スガ内閣を「アベのいないアベ内閣」と呼んだのは共産党の小池晃書記局長であったか。しかし、スガがアベ政治の踏襲を宣言したのは、就任会見で「これからは国民のために仕事をする」としたその国民に対してではなく、自分たちに対する気休め、呪文ではなかっただろうか。
「アベ疑獄」と書くと、アベばかりが疑獄の中心であるかのような錯覚に陥るが、スガ内閣の面々にも「アベ疑獄」の主要プレーヤーたちがいる。「アベ疑獄」がひとつでも明るみになれば、芋づる式に次々と自分たちの関与も発覚しかねない。となれば、隠し通し、何か出てくれば無視……まさにアベ政治の「踏襲」である。
スガ内閣の至上命題は、携帯電話料金を下げることでも、行政の縦割りを打破することでも、デジタル化を推進することでもない。それらは近づく総選挙向けのパフォーマンス、あるいは「疑獄」をごまかすための「手段」に過ぎない。政権の命題=「目的」は「アベ疑獄」の“管理”、これである。
早速「アベ疑獄」のひとつが動いた。9月18日、「桜を見る会」にかかわる重大犯罪事件の容疑者、総理推薦枠で会に招待されたと思しきジャパンライフの山口隆祥元会長らの逮捕である。
ジャパンライフ の手口は、「預託商法」とか「オーナー商法」と呼ばれる。数百万円する「磁気ネックレス」や「磁気ベスト」などの購入をもちかけ、さらにそれらを別の人にレンタルすることで、「1年で商品価格の6%を支払う」などと顧客を勧誘していたが、2018年に破産し、被害者は1万人弱、被害総額約2,100億円。彼らは、総理大臣主宰の「桜を見る会」に招待されたこととを「売り」に顧客を信用させ、大々的に「商売」をしたと見られる。
澤藤統一郎さんが、9月19日付の自身のブログで、ジャパンライフと政官界との関係について解説してくれているので、以下に引用させていただく。
澤藤統一郎の憲法日記 » ジャパンライフ山口隆祥ら逮捕 ー アベ疑惑の徹底解明の端緒に。
ジャパンライフ山口隆祥ら逮捕 ー アベ疑惑の徹底解明の端緒に。
(2020年9月19日)
立つ鳥跡を濁さず、という。しかし、アベ晋三の飛び立った跡は、濁りっ放しだ。モリ・カケ・サクラ・カジノ・河井・黒川・アベノマスク…、納得できる説明が尽くされたものがひとつでもあるだろうか。あたかも、「我が亡き後は洪水よきたれ」と言わんばかり。アベなきあとだが、なおアベまがいが健在の今である。アベ疑惑の数々について徹底解明が望まれる。まずは、サクラ疑惑の一端である。
<中略>
……特殊な背景事情として、悪徳商法グループと、政治家や官僚との密接なつながりが見える。ジャパンライフは、積極的に政治家に献金を重ねてきた。官僚を天下りとして迎えてもいた。そして、政治家や官僚を「広告塔」として使った。
広告塔の最たるものは、ときの総理大臣安倍晋三である。山口に対する首相主催の「桜を見る会」への招待状が顧客の勧誘に最大限活用されている。2015年4月18日の「会」への招待状は、同年2月に発送され、山口は、顧客を集めるためのパンフにこの招待状の写真を掲載して、強力な宣伝材料とした。首相主催の「桜を見る会」への被招待者は、各界の社会的功労者とされているのだから。被害者弁護団によれば、多くの被害者がこの招待状の効果を語っているという。
今回の山口ら逮捕の被疑事実は、「2017年8月4日~11月7日、資金繰りが苦しく配当金の支払いや元本返済ができる見込みがなかったのにそれを隠し、福島、愛知など8都県に住む50~80代の男女12人から契約金として計約8000万円をだまし取った」というものである。そのすべてが、アベの広告塔効果による被害との疑惑を否定し得ない時期のものなのだ。
政治家も行政も、疑惑あれば、誠実にこれを解明すべく説明責任を果たさなければならない。ところが、アベ晋三も、官房長官だったスガも、説明拒否の頑な姿勢を崩さない。説明拒否の唯一の理由が、招待者名簿は破棄されて事実関係の確認の術がない、ということ。この名簿がシュレッダーかけられたのは、2019年5月9日、この件について宮本徹議員の質問主意書が提出された1時間後のことである。
被疑者山口は過去に、マルチまがい商法をしていたとして国会に参考人招致されている。14年には消費者庁がジャパンライフに行政指導をしていた。なぜ、こうした人物が、「各界の社会的功労者」の一人として招待されたかは不明のままだ。誰が、どんな経緯で、被招待者として推薦したのか、安倍事務所のスタッフに厳格な調査をすれば、分からぬはずはない。
アベ晋三は、これまで国会で首相の推薦枠で招待した疑いを指摘されて、個人情報であることを理由に説明を拒んだ。いったい誰のプライバシーに配慮しいるというのだろうか。
なお、ジャパンライフの広告塔になったのは、アベ晋三だけではない。ジャパンライフは、加藤勝信(官房長官)や二階俊博(幹事長)の顔写真でチラシを作成している。菅義偉(首相)、麻生太郎(財務相)の名前が載った「お中元リスト」の存在も国会で指摘されている。下村博文(政調会長)関連団体への献金も明らかになっている。
また、ジャパンライフは、元内閣府官房長や消費者庁元課長補佐らを顧問に迎え、この6人に総額約1億6000万円の顧問料を支払ってもいる。「政治家だけでなく官僚OBも利用して、荒稼ぎをし追及を逃れてもきた」のだ。
いま、スガ義偉首相は、今後の「桜を見る会」の中止を表明するとともに、疑惑解明を拒否している。しかし、今後の「会」の継続の有無とは無関係に、疑惑解明はしなければならない。スガの態度は「疑惑解明は無理だから、今後の中止でごまかす」「今後の中止を口実に疑惑解明をエスケープしよう」としか見えない。
アベ疑惑の数々のうち、この機会にまずはサクラ疑惑の徹底解明を求めたい。さらに、これを端緒にモリ・カケ・カジノ・河井・黒川・アベノマスク…等々についても、政権と捜査機関の両者において、納得できる説明を尽くしていただきたい。それなくして、スガ新政権への国民の信頼はあり得ない。