ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

高校国語の「科目見直し」について

 今朝の毎日新聞のトップは、中教審(中央教育審議会)で、次の新たな指導要領にもとづく高校国語の科目構成が(またまた)変更され、前に減らす方針だった小説に、今度は触れる機会を増やすという見直し案が出ていることを伝える記事でした。人口知能(AI)やSNSの時代に対応するため、「人間ならではの感性を育む」のが狙いだそうです。右往左往というか、右顧左眄というか。おまけに笑っちゃいけないのはわかっていますが、追跡調査などほとんどやりもしないのに(というか、できっこないのに)、どうやって成果のあるなしを確認する気なのでしょう。
高校国語、再び小説重視 AI時代に感性を 次期要領で文科省案 | 毎日新聞

 こういう大言壮語というか、机上の妄想は止めて、文科省と中教審は、実際に学校で教えている教員の方々と、もっとやり取りを重ねながら教育方策を考えたほうがベターだと思うのです。新たに小説(文学)が増えそうなことに反対ってこともありませんが、それをもって子どもの感性を育む(育める)と、中教審や文科省の関係者がもし本気で考えているとしたら、おめでたいとしか思えません。4年前に当ブログに書いた拙文がそのまま当てはまりそうなので、恐縮ですが、繰り返します。これは当時高校国語の科目に新たに「論理国語」を新設するという話を知って書いたことです。「小説(文学)を読ませて感性を育む」という話にも通じると思います。
高校国語に文学を - ペンは剣よりも強く

……もし、子どもたちの、あるいは日本人全般の読み取り能力や論理力(?)が落ちているから何とかしたいと本気で考えて教育課程を改めるとしたら、国語に新科目をつくっても、まあ無理だろうと思う。読み取りや論理の学習が、学校の教室で行う年間60時間か120時間の授業で向上すると思える、その神経は官僚ならではと思う(建前だけで本気とも思えない)。これは「国語」だけでなく、教科をまたいだ教育活動として取り組むべきことだし、そもそも学校では日常的に論理性を剥ぎ取った一斉命令式の教育が続いているのに、都合よく子どもたちに論理力をつけられるはずもない。求める従順さと論理が矛盾したらどうするのか。
 身も蓋もないことを言うが、人がいったいいつどこで真に学んでいるかと考えてみると、教室の授業はそのほんの一部であり、実際は「学校以外」のところで学習が成立していることの方がはるかに多いはずだ(個人的な話をすれば、先生方には申し訳ないが、国語の教科書の文章を読むのは好きだったが、国語の授業をおもしろく感じたことはほとんどなかった)。小学生ならいざ知らず、学校の授業など、好意的かつ過大に評価しても、学習の些細なきっかけづくりに過ぎない(と考えるべきだ)。
 学習指導要領が改訂されたり、新教科や新科目が生まれるたびに思うのだが、教育課程の設計図を描く仕事をしている人たちは、「やってる感」をアピールしたり、「言い訳」をするために何かを変えているだけではなかろうか。それは「国家百年の計」ではない。

 一点。朝日新聞の記事(yahooニュース)の末尾に、選択科目が現行はすべて4単位だが、2単位ものが増えることで「カリキュラムの柔軟化もしやすくなる」と書いてあるのですが、ちょっと気になったので注釈をつけておきます。

 ご存じの人も多いと思いますが、単位数とは週当たりの学校の授業の回数(コマ数)を意味していて、たとえば、4単位の「論理国語」という科目の場合、月から金までの一週間、一日6時間の授業(週で計30時間=30コマ)が組まれているとして(学校によって多少異なります)、月曜の1時間目、火曜の6時間目、木曜の3時間目、金曜の5時間目に授業が入っているとすれば、合計週に4回=4コマ授業があるということになります。同じことですが、2単位の授業の場合は、たとえば月曜の2時間目と金曜の6時間目に授業があって週2回=2コマという具合です(単位を2単位修得するとは、1年間に週2時間授業を受けて、定期試験を受け、欠点=赤点の評価を受けなかったことを意味します)。
 ところが、時間割の作成上、2単位の科目というのは問題含みでありまして、月曜日に2単位ものの科目は入れづらい。なぜかというと、実際に日曜祝日の代休などで月曜が休みになることがけっこうあって、月曜に2単位の科目を入れると、週1回になることが頻発し、月曜に授業のない他のクラスと時間数で差ができてしまうという不都合が生じます、最終的にある程度時間数(回数)を確保するために、曜日変更など、いろいろと工夫せざるをえなくなるのですが、他に影響が出るので、担当責任者としてはできれば避けたいというのがひとつ。
 それから、どの学校も現状教員不足にあって、以前にも増して非常勤の割合が増え、曜日指定で出勤する教員が多くなると、時間割作成に制約が生じるので、2単位科目の授業数を確保・平準化しようと思っても、簡単には曜日変更ができないというのが、ふたつめ。非常勤の教員が2単位ものの授業を担当していると、ますます縛り(制約)がきつくなるので、曜日変更はあきらめざるをえなくなります。
 そして、時間数の少ない2単位科目は定期試験がやりにくいというのも、現役の先生方からよく聞く声です。

 まだ他にも問題はあるかもしれませんが、小生が知る範囲では、総じて2単位科目が増えることを学校の先生方はあまり歓迎しないと思われます。ですから、4単位を細分化して2単位にすれば、選択の幅が広がって、「カリキュラムの柔軟化がしやすくなる」というのは、中教審の委員が言ったのか、朝日の記者がそう思ったのかわかりませんが、学校の先生方の多くは、そうは受け取らないでしょう。トップダウンではなく、ボトムアップを含めて、教育行政と学校(教員)はもっと相互の意見交換をすべきと思うゆえんです。



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