ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

モラーFBI長官と小泉防衛大臣

 今朝の新聞のコラム「金言(きんごん)」に、毎日新聞編集委員の小倉孝保さんは「『ノー』と言える部下こそ」と、亡くなった米国連邦捜査局(FBI)のモラー長官のことを書いています。
金言:「ノー」と言える部下こそ=小倉孝保 | 毎日新聞

 上司の顔色をうかがってばかりの組織は危険である。極寒のロシアまで遠征を強いた仏皇帝ナポレオンや世界を混乱に陥れた独総統ヒトラーの周りには「イエスマン」があふれていた。
 決然と誤りを指摘する部下こそ重要である。先月亡くなった米連邦捜査局(FBI)のモラー元長官はそんな存在だった。
 長官就任の7日後に米同時多発テロ(2001年9月11日)が起きた。当時のブッシュ政権は国際テロ組織アルカイダをかくまうアフガニスタンを攻撃し、中央情報局(CIA)は拘束した容疑者を拷問にかける。
 モラー氏はこれに反対し、部下に関与を禁じた。拷問現場に出くわしそうな時は部屋から出るよう指示している。
 国家安全局(NSA)の秘密情報活動にも懸念を示した。令状のないまま電話が盗聴され電子メール情報が収集されていると知り、憲法に反すると考えた。
 ブッシュ大統領に直接再考を求めたのは04年3月12日朝である。スーツの胸ポケットに辞表をしのばせていた。政権は「直訴」を受けて情報収集の際、令状を取るようになった。
……

 上司の顔色をうかがってばかりの組織も危険ですが、不祥事が起こっても誰も責任をとらないばかりか、それを他人のせいにするような上司のいる組織は、もっと危険です。
 4月12日の自民党党大会に陸上自衛隊の自衛官が登壇し、国歌・君が代を歌ったことは「政治的中立」に反しているとの指摘と批判が相次ぎました。自衛隊を統括する立場の小泉進次郎防衛大臣は、

「今回の自衛官の歌唱は、職務ではなく私人として国歌を歌唱したもので、法令で定める政治的行為には該当せず自衛隊法に違反するものではありません」と従来の見解をあらためて主張。その上で、「今回の歌唱に関しては、私が事前に報告を受けていなかった」と述べ、「私を含む幹部への報告や関係部署の情報共有について反省すべき点があった。自衛隊の活動に対する国民の理解を得る観点からも、今後は幹部への報告や関係部署の情報共有を徹底してまいります」
と釈明しています。
小泉防衛相「私人としての国歌歌唱」この日も従来見解を主張 自衛官君が代歌唱問題で追及続く - 政治 : 日刊スポーツ

 自衛官が制服を着て(公人として)特定政党の大会に参加したこと自体が問題なのに、自衛官が国歌(君が代)を歌ったことに意図的に問題をすり替えようとしているようです。制服を着て登壇した自衛官をつかまえて「私人」はないでしょう。自衛官本人にも失礼な話です。余興で壇上に上がって行って(勝手に)歌をうたったとでも言うのでしょうか。おまけに(組織のトップとして責任を追及されるからでしょう)自分のところまで報告は上がってこなかったと、さも自分は関係していないと予防線を張る(大会中に、これはおかしい、大臣の俺は聞いとらんぞ、と異議を唱えたんでしょうか。報告を上げなかった責任者もこの後処分するんでしょうね)。
 
 じゃあ、誰が「許可」したんだって話になりますが、陸上自衛隊のトップの陸上幕僚長は「隊員一人一人が国民の信頼の上に成り立っているという自覚を促す指導を徹底したい」とピント外れ、かつ、責任逃れのコメントを発しています。指導されるべきなのは隊員じゃなくて、あんたの方だって突っ込みたくなります。
 萩生田自民党幹事長代行も、この「企画」は党大会の演出を担当した企画業者が発案し、党(大会運営委員会)が防衛省に「問題ない」と確認した上でやった、と言っています(運営委員の長を処分するんでしょうね)。何か起これば他人のせいにして、自分では責任を負う気がない――組織の末端や最前線で命令一下に動く人たちがほんとに気の毒になります。
自民党大会:自衛官、国歌歌唱 政府「法的問題なし」 野党「中立性に疑念」 | 毎日新聞

 これが法的に問題はない、不適切でもない、というのなら、共産党や社民党が党大会に自衛官を制服で(もちろん私服でもかまいませんけど)来てほしいって呼んで、インターナショナルを歌わせたり、何かしらのパフォーマンスを披露してもらっても、自民党は「自衛隊の政治利用だ」などと絶対に文句を言わないんでしょうね。さらに、自衛隊も防衛大臣もこれを許可するんでしょうね。試しに、共産党や社民党ほか、あらゆる政党にはぜひやってみてほしいものです(笑)。

 そもそも大会中に自民党の中から、こらぁまずい、あかんぞ、という声が誰からも上がらなかったんでしょうか。日頃から「法支配」と言っている自民党の政治家にとって、法治国家の下で法を守る(支配される)のは庶民であって、自分たちは治外法権(あるいは法支配する側)ってことなんですかね。相変わらず自浄作用のない人たちです。

 ……でも、そんなことをいいながらも、今頃、防衛省内では、この自衛官の出張文書が破棄されているかもしれないし、出張旅費の支給分は機密費から回すから大丈夫かとか何とか、裏でこそこそもみ消しに動いているかもしれません。ほんとにこんな政権政党と自衛隊組織でこの国は大丈夫なんですかね。今頃隣国の国家主席はせせら笑っているのでは。



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