ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

ラスボスの失墜

 宮武嶺さんが8月30日付のブログ記事で「リベラル・左派の市民の多くが、安倍晋三氏がいかに強大な敵だったかまだわかっていない。血筋・お友達・財力・ネット戦略・マスコミ操作。彼こそが右翼政界のラスボスだった。それに勝ったのだ。」と述べている。右派勢力、特に「日本会議」の関係者はガックリしているだろうとは思っていたが、そう言われてみると、改めてアベを担ぐ勢力の恐ろしさを少し肌身に感じるところがあった。と同時に、アベも「生身の人間」であることを想像した(同情するという話ではなく、憲法改定に命まではかけないという意味で……)。

 2009年、野党となった自民党。その総裁に選ばれたのは谷垣禎一だった。谷垣本人はもちろん「貧乏くじ」を引いたつもりはなく、野党のトップの労苦をしのび、政権復帰を果たしたあかつきには自分が首相だともくろんでいたはずだった。それから3年、民主党の失政と不評により政権奪還の道が見えてきた2012年9月の自民党総裁選。ところが、谷垣は出馬断念に追い込まれてしまう。当時の谷垣の表情には無念の色がありありと感じられた。代わって総裁に選ばれたのがアベだった。第一次政権を投げ出して以降、直前まで鳴りを潜めていた右派の切り札がここにきてよみがえり、年末の解散総選挙にも勝って、自民党は待望の政権奪還に成功した。直前で梯子を外されたかたちの谷垣の姿を見て、政治の“仁義なき世界”をまざまざと見せつけられたと思った。

 第一次政権がつぶれて失意のアベに、どの段階で「第二次政権」への意欲が芽生えたのかはわからないが、周りに右派の知恵者が再度集結したのはまちがいない。宮武さんが言うとおり、アベはなおも右派陣営の「プリンス」だった。母方の血筋に聳え立つ岸信介佐藤栄作。知性に難はあるが、担ぎ上げる側にはかえって都合がよかったかもしれない。アベノミクスなる“官製”の株価つり上げ・景気浮揚感の創出や電通によるメディア統制、その間の憲法改定の地ならし等々、下野している間に本人を交えてかなり周到に“作戦”が練られていたと思われる。

 とはいえ、足かけ8年も政権が続くとは本人も右派も予想していなかったはずだ。本丸の憲法改定が達成されない以上、右派はこの政権はまだまだ続けなければならないと考えていただろう。しかし、そこはアベも生身の人間で、世間から非難され続ければ、心身に変調をきたすこともあるだろう。これまでどんな不祥事が起きようと、周りの知恵者に言われた通りのタイミングで、カンフル的に解散総選挙をうち、野党に勝たせず、そのたびに政権をリセットしてきたつもりだった。ところが、このコロナ禍で、これまで人々の奥底に沈殿していた感情が可視化された。人々の声は痛烈で容赦なく、人格をかけてこれに向き合う術を知らない人間には逃げ回るしかなかった。もはや右派の誰が何と言おうと、アベには批判を耐え忍んで進んでいこうという気概はない。「憲法改定、わが命」というほど骨の髄まで右派であるなら、倒れるまでやるかもしれないが、「結果」がほしいだけの人間にはそこまではできなかったのだと思う。

 まあしかし、3度めが絶対にないという保証はないので……。

 以下、宮武嶺さんのブログからの引用。


https://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/c9c1a2a770e7311f7f764acd32d078a0


 SNSなどネットでの言論を見ていると、リベラル・左派の中で、本気で安倍政権と対決してこなかった人ほど、安倍総理の辞職だけでは喜べない、次が菅や麻生だったらおんなじだとか、安倍首相を逮捕・投獄までもっていかないとだめだとか言ってるんです。
 でも、まず第一に、日本の社会を前進させていく戦いは長く険しい道のりなんですから、成果が上がるたびにそれを喜び合い、お互いの健闘をたたえ合わないと、市民運動・社会運動なんて続きません。
 そして、第2に、安倍さんは実に強大で、したたかで、やっかいな相手でした。
 たとえば、同じく祖父を首相に持つ麻生副総理と比べても、安倍さんの方が数段手ごわいんです。その一番の理由は祖父が岸信介吉田茂かという違い。 
 その政治家としての歴史的評価の差ではなく、岸信介の孫だからこそ、安倍晋三日本会議の旗印になれたんです。
 悪のプリンスなんですよ。
 彼が明治政府を作った長州藩の末裔で、しかも岸信介と言う東条英機内閣の商工大臣で、A級戦犯容疑者で、安保条約改定の担い手であり改憲の旗頭だった怪物の孫という血筋に生まれたから、日本最大の極右団体日本会議は安倍首相に目をつけ、盛り立てました。
 また、多数の人材が集まりました。
 安倍さんがお勉強ができるかできないか、演説原稿にルビが打ってあってもまだ読み間違えるだなんてことは関係ない。
 安倍さんがむしろただの秀才だったら怖くないけど、西村新型コロナ対策大臣とか加藤厚労大臣とか並みいる東大卒の大臣をみんな従え、日本を代表する秀才である官僚たちも牛耳れるのが恐ろしいんですよ。
 むしろ普通で言う頭はよくないのに、頭のいい人を使えるほうがずっとすごいじゃないですか。
 そういう若い秀才たちだけでなく、安倍さんの下に麻生さん、二階さん、菅さん、高村さん、甘利さんなど、自民党の古い実力者たちも結集しました。
 電通によるネット監視や操作は以前からあったのでしょうが、第二次安倍政権後初の2013年参議院選挙でフル稼働。
 それ以来、電通は陰に日向に安倍政権を支え続け、アベノミクスやそれに付随する異次元緩和や三本の矢、女性活躍だとか地方創生だとか、まさにコピーだけで中身を作ることはできない電通らしいキャッチフレーズを連発して、安倍さんの岩盤支持者を固めてしまいました。
また、マスコミの最大の収入源である広告を支配する電通が日本のマスメディアを骨抜きにもしました。
 私も、安倍さんは無能だ、やってる感だけだ、責任はあると言いながら取ることはしない口先男だと言い続けましたが、中身が全然ないのにコロナ発生前の7年間も有権者をだまし続け、国政選挙で6連勝もするだなんて凄くないですか?
 田崎スシローだの橋下徹だの、盲目的に安倍さんをほめそやすコメンテーターや右翼評論家の多いこと多いこと。
 安倍さんは詐欺師で悪党かもしれないけれど、岸信介とはまた別の意味で稀代の大悪党ですよ。
 三国志で言ったら、悪の劉備玄徳みたいなもので、自分には曹操孫権ほどの才能や力がなくても、関羽だの諸葛孔明だのを集めてしまう器が安倍首相にはあるんです。
 日本会議自民党の実力者、秀才たち、電通パソナなど利権に群がる巨大企業が集中して協力したのが安倍政権ですから、それはそれは手ごわいです。
 日本のがん細胞が集中してるんですから、ちょっとやそっとの抗がん剤じゃびくともしません。
 …………
 実際には実に手ごわいラスボス。それが安倍晋三内閣総理大臣だったのです。

<以下略>




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