ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

米国は三権分立の国だった

 今日は短く。米国連邦最高裁は20日、トランプ関税に違法の判決を下しました。大統領に関税を課す権限はない(それは議会に与えられたもの)、米国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に大統領が関税を課すのは違法である、と。昨年の12月に判決が出されると見込まれていたので、2か月も遅くなりましたが(何かの「調整」に時間を要したのでしょうか)、司法の面目を示し、米国は(どこかと違って)三権分立が一応機能していることを世に知らしめしました。
 トランプ大統領は、最高裁の判事9人のうち、自らが指名した者を含めて、「保守派」とされる判事が6人を占めている状況で、自身に不利な判決は出ないという「淡い」期待をもっていたかもしれませんが、それを完全に砕かれたかたちです。いや、それにしても先回の大統領選でバイデンに敗れた時と同様、今回の判決後の発言がまた見苦しい。
「米憲法は関税課す権限を議会にのみ与えている」 最高裁判決要旨 - 日本経済新聞
トランプ政権の看板政策 「ノー」突きつけた最高裁の「独立宣言」 | 毎日新聞

……最高裁の判断は6対3に分かれた。判決は保守派のロバーツ長官が書いた。リベラル派とされる判事3人に加え、保守派とされるゴーサッチ、バレット両判事が賛成。保守派のカバノー、トーマス、アリート――の3判事は反対意見書を出した。
 判決後、トランプ大統領は臨時で記者会見を開いた。冒頭で「一部の判事らが我が国にとって正しいことを行う勇気をもたなかったことを恥ずかしく思う」と自身に不利な判決を下した判事らを批判した。判決に反対した3判事については「強さの英知、我が国への愛に感謝と祝意を表したい。大きな誇りだ」などと賛辞を繰り返した。
……
……自身に不利な判決を下した判事に対するトランプ氏の怒りは収まらない。会見では、判事らを「非愛国的であり、憲法に忠実ではない」などと批判。裁判所が外国勢力の影響を受けているという主張を根拠を示さずに展開した。
 自身が指名した判事で関税措置を違法だと判断したゴーサッチ、バレット両判事については「ご家族は恥ずかしいことだと思う」と非難した。

 これがどうして恥ずかしいかって、たとえば、野球でもサッカーでも、スポーツでかりに「誤審」と思える判定があった場合(もちろん今回のケースは全然「誤審」ではありませんが)、異議を申し立てたり、抗議したりってことはあり得ると思いますが、審判をつかまえて、お前は野球を愛してないとか、サッカーへの愛情がないとか、家族は今頃泣いてるぞ、みたいなことは、いくら捨て台詞でも普通言わないと思うのです。
 挙句に「外国勢力の影響」とか、これに限らず、自分の思いどおりに事が進まないときのトランプの言い分には恥ずかしいものが多いと思います。今月、米国下院でトランプ大統領が昨年カナダに課した関税の撤回を求める決議を可決した際、共和党から6人の議員が民主党議員と共に賛成に回るや、この「造反」した議員に対して「次の選挙で覚えとけよ」みたいなことを言ったり。
 むかし、学校に勤めているときにも、この種の恥ずかしいことを子どもにわりと平気で言ってしまう教員を何人か見ましたけど(もちろんごく少数です)。傍らにいると、同じ(大人の)職員としてほんと恥ずかしい思いがしました。たとえば、(言うとおりにしないと)点数(成績)を下げるぞ、とか、指導部長の(怖い)先生に言いつけるぞ、とか。はぁ~。(子どもがどんな不愉快なことをしたとしても)もう少し自分の立場を自覚してものを言えって話です。同じように恥ずかしい思いでいる米国民が多いことを祈ります。

 ニューヨークの株価はこの判決を受けて大幅に上昇したようですが、トランプ政権はIEEPAがダメなら今度は通商法など他の法律を根拠に関税を課す方針のようですので楽観はできません(これも悪あがきで結果は同じことでしょうけど)。しかし、そもそも今回の関税の根拠とされるべき貿易上の「差し迫った危機」など米国にはないのです。
 今回の判決をニューヨーク・タイムズは「最高裁の独立宣言」と報じたようですが、これを反転の機会にして、恥ずべき愚かな為政者は政治の舞台から去ってもらい、正気を取り戻さないといけません。今秋に予定されている中間選挙で米国民がトランプNOの強烈な意思表示をしてくれることを願います。併せて、この判決で、日本政府にとっては80兆円超の対米投資の前提が覆ったわけで、それをトランプの言いなりってわけにはいかないでしょう。「いい子ちゃん」になって引っ付いてないで、いいかげん距離をおかないと。



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