ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

暴君は嫌だけどアメリカはもっと嫌

 今年11月の中間選挙で負けが確定的なトランプ政権。血迷ったわけではないのでしょうが、なりふり構わず利権の強奪に猛進して他国の首都を武力攻撃し、大統領夫妻を拉致して連れ去るという暴挙に出ました。ならず者国家アメリカが繰り返してきた介入・侵害の中でも、上を行く歴史的犯罪行為でしょう。いくら、マドゥーロ大統領が麻薬取引に関わったやら、独裁者やらと口実を並べたてても、国際法を破っていい理由にはなりません。

 これは内政に失敗続きで支持率を下げ、ガザやウクライナの和平交渉も落着させられず、何とかして国民の批判の目を背けたいトランプ政権のあせりもあるのでしょうか。口を開けば、バイデン、バイデンと、どこかの総理大臣の「悪夢の民主党政権」連呼のごとく、就任から1年にもなるのに、インフレをいつまでも前政権のせいにして、国民総体から足元を見透かされているはずです。こんな愚かな対外侵攻により、国民の関心を一時的にそらしたところで、インフレは収まらないし、生活はちっともよくならないのですから。

 しかしながら、為政者の判断とはいえ、国として他国を攻撃したわけですから、外国からの非難をアメリカ国民全体としてどう受け止めるのかも問われます。ロシアのウクライナ侵攻に倣えば、来月のオリンピックに米国の選手が「スポーツと政治は別物だ」と涼しい顔で出場することは普通はありえないでしょうし、今夏、米国はサッカーのW杯の開催も控えています。こんな侵略行為を堂々とする国で、能天気にお祭りに興じるのは不謹慎、不適切というものです。他国だったら絶対に許されないことがアメリカならば許されるのか。IOCやFIFAに莫大な放映権料を払える国は特別扱いをするのか。国際スポーツ界の見識が問われると思います。

 今朝の新聞にもこの暴挙は「国際法違反」との指摘がありました。当然だと思います。
焦点:ベネズエラ攻撃 米、強める覇権主義 識者、「国際法違反」と指摘 | 毎日新聞

……(マドゥロ大統領は米国への麻薬の密輸に関与したとして米国で起訴されているが)国外で法執行を法執行を巡る武力行使は異例で国際法に違反するとの指摘がある。またトランプ氏は「私たちは適切な(政権)移行が行われるまでそこにとどまり、運営する」と表明し、今回の軍事作戦の狙いがこれまで政権が主張してきた「麻薬対策」にとどまらない実態を浮き彫りにした。
 「米国の攻撃は、国連憲章武力行使禁止に反し、マドゥロ氏とその夫人の拘束は、国際人権規約B規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)に違反している」と指摘するのは、国際法の権威である米ノートルダム法科大学院のメアリー・エレン・オコネル教授だ。
 米国は1989年に当時のジョージ・H・W・ブッシュ大統領が中米パナマ武力行使し、麻薬取引の罪で起訴した最高実力者のノリエガ将軍を拘束して失脚に追い込んだことがある。
 オコネル氏はベネズエラパナマ武力行使にについて「多くの点で異なるものの、一点において共通する。それは、当時も現在も武力行使は違法であるということだ」と批判し、石油をはじめとするベネズエラの天然資源開発に意欲を見せるトランプ政権の対応を「違法な帝国主義としか言いようがない」と指摘。国連安全保障理事会でも議論になるとの見通しを示した。
 一方、トランプ政権はマドゥロ氏の排除には成功したが、ベネズエラの「運営」の手法や政権移行を巡る明確な構想は示せていない。
 米紙ニューヨーク・タイムズは、今回、トランプ政権がイラクフセイン政権の打倒に行った占領統治をほうふつとさせるような説明を避けたと指摘。さらなる軍事攻撃の可能性もちらつかせながら、ベネズエラ政府に米政権が示すビジョンの実施を迫る曖昧な構想を打ち出していると分析する。
……
……トランプ氏は近隣で対立するキューバやコロンビアの左派ペトロ政権に対しても威嚇して圧力を強めるが、対応を誤れば過去の米政権が対外軍事介入で経験した泥沼化に陥る危うさをはらんでいる。

 アフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲さんの対談集(新刊本)を眺めていたら、2001年の9.11同時多発テロの首謀者とされるウサマ・ビン=ラディンを匿ったとして、米軍の空爆にさらされたアフガニスタンのその後について、中村さんは対談相手の作家・池澤夏樹さんにこう話していました。20数年前の話ですが、アメリカという国は懲りずに何度でもこういう愚行を繰り返すのでしょうか。

 池澤 ……ほとんど根拠もないのにアメリカが他国を攻撃するというのは、去年(2002年)のアフガニスタンによく似ているような気がします。それでぼくは中村さんに、アメリカの攻撃にさらされた結果、アフガニスタンはどうなったのか、今あの国はどういう状態にあるのか、まずそれをうかがってみたいと思うのですが。
 中村 無政府状態の混乱に陥っています。治安がかろうじて保たれているのは、カブール市内だけですよ。アメリカは人権を守るという大義を持ち出して空爆を正当化したけれど、犠牲者のほとんどは一般市民です。生活基盤は破壊され、環境は悪くなり、いいことは何一つなかった。……(アフガニスタンの)カルザイ大統領やザヒール王はアフガン人の護衛にではなく、米兵に守らています。民衆は密かに嘲笑しています。……
 池澤 安定した状況にはほど遠いわけですね。
 中村 ええ、群雄割拠の状態となって、治安が著しく悪化しました。全体が無秩序になって、略奪や賄賂が横行しています。米軍が引き揚げると、今のアフガン政権は数日ともたないだろうと現地の人は言っています。だから米軍はずっと居続けなければならない。アメリカは泥沼にはまったんです。あの地域は復讐社会だから、イデオロギーで動く人はいない。無実の子どもたちが殺されたことなどに対する復讐心で、全体に反米色が非常に強くなっています。
 池澤 アフガニスタン人の心理を知らぬままに、武力さえあれば何とかなると思って出かけていき、ことごとく失敗した。その結果、いよいよ武力にしがみつくしかなくなった。
 中村 悪循環です。それが収まらないうちに、イラク攻撃の話が出てきたわけで、アフガニスタンにあれだけの混乱をもたらしたことを考えれば、イラク攻撃は意味のない殺戮行為以外のなにものでもない。アフガニスタンの国民が少しでも幸せになったというなら多少の説得力はあるかもしれないが、逆に破壊し尽くして、不幸せにしておいて、また同じことをしたいのかと言いたい。
 池澤 やはりアメリカは嫌われているわけですね。
 中村 暴君はいやだけれど、アメリカが来るのはもっといやだ、というのが普通の市民の考え方ではないでしょうか。一握りの親米派と大多数の反米派という構図はパキスタンもそうだし、トルコなどもそうです。イラクも恐らくそうでしょうね。……
ペシャワール会編『中村哲対談集 人・水・命』、石風社、65-67頁)

 敵の敵は味方ですけど、敵の味方は敵なんですけど、高市さん。




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