝利おめでとう」って安倍晋三から電話有ったって発表してました。対独戦の関係なんでしょうが、ロシアのお茶の間に爆笑🤣ネタをまた提供の巻ですわ😵… "

 それにしても「お祝い」とは? この国の総理大臣は、もし、アメリカ人(の一部)が原爆投下をお祝いしたら、同じように「お祝い」のメッセージを送るのだろうか。3年前、核兵器禁止条約に参加しないことを決めたとき、「あなたは、どこの国の総理ですか」と抗議されたこともあったが、晋三氏は戦勝記念日を、誕生日や結婚記念日などと同じだくらいに思っているのではないか。

 やや引っかかるものがあったので、2015年8月に発表された「戦後70年安倍談話」なるものをもう一度見てみた。誰かの作文を読み上げただけの気のない「談話」ではあるが、ある種の「歴史認識」は透けて見える。

 ……第一次世界大戦を経て、民族自決の動きが広がり、それまでの植民地化にブレーキがかかりました。この戦争は、一千万人もの戦死者を出す、悲惨な戦争でありました。人々は「平和」を強く願い、国際連盟を創設し、不戦条約を生み出しました。戦争自体を違法化する、新たな国際社会の潮流が生まれました。
 当初は、日本も足並みを揃(そろ)えました。しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が、植民地経済を巻き込んだ、経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを、力の行使によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった。こうして、日本は、世界の大勢を見失っていきました。
 満州事変、そして国際連盟からの脱退。日本は、次第に、国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。進むべき針路を誤り、戦争への道を進んで行きました。
 そして七十年前。日本は、敗戦しました。……

 「する」ではなく「なる」・「される」式の主体性を欠く受け身の姿勢が目立つ書きっぷりだが、それでもまだ、書いてある通りの認識があれば、反省する余地はある。「力の行使」や「戦争への道を進んで行った」こと自体は事実だから。
 だがこの「談話」の全体を見渡しても、ソ連(ロシア)にかかわる文言や単語を見出すことはできない。極端なことを言うと、ソ連は日本の戦争に何のかかわりもなかったかのようだ。「ノモンハンって何だ?」「ソ連は日本に宣戦したのか?」「シベリア抑留って何のことだ?」—そういう認識だと言ってもおおげさではない。これが、「戦後70年談話」の歴史認識であり、それを日本の少なくない人々も共有しているのではないかと疑う。だから、ロシアの「戦勝記念日」に日本の総理大臣が「お祝い」の電話を入れても何とも思わないし、国内から非難の声も上がらない(……今のところ)。「ロシアの人々がどう受け止めるのか、分かりそうなものだ」というのは、分かる側の勝手な思い入れに過ぎない。

 もうひとつ、上の「談話」の中の「世界恐慌」を「コロナ禍」に置き換えて読み直してみると、現在との符合に驚かされる。「日本経済は大きな打撃を受け」とか、「日本は孤立感を深め」、「外交的、経済的に行き詰まり」、「国内の政治システムは歯止めたりえず」、「世界の大勢を見失っていった」……。進むべき進路を誤っていないか、“歴史は繰り返す”ことにならないようにと改めて思う。

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