「中道改革連合」のことは意識してあまり触れずに来ました。彼らが掲げる「中道政治」を擁護するつもりはありませんが、政権を批判できる今や「貴重品」とも言える野党勢力と思うので、先の衆院選でもしぶしぶ(ほんとに忍従・苦渋の思いで)比例で投票しました。けれども、参院の立憲と公明の合流は実現しそうにありませんし、地方組織も合流をためらう状況からは、早いところ「中道」の看板を下ろして、別のかたちを考えた方がいいと思っています。
今のままでは、政権に批判的な有権者の受け皿がますます限られてしまいます。田舎の一住民が、何をだいそれたことをとも思いますが、小川代表や階幹事長には、公明党グループと決別する「英断」が必要ではないかと思います。以下のように、日本人の多数派は「リベラル」だったという調査結果もあるのです。
この調査で橋本健二氏が示しているデータは興味深いものです。対象が三大都市圏住民に限られていますが、地方都市であっても三大都市圏と比較してそんなに変わらないと思いますので(地方の田舎はやや趣を異にすると思いますが)、まずまず信をおいてよい調査結果と思います。
橋本氏は、現代日本における政治的対立の軸は3つあると見ています(①~③は私的にまとめた文言)。
①「保守」と「革新」:日米安保体制と再軍備を支持し、憲法を改正して戦前体制に回帰しようとする側と、戦後民主主義を支持して旧体制を否定し、日米安保体制と再軍備に反対し、憲法を擁護する側。
②格差の容認と否定:格差社会による格差拡大を前に、是正に後ろ向きな容認派と縮小を目指し所得再分配を志向する派。
③多様性への態度:在日中国人や在日コリアンを敵視し、移民の流入を嫌悪するなど、排外主義的で多様性を否定する派と、選択的夫婦別姓や性の多様性を求める派の対立。
この①~③を前提に、橋本氏は、日本人の政治的態度を5つのタイプに分けています。便宜上A~Eを付し、政党支持率の部分(数字は%)と氏の分析を引用します。
実は日本人の多数派はリベラルだった!…調査で判明した「自民党圧勝」の裏に隠された真実(橋本 健二) | 現代新書 | 講談社
自民党支持率 野党支持率 支持政党なし
Aリベラル 12.1 16.4 59.9
B伝統保守 27.9 8.0 46.8
C平和主義 14.3 8.2 65.6
D無関心 19.4 7.3 62.1
E新自由主義右翼 36.7 4.5 42.7
以上からわかることをまとめておこう。
第1に、現代日本ではリベラルの政治的立場をとる人々が相対的に多数を占めている。かなりはっきりしたリベラルの立場をとる「リベラル」がもっとも多く、これに近い「平和主義者」を加えれば半数近くを占める。これらの人々は、潜在的にはリベラル政党の支持基盤である。
しかし第2に、リベラル政党は、これらリベラルな人々の支持を得ていなかった。野党支持率は「リベラル」でもわずか16.4%、「平和主義者」では8.2%にとどまる。リベラル政党はこれらの人々を、まったくといっていいほど引きつけることができなかった。
そして第3に、自民党には強固な支持基盤があった。「新自由主義右翼」の自民党支持率は高く、しかも常に投票する人が多い。高市自民党が圧勝したとはいえ、第51回衆議院議員選挙比例区での自民党の得票率は約37%に過ぎなかった。ここで仮に新自由主義右翼の8割が自民党に投票していたとすれば、これが自民党の得票に占める比率はほぼ3分の1となる。民主党に政権を奪われてから、政権を奪還して今日に至るまで、自民党が以前よりも保守的かつ右派的な性格を強めてきたことについては多くの指摘があるが、その理由は、政権を奪還し、また維持するために、強固な支持基盤である新自由主義右翼の要求を、過剰に代表しようとしたからだろう。
しかし自民党には、弱点もあった。「平和主義者」も含めれば、リベラルな政治的立場をとる国民は相対的には多数派だったし、「伝統保守」は古くからの支持基盤だったとはいえ、格差の問題に関してはむしろリベラル寄りであり、けっして強固な支持基盤ではなくなっていたからである。
そこでそこで高市自民党が圧勝した理由を考えてみよう。
まずリベラル政党は、潜在的な支持基盤である「リベラル」、そして「平和主義者」の支持を集めることができなかった。しかもその上に、リベラル色を薄めた急造の中道改革連合で選挙戦に挑んだのたから、惨敗は必然だったといわざるをえない。立憲民主党は、平和憲法を支持し、さらに格差縮小を求めるリベラルな国民を、もっと信頼すべきだった。
さらに女性首相の登場である。「平和主義者」は潜在的にはリベラル寄りだとはいえ、自民党支持率が野党支持率を上回り、また女性の比率が高い。しかも高市自民は、憲法九条改正や新自由主義的政策を前面に掲げるわけではなく、争点を徹底的にあいまいにした。したがって「平和主義者」の支持が、女性リーダーを前面に出した自民党に流れたとしても不思議ではない。しかも「伝統保守」は排外主義的な傾向が強く、「リベラル」も排外主義と無縁ではない。このため高市首相が中国に強硬な姿勢を示し、中国がこれに猛反発するなかで、これらの排外主義的な部分の支持が自民党に流れたことは想像に難くない。
排外主義について、ひとつ付け加えておこう。次に示したのは、排外主義的傾向に関する2つの設問への回答の分布をみたものである。「自分の住む地域に外国人が増えてほしくない」に対して「とてもそう思う」と答えた人は13.4%と少なく、「ややそう思う」と合計しても約44%にとどまる。ところが「中国人・韓国人は日本のことを悪く言いすぎる」では「とてもそう思う」の比率が32.6%と格段に高く、「ややそう思う」の35.0%と合計すれば3分の2を超える。排外主義者だとまではいえない人々の間でも、中国への反発は強いのである。選挙前の世論調査でも、首相の中国に対する姿勢を評価する人の比率は高かった。このため高市自民は、参政党のように排外主義を前面に出すことなく、排外主義に流れがちな人々の票を獲得することができた。今回の衆院選で、中国はこの上なく強力な自民党のアシスト役を果たしたのである。
それでは崩壊の淵に立たされた日本の野党、とくに中道改革連合は、どうすればいいのか。おそらく最善の方向は、「リベラル」という立場のいちばん基本の部分に、あらゆる政策を集中させることである。
……リベラル(あるいはリベラリズム)とは、多様な個性や価値観をもつ個人が、育った社会や家庭環境の違いにもかかわらず、自分の生き方を自由に選択し、自分の目標を達成する機会を保障するため、政府が格差の縮小や再分配を含むさまさざまな施策をとるべきだとする立場のことである。
一見してわかるように、この意味でのリベラルは、先ほど挙げた政治的対立の3つの軸のうち、第2の軸と第3の軸の上で「左」の立場に立つものである。人々は等しく尊重され、生きる上での機会を保障されなければならない。国籍や民族、性別や性的志向によって異なる扱いを受けてはならない。リベラル政党はこの立場から、経済政策、労働政策、社会保障政策、教育政策など、さまざまな政策を体系的に立案し、オルタナティブな社会のあり方を大胆に提案すれば良いのである。
第2の軸に関して、「リベラル」「伝統保守」は合意することができる。「平和主義者」は格差の是正について必ずしも積極的ではないが、心優しい人々だから、格差拡大の弊害について丁寧に説明すれば合意は可能だろう。第3の軸に関して、「リベラル」と「平和主義者」は合意することができる。「伝統保守」はやや難しいかもしれないが、平等を重んじる人々である以上、積極的な排外主義の立場はとらないだろう。「新自由主義右翼」以外の3種類の人々の間に、緩やかな合意を形成することは可能だろう。……
簡単に言えば、日本の政治勢力に、野田・斎藤の両代表が訴えていた「中道のかたまり」をつくるよりも、「自由と平和」を志向する勢力のかたまりをつくる方がいいってことでしょう。「中道」というのは、両側があるから成り立つのであって、主体的に立ち位置は決められない。つまり、自分たちに「理念はない」と言っているに等しい。おまけに分厚い中間層を形成することによって「中道のかたまり」をつくるとしたら、選択肢は「バラマキ」に収れんされていくでしょう。求められる政党は「中道」ではなく、「リベラルと平和」――「リベラル」という語が敬遠されるならば、「自由と平和」でしょう。「自由平和連合」の立ち上げを期待します。
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