ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

スキャンダル隠しとイラン攻撃

 米国・イスラエルによるイラン攻撃から2日。指導者のハメネイ師を殺害されたイラン側の報復攻撃も激しくなり、戦いは一層エスカレートしています。米国(トランプ)にとって、イランは自国から遠く離れた国です。半世紀近く前のイラン革命と米大使館人質事件以来の怨念があるにしても、今のイランを攻撃し、その政治指導者を殺さなければならない差し迫った理由、あるいは思惑とは何なのか。ある専門家は、その最大の目的はイランの現体制を弱体化させ、国内の反体制運動を支援し、内側から体制転換を誘発させることだと述べています。
イラン攻撃、米国の思惑は? 25年6月の作戦との違い 識者の見解 | 毎日新聞

 専門家の見解に異議を唱えられるほど、何か特別なことを知っているわけではありません。しかし、あえて申し上げれば、イランの体制転換を一番望んでいるのはイスラエル(やサウジアラビア)であって、むしろ、米国はイスラエルによる「イラン掃討」作戦に引きずり込まれたように思えます。イスラエルにとって、単独でイランを攻撃することは、対ハマス作戦とは異なり、一方的な勝利というわけにはいきませんし、様々なリスクをともなうでしょう。トランプ大統領と米軍を前面に立てれば、国際世界からの非難や責任、戦争にかかわるコストなど、イスラエルは半分以下の「負担」で事を成し遂げられる――ネタニヤフ首相のそんな打算が見えるようです。さらに言えば、ネタニヤフ首相もトランプ大統領も、ともにスキャンダルを抱えている身。国民の関心をそらすために、外に眼を向けさせるのは、いつの時代、どの国であっても常套手段なのでしょうけれど、国民の視線が国内に戻れば、追及を受けるのは必至です。

 しかし、内政の失点を外政(戦争)で取り戻せるかというと、ことはそんなに甘くはないようです。今回の件も、事前に緻密な準備を積み上げてきた作戦のようには思えませんし、実際、国防総省からは対イラン軍事作戦を懸念する意見も上がっていたわけで、それをトランプは強行したのですから、「ボロ」が出てきてもおかしくありません。
米国防総省、イラン大規模攻撃巡る懸念を政権に表明 | The Wall Street Journal発 | ダイヤモンド・オンライン

 現代イスラム研究センター理事長の宮田律さんもこう述べています。
米国のイラン攻撃準備で緊張高まるペルシャ湾――日本は米国の戦争を支持してはならない 現代イスラム研究センター理事長・宮田律 | 長周新聞

……これまでイランは米軍から攻撃を受けたさい、報復攻撃の事前通告をして米兵の避難を促す抑制的な措置をとってきたが、これではアメリカに対する抑止力にならないことが明らかになった。そのためイランはトランプ政権がイランを攻撃すれば、地域に駐留する米軍に対してより致命的で、破壊的な報復措置で対抗すると示唆している。カタール、サウジアラビア、クウェート、バーレーン、UAEの米軍基地、そしてイラン近海に派遣された米軍艦船などを標的に報復できる。イランを攻撃すれば、米軍も無傷ではいられないだろう。
 アメリカがイラン攻撃に踏み切ればトランプ大統領は、ICE問題で揺れる内政とともに、外交でも大きな失点を負うことになる可能性がある。
 アメリカのテッド・リュー下院議員は少女買春に関するエプスタイン・ファイルにトランプ大統領の名前が数千回も出ていると指摘しているが、そのエプスタイン人脈の中にいるとされるイギリスのアンドリュー元王子はエプスタイン氏への機密情報漏洩の疑いで逮捕された。エプスタイン・ファイルでトランプ氏の少女買春への関与が明らかになれば、大統領の弾劾にもなりかねない。
 トランプ大統領がイラン攻撃を意図するのは、スキャンダル隠しだとも指摘されている。アメリカのコメディー映画『ウワサの真相(Wag the Dog)』(1997年)の世界だ。この映画では、大統領選挙期間中に明るみになった大統領のセックス・スキャンダルから国民の目をそらすために、「敵国」としてアルバニアが選ばれ、アルバニアの悪辣なイメージを強調するために、非道なアルバニアというイメージがねつ造されていく。
……

 イランの反撃で米国兵士に3人の死者が出たことを受け、トランプは必ず「報復」すると叫んでいますが、兵士の死者が増えれば、この戦争を擁護する声はさらに少なくなっていくでしょう。今朝のテレ朝の「モーニングショー」で玉川徹さんも、アメリカは最悪の選択をしたんじゃないか、この攻撃で国内の支持をとりつけられると思ったかも知れないが、ロイターの世論調査によれば、イラン攻撃開始直後で、支持27%、支持しない43%で、これが長引いて、原油価格高騰によるインフレが続けば、トランプはいっそう窮地に立たされるのでは、と言っています。
玉川徹氏 アメリカの軍事行動に「最悪の選択をしたんじゃないかって思いますね」 | 東スポWEB

 昨日ある催しごとがあって、参加していた30代の男性とテレビニュースを見ながら話をしていたら、この「蛮行」に関して、もはや国際法など守られていないし、安全保障理事会もほとんど機能していないし、国連とか国際法に信をおくこと自体ナンセンスではないかという趣旨のことを言っておりまして、そういう気持ちになるのもわかるけれど、だからといって力の強い者が何でも好き放題にやっていいとか、それはしょうがないのだというわけにはいかない、という話をしました。彼はそんなきれいごとでは済まないと不満げでしたが、最終的には一応老人の顔を立ててくれたようです(安堵)。無法者たちによる「力こそ正義」が人々に与える失望と虚無感――政治指導者の振る舞いが同時代の人々に与える影響は少なくありません。
 今度の攻撃でどういう理由か、小学校が攻撃されて多くの子どもたちが殺されました。他にも死者は出ています。人を大勢巻き添えにするこの戦争の動機が、当人の下劣なスキャンダル隠しだとしたら、許せないことです。




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