昨日の元日の毎日新聞に自民党の岩屋毅前外相のインタヴュー記事がありました。自民党と日本維新の会の連立合意文書に「日本国国章損壊罪」の制定が盛り込まれ、参政党がこれに同調する意向を示しているので、3党がまとまれば、数的に法案は成立する可能性があります。しかし、これには自民党内でも疑問や反対の声があるようです。
元記事は12月9日付のようですが、毎日新聞が本年最初の朝刊にこの記事を再度盛り込んだことには、世論喚起の意図があるのかもしれません。岩屋氏の話は、「国旗損壊罪」制定の適否について包括的な論点を提示していると思います。
岩屋氏は話の中で、①「日の丸」損壊の処罰が必要となるような「立法事実」がないこと、②外国国章損壊罪の規定は外交関係に配慮するのが目的で趣旨を異にすること、③参政党(神谷代表)の言う「日の丸にバツ印をつける行為」は、日本国家に対する侮辱行為ではなく、参政党の主張に対する抗議の意思表示であること、④愛国心はこのような処罰によって強制されるべきものではなく、涵養されるべきものであることを強調しています。
日本国旗損壊罪:愛国心、強制すべきでない 「国旗損壊罪」案 岩屋氏に聞く | 毎日新聞
①「立法事実」について:現在、あちこちで日の丸が壊されたり、焼かれたり、破られたりして社会問題化しているわけではない。日の丸が損壊された例は38年前(87年)の沖縄で一度あった*が、それ以降公に確認された事実はない。
*注記)1987年沖縄海邦国体(第42回国民体育大会)のソフトボール会場で掲揚された日の丸が引き下ろされて焼かれた事件。第二次世界大戦末期に地上戦や集団自決などを経験し、多くの人命を失った地元住民の感情と日の丸掲揚は相容れないものとして、開会前から問題になっていた。
惨劇の記憶が「日の丸」に重なる いまなお「最前線」の島<沖縄は復帰したのか~50年の現在地>:東京新聞デジタル
日の丸事件を裁いた宮城京一さん 沖縄の戦後見つめた憲法論 | 取材ノート | 日本記者クラブ JapanNationalPressClub (JNPC)
②外国国旗損壊罪との兼ね合い:外国国章損壊罪は刑法92条にあるが、これは外交関係に配慮して設けられた規定で、日本国の国章損壊とは趣旨が異なる。実際に1958年に長崎で中国の国旗が引きずりおろされる事件が起こり、外交問題に発展したことがあるが、以降(約70年近く)、同種の事案はない。
③日の丸バツ印の事例について:国家を侮辱したものか、参政党の主張に対する抗議なのかは峻別する必要がある。日の丸にバツをつけるという行為は不適切だと思うが、法律は全国民を対象に制定されるものなので、一部にそうした運動をする人がいることだけを理由に立法すべきかどうか、慎重に考えなければならない。
最後に④愛国心と国旗損壊罪について、岩屋氏はこう述べています。
――岩屋さんは2011年ごろに高市早苗氏(現首相)が自民内で法制化を提案した際も反対されました。
◆当時も、私は反対の意見を申し上げました。国旗を尊重する意識は国民の間に広く定着しています。わざわざ立法を行う必要はないのではないか。自民党の姿勢としては好ましくないのではないか、ということを言ったと思います。提案に反対したのです。
僕らが子どもの頃は、地域によっては学校現場でも、教職員団体が日の丸の掲揚に反対する時代がありました。学校の先生が国歌を斉唱しないこともありました。
しかし、99年に国旗・国歌法が制定されて以降、学校現場も含めて、あらゆるところで国旗・国歌はこれまで以上に定着してきていると思います。そこに突如、この種の立法を持ち込むのは国民の側からすると違和感があるのではないでしょうか。本来、刑法は何かしらのアピールや主張のために立法されるべきものではありません。実際に起きている問題を解決するために、やむを得ず禁止規定を設けて罰則を設けているわけです。
そういった規制はできるだけ抑制的で、最小限でなければなりません。国民のさまざまな自由をできるだけ束縛しない、強制しないという「構え方」が、人権を尊ぶ民主主義国家としては大切なことだと思います。
小生的には、岩屋氏の話はことさら「左派的」だとか「リベラル色」が濃いという内容ではないと思えますし、1970・80年代くらいだったら、自民党議員のもっと大勢の人から普通に上がった声だろうと思います(もちろん当時も、日の丸=まだ国旗法はない の損壊は一般の器物損壊とは異なるものであるべきだ、と主張する自民党議員もいたとは思いますが)。それから半世紀を経て、岩屋氏の考え方が希少意見と化しているとすれば、それは岩屋氏が変なのではなく、自民党が変質したということでしょう。野党からというより、自民党内でこういう法案はそぐわないという判断があるべきだと思うのですが、こうした法律をつくることが高市首相の言う「必要な改革」なんですかね。「昭和には学ぶ」けど、都合の悪い「昭和」は学ばないとか。率直に言って、優先してやらなければならないことは、もっと他にあると思います。
「昭和に学び、改革を断行」 高市首相が年頭所感:時事ドットコム
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