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日常と世相の記

台湾有事は存立危機事態に当たらない

 今朝の毎日新聞の「時評フォーラム」の森健さんの記事が目に留まりました。森さんによると、高市首相の例の「台湾有事の存立危機事態」発言について、元内閣法制局長官の宮崎礼壹氏は、「法的に見て、台湾有事に存立危機事態の成立の余地はないのではないか」と朝日新聞の取材で述べたとのことです。出典に当たると、「安保法制が合憲だと仮定しても、法的に見れば台湾有事に集団的自衛権すなわち存立危機事態が成立する余地はそもそもないのではないでしょうか」とあります。
台湾有事は法的に存立危機事態になり得ない 元内閣法制局長官の警鐘 [台湾有事答弁めぐる日中応酬 存立危機事態 高市首相 中国]:朝日新聞
台湾有事は法的に存立危機事態になり得ない 元内閣法制局長官の警鐘聞き手 編集委員・豊秀一2025年12月4日 7時00分|壺助

 森さんは短くこう述べています。
月刊・時論フォーラム:2026年の国際関係/衆院定数削減論/台湾巡る高市首相発言 | 毎日新聞

……そもそも高市発言(中国の台湾侵攻が日本の存立危機事態になる)は法的に成立しないと指摘するのは元内閣法制局長官の宮崎礼壹だ。集団的自衛権の根拠規定は国連憲章51条で、国連加盟国に武力攻撃が発生するのが前提条件。だが、台湾は国連加盟国でもない。また、米国が日本に武力支援を要請したときでも日本が武力行使できるのは「急迫かつ不正な」武力攻撃を受けているときに限定される。集団的自衛権を理由に日本が武力行使することは国際法上違法だという。
 勇猛な発言で胸を張るより、首相はまず周囲の意見に耳を傾けるべきではないか。

 小生も台湾有事を(シーレーン防衛を名目に)「急迫かつ不正」な武力行使を根拠に存立危機事態と解するのは無理ではないかと思っていましたが、さしたる根拠があってのものではありません。これについて、宮崎氏の話をまとめると、

 台湾は国連加盟国ではないので、中国の武力攻撃を受けて、アメリカに支援を要請したとしても米国の集団的自衛権発動の理由にはなり得ないので、米国の対中攻撃に正当性を見出すことは難しい。中国が米国に対し武力で反撃しても、正当防衛にこそなっても、国際法上の「違法=不正」と決めつけるのは困難。
 おそらく、米国は、中国による台湾侵攻の着手か兆しがあれば、これを阻止するために遅滞なく中国に武力制裁を加えるだろうから、中国との武力衝突にいたる可能性を重々承知の上で戦端が開かれたことになり、米国に国際法上の正当防衛を主張するための「急迫性」を認めるのも困難。したがって、米国から日本に対し集団的自衛権発動の要請があったとしても、存立危機事態を認定するための前提条件を欠いているため、日本がこれに応じて武力行使を行う国際法上の権利は生じないということになる。

 ちなみに、国連憲章・第51条〔自衛権〕の条文はこうなっています。
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国が措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

 安全保障理事会次第のところもありますが、ウクライナやガザの状況をトレースすれば、実際に武力衝突という事態になっても、安全保障理事会は残念ながら機能しない可能性大です。

 「手の内を明かさない」という政府見解に問題がないわけではありませんが、高市首相の答弁は従来の政府見解と齟齬がないというのは無理があるでしょう。
 高市首相は、2年前、総務省の行政文書と確認された放送法解釈を巡る資料について、自身にかかわる記述の内容が捏造だと発言し、捏造でなかったら、辞任してもいいと啖呵を切ってしまい、その後は頬かむりを続けました。今の姿と重なります。日本のメディアや識者は全体として「ぬるい」ためか、知らんぷりしてればそのうち忘れてもらえると勘違いしがちですが、国際政治や外交舞台はそんなに甘くはないでしょう。あの発言がなかったら、という声(嘆き 恨み)も来年に向けて国内のいろいろな業者を中心に徐々に増え始めるでしょうし……。
 森さんが言うとおり、「勇猛な発言で胸を張るより、まず周囲の意見に耳を傾けるべき」です。トランプに電話でもう一回叱られでもしないとダメなんですかね。



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