今朝、テレ朝のモーニングショーを眺めていたら、米国トランプ政権がヴェネズエラに続いて、隣国のコロンビア(左派政権)への攻撃をも辞さず、グリーンランドの獲得まで視野に入れた外交姿勢を示していることを全体としてどう見るかというテーマで話がされていました。トランプは米国と中国をG2と称し、世界を中国と二分して、西半球は米国が確保するが、東半球のことは基本的に関知しない。それぞれの勢力圏を確保したうえで、中国と付き合っていこうとする意向だそうです。これをトランプの言葉に従えば、19世紀のモンロー主義にならい、ドナルド・トランプ式モンロー主義で「ドンロー主義」というんだそうです。日本語的には「魯鈍」を連想させ、当人にぴったりの(おっと、失礼)、何とも「どんより」とよどんだ冴えないネーミングです。
一般にモンロー主義は、アメリカとヨーロッパの相互不干渉主義、南北アメリカ大陸のことにはヨーロッパなど域外の国に口を挟ませない=介入させない立場というふうに理解されていますが、調べてみると、元々は若干ニュアンスが違っていて、これは19世紀の北米にあって、フロンティア(いわゆる西部開拓の最前線)がまだ太平洋側にまで達しておらず、西側になおスペインの植民地が顕在し、部分的にはイギリスの影響力も残存した時代に、それまでヨーロッパの国々の動向や顔色をうかがう立場にあった米国が、落ち目のスペインからフロリダを獲得(買収)して自信を深め、大統領モンローの決断で、合衆国がヨーロッパ諸国と対等であることを宣言し、ヨーロッパ諸国が中南米の独立運動に介入しないよう求めるというのが実際だったようです。上村剛さんの『アメリカ革命』(中公新書)にはこう書かれています。
……ハイチが1804年に独立して以降、(中南米の)さまざまな植民地で次々とヨーロッパからの独立運動が起こった。メキシコ以南のほぼすべての地域と言ってよい。宗主国はスペインである。アメリカは当初、この独立運動に両義的な姿勢をみせていた。一方では心情的に独立を応援したいという思いもあるが、他方ではヨーロッパの大国の反感を買うこと、さらにはアメリカ国内の奴隷の反乱に波及することを恐れていた。しかしモンローと(国務長官の)アダムズは、支援を決意した。
この際、神聖同盟(当時のヨーロッパの君主国間の盟約 軍事同盟ほどの重さはない)と呼ばれるフランス、ロシア、オーストリア、プロイセンといった大国が独立運動に対して介入してくるとの噂が流れた。これを牽制しようとしたのがイギリスである。つい数年前までさんざん争った敵国アメリカに、しれっと「対等なパートナーとして、新大陸(南北アメリカ)に介入するなという共同声明を出しましょう」とお世辞とともに持ちかけてきた。むろん、腹のなかでは他のヨーロッパ諸国を押しのけて、中南米に大英帝国の影響力を拡大しようとする企みである。
アメリカの政治家たちは、うろたえた。カルフーン(陸軍長官)はイギリスの要求をのむように主張。モンロー大統領にアドバイスを求められたジェファソン(元大統領)とマディソン(前大統領)も同種の意見だった。だが、モンローは、アダムズ国務長官の毅然たる意見に従った。つまり、イギリスとの共同声明ではなく、単独で、イギリスを含め、ヨーロッパは新大陸に介入してくるな、と表明したのである。これが、モンロー・ドクトリンと呼ばれるものである。
このドクトリンは、アメリカの対外関係の転換の象徴として理解されている。それまでつねにヨーロッパの関係に国家の命運を左右されていたアメリカが、ようやく大西洋の向こう岸をあまり気にせず、独自の立場を表明して、むしろ西側への拡大に注力できるようになったからである。もっとも、神聖同盟諸国が結局西半球に介入しなかったのは、イギリスの海軍力を恐れたためとも言われる。皮肉な話である。
(上村、同書、210-211頁)
アメリカ(大陸)はアメリカ(大陸諸国)のものだ、だからヨーロッパは介入してくるな、という趣旨が、のちの時代になると、アメリカ(大陸)はアメリカ(合衆国)のものだ、だから合衆国は介入してよい、と捻じ曲げられてしまったようです。本来は中南米諸国の独立運動を支援する意味合いがあったのに。
それはともかく、トランプ政権が西半球に「巣ごもり」し、極端に言えば、アジアについては利権を損なわない限り、どうでもよいと、従来の「自由主義世界の防衛」のような一種のイデオロギーにもこだわらないとしたら、中国は台湾問題に米国は介入する気はないというサインと受け止めるかもしれません。3年後にトランプが交代して、米国の外交方針がまた切り替わるかどうかわからないとしたら、今がチャンスだということになり、中国の問題「解決」の動きが加速するかもしれません。中国がトランプ政権と同様なことを台湾政府に対して行わない保証はありませんし、米国もそれを批判するのは天に唾をすることになります。日本はどう構えるのか。
米国(米国民)は第二次世界大戦後、不十分とはいえ、「大国」が果たすべき責任をそれなりに引き受けたと思います。しかし、自国が戦場になったわけではなく、対外戦争は常に遠い国で起こる出来事という域を出ていない気がします(彼らにとって死者が抜けて多かった戦争は、内戦である南北戦争です)。広島や長崎の原爆展示によりその惨状を知って、改めて原爆投下の意味を考える人が増えているのも、介入戦争に参戦した兵士とその関係者はともかく、戦争被害の実態の記憶があまり積み重ねられていないことと関係があるかもしれません。
トランプ政権のヴェネズエラ侵攻は「大国の果たすべき責任」とは対極にある行為でしょう。これを受けて、ニューヨーク市場の株式相場は下がるどころか上昇、東京市場も上昇しました。あざとい、というか、悪辣というか。大地震が起こると建設関連の株が上がることがありますが、「彼ら」にとって、これは「祝祭資本主義」の類のひとつなんでしょう(もちろんこれは嫌味です)。死人も出ているというのに、ほんとに嫌な気分になります。
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