今朝の毎日新聞に「鶴見俊輔没後10年」という記事を見ました。2015年7月に亡くなって去年で10年だったのかと、改めて時の過ぎ行く早さを思います。
小生ら老齢世代には、戦後の日本を代表する知識人・思想家(思索家)として鶴見さんの名前を思い浮かべる人は多いと思います。個人的にも、鶴見さんは、丸山眞男さん、加藤周一さん、藤田省三さんらとともに、忘れられない知識人の一人です。かなりおおざっぱな言い方をすれば、4人ともスタートラインで個を大事にしている点で共通するところがありますが、鶴見さんはアメリカのプラグマティズムを「経由」しているためか(どうかわかりませんが)、他の3人に比べ、より実感というか肌感覚の原像を大事にする傾向を感じます。後に出てくる用語を使えば「生活者」感覚でしょうか。
鶴見さんは自身をたびたび「悪人」と「形容」しました。それは凡人の謙遜などではなく「肌感覚」としてそうなのだと思います。没後10年を記念して12月に開かれたシンポジウムを紹介した記事には、こう書かれています。
シンポジウム:「悪」 抱えた異能の思想を今 鶴見俊輔没後10年 「奇跡の実現」、日中の研究者らシンポ | 毎日新聞
……裕福な家庭で生まれ育った鶴見の原体験の一つに、厳しい母との対峙がある。生前の鶴見は幼い頃、母に「あなたは悪い子」だとしかられ、連日せっかんされた経験を繰り返し語っている。小学校の成績は振るわず、授業をサボって母の嫌う大衆文芸を読みあさるなど自ら「不良少年」の道を歩むように。いわば権力を持つ母の自由なき「正義」を拒絶することから、鶴見の反抗精神としての「悪」の自覚は養われた。
「鶴見は一貫して『自分は悪人だ』と主張しましたが、その悪は『邪悪』ではなく、他者からの不当な判定に基づく意味合いが込められている。鶴見にとってこの悪は存在そのものであり生の正当性ではないか」。そう語ったのは関西国際大准教授の劉争(りゅう じゅん)さん。「悪」の自覚から出発した鶴見の思想と、『善の研究』で知られる西田幾多郎の哲学を対比させ、両者が掲げた理想的な個人像について論じた。
劉さんは、西田が「国家や世界、宇宙といった全体の一部」に個人を位置づけ、「善へ向かう未完成の個人」を描いたのに対し、鶴見は「国家に対して批判的な距離を持ち、自律的に思考する生活者」として個人を捉えたと分析。鶴見の個人像は「『悪』を抱える個人の生の日常性や、弱さを肯定する」とした上で、「今の日本の若者にとってどんな個人像がリアルでしょうか」と問いかけた。
シンポジウムの発案者である中国・厦門大副教授の郭頴(かく えい)さんは、鶴見の「反教育」論に光を当てた。それは「学校や国家が制度化する教育に対する抵抗であり、個人が自らの傷や『悪』の自覚に向き合いながら、自らを再定義する営み」と説明。「生活の現場で自らつくりだす学びを重視する」鶴見の教育理念は、上からの管理と横並びの同調によって「個」を失わせようとする学校教育システムを拒否し、その構造から抜け出すヒントをくれると話した。……
社会面には、去年の10月に車にひき逃げされて亡くなった俳優の記事があり、こちらにも引き付けられました。この種の事件、事故で亡くなった人はおそらく毎日のようにいて、突然の訃報に悲しみを引きずったまま生きている人もいたるところにいるでしょう。この記事を書いた記者さんにしても、もし亡くなったのが俳優さんでなく、名もない市井の人だったら、こうした追跡記事を書かなかったかもしれません。それでも何でも、一般的には統計の数字として処理され、忘れ去られていく運命にあると言ってもよい個人の死が、実際には個人的な出来事では済まないことに目を向けていることに感じ入るところがありました。鶴見さんが大事にしたものにつながるように思います。
39歳俳優、奪われた舞台 ひき逃げ容疑者「届け出、かったるかった」 仲間たち、死を受け止め切れず | 毎日新聞
これを政治の話につなげるのは、もちろ飛躍がありますし、そもそもこの国の多くの政治家に「個を大事にすることが社会全体を大事にすることに通じる」などと言っても一笑に付されるのがオチでしょうけれど、昨日のブログの余勢で言えば、2月に総選挙をやるとなれば、北海道や東北や、いわゆる雪国で生活している人たちの選挙や投票、準備の大変さは、千葉の地で雪下ろしをすることもなく、ぬくぬくと生活している者にもイメージできないことはありません。実際、札幌で、青森で、花巻で、郡山で、長野で、金沢で……と、知人の顔が次々と思い浮かんできます。鳥取県を地元とする石破前首相も2月の選挙がどういうものになるのかと話しているのをTVか何かで見ました。そうした想像力が(政治家に)働くかどうか、ある意味、それは決定的かもしれません。
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