ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

杉田官房副長官のこと

 スガ首相の「105人の名簿は見ていない」発言に続き、「任命できない人が複数いる」とスガに口頭で報告し、実質的に「6人を外した」“張本人”はスギタ官房副長官であることを示す“政府関係者”の発言があったとのこと。
<10月12日 共同通信ほか>
そんなことは誰しも「やっぱり」と思うことだが、この「政府関係者の発言」というのをどうとらえるかがポイントだ。

 スギタ長官は79歳。アベ政権の時代から官房副長官になってもう8年目。2017年からは内閣人事局長も兼務していて、官僚世界を統括する存在と言っていい。そのスギタ氏が務める官房副長官というポストについて、政治学者の西川伸一氏は3年前にこんなことを書いている。
 『週刊金曜日』2017年11月25日付記事より引用する。

官僚が苦り切る「杉田機関」が継続(西川伸一) | 週刊金曜日オンライン


閣議には首相はじめ各大臣が出席する。加えて内閣官房副長官(政務)2名と、いずれも非議員の事務副長官および内閣法制局長官の合計4名が陪席する。事務副長官には旧内務省系の省庁の事務次官経験者が多く就いてきた。「官僚首座」とも「影の総理」とも言われるポストで、閣議では閣議案件を説明する。それゆえ事務副長官がいないと閣議が開催できない。
その職務については、歴代最長の8年7カ月在任した古川貞二郎氏がこう回想している。「総理官邸の事務方トップである内閣官房副長官の職務は緊張と激務の連続である」(古川貞二郎私の履歴書日本経済新聞社)。「副長官というのは二十四時間体制。遠くに出かけることもできない。(略)在任中に東京を離れたのは休日を除くと合わせても十四、五日ぐらいだろう」(同『霞が関半生記』佐賀新聞社)。
古川氏もその前任者で7年3カ月務めた石原信雄氏も就任のあいさつ回りをしたところ、血尿が出るぞと脅されたという。

さて、現副長官の杉田氏は現在76歳(*2017年当時)である。古川氏が副長官を退いたのが69歳、石原氏は68歳であった。杉田氏は第2次安倍内閣発足とともに71歳で就任している。その高齢ぶりは際立つ。
警察庁出身で同警備局長を務めたあと、内閣情報調査室長、次いで初代内閣情報官に就いた。2001年4月には内閣危機管理監となった。このとき安倍首相は第1次小泉純一郎内閣の政務副長官だった。官邸でともに働いた間柄になる。杉田氏には後藤田正晴藤波孝生官房長官に秘書官として仕えた経歴もある。そこで「杉田以上に官邸を知り尽くす人はいないといわれる」(15年8月27日付『産経新聞』)。
官邸ばかりか、警備局長上がりだけに霞が関全体にその情報網は張り巡らされているようだ。一部では「杉田機関」と恐れられていると漏れ聞いた。たとえば、16年9月ごろ、前川喜平文科事務次官(当時)は、杉田氏から「こういうところに出入りしているそうじゃないか」と出会い系バー通いを注意された(17年6月9日号『週刊朝日』)。
官僚のプライベートにまで目を光らせているのだ。その杉田氏が官僚の幹部人事を取り仕切る内閣人事局長を今年8月から兼務している。彼の再任に苦り切っている官僚たちも多いのではないか。後期高齢者となってもこの激職に起用され続けようとは。

 来年80歳となるスギタ副長官だが、体調が悪いという噂もある。つい2か月前にアベの病気を口実とした辞任劇を見ているので、全面的に信用できる話ではないが、その前を含めて彼が長年にわたって「激務」をこなしてきたのは間違いない。

 半年前に検察庁法改定反対運動が高まっていた頃、黒川の賭けマージャンが発覚した。このとき検事総長就任をめぐり世間の批判にさらされた黒川は、自分から情報をリークして身を引いたのではないかと前川喜平さんがTweetしていたが、小生も同じことを感じたのを思い出す。官僚は事務処理や調整には長けているが、世間やメディアの圧力に耐えられるほど“鉄面皮”ではないというのが実感である(“上級”の官僚世界のことは知らないが、そういう鉄面皮の人は官僚世界よりも政界向きだ。……あっ、いや、小川淳也さん、ごめん、あなたのことじゃないから……笑)。

 根拠のない話だが、黒川の例をスギタ副長官にあてはめれば、「政府関係者の発言」というのも、直接話しているのは本人ではないにせよ、自らそう仕向けているような想像を働かせてしまう(こんな話、本人に隠れてマスコミにリークしたら、誰の仕業かすぐばれるだろうし、そんなリスクをおかしてまで「真相」を告発する関係者など政権中枢にはいない)。で、最悪の場合、自分が身を引く代わりにスガは守れる、と。どんなもんだろうか……?


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