本当は昨日ブログに書けばよかったのですが、昨日の毎日新聞・朝刊に「国旗損壊罪」新設案についての特集記事がありました。自民党と維新の会の連立合意書でも法改正がうたわれ、参政党も法案を出しています。
「日本国に対して侮辱を加える目的で国旗(日の丸)を損壊したり、汚したりした者に刑事罰を科す」――おそらくは、意図せず誤って汚したり破損させたりしたもの以外は、すべからく「日本国に対する侮辱」行為と見るわけでしょう。それは、日の丸(のデザイン)が象徴するものを一元化することにもなって(それもどんなもんかと思いますが)、何というのか、政治家にはある種の思惑が絡むとはいえ、こういうのに熱心になる人々の心性には共通するものを感じます。記事によれば、参政党の神谷代表が法案作成の指示を出したのは、7月の参院選の街頭演説の折に、大きなバツ印がつけられた日の丸の旗を見たことがきっかけだったとのことです。記事にはこうあります。
読む政治:「日の丸にバツ印」掲げた大学生 あいまいな国旗損壊罪に「怖い」 | 毎日新聞
……今年7月の参院選投開票前日。参政の神谷宗幣代表が街頭演説した東京都港区の芝公園は異様な熱気に包まれていた。陣営によると1万人を超える聴衆が集まり、「日本人ファーストは差別」などと書かれたプラカードを掲げて抗議する人たちもいた。ひときわ目を引いたのが、大きなバツ印を付けた日の丸だった。
神谷氏は10月、「こんなことが許されるのかと思った」と記者団に述べ、バツ印を付けた日の丸を見た数日後に法案作成を指示したことを明らかにした。「国をおとしめることをされることで、多くの人の人権が傷つけられる。公共の福祉に照らせば『表現の自由』で認められるものではない」と主張し、他党に協力を求める考えを示した。
参政が同月、参院に提出した刑法改正案は「日本国に対して侮辱を加える目的」で国旗その他の国章を損壊し、除去し、汚損した場合に2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金に処する、と定める。日の丸にバツ印を付ける行為は「汚損」に当たる可能性がある。
しかし、バツ印のついた日の丸を掲げた当人が「日本国に対して侮辱を加える目的」でそうしたかというと、それには疑義があります。記事にもありますが、当人が言う目的(理由)は「反天皇制(反天皇ではなく!)」、「参政党のナショナリズムや差別的主張への反対」であって、日本国を侮辱する意図は語られていません。ばかやろー、日の丸にでかでかとバツ印をつけること自体が、国に対する侮辱行為だ、そんなことを普通の人間がやるかー、と怒る人がいるかもしれませんが、当人の主観では反日本や国家侮辱の意図は(おそらく)ないのです。あるいは、愛国心のない輩だからこういうことをする、と考える人がいるかもしれませんが、愛国心というのも、ストレートに日本国万歳、日本国大好きと表現するものもあれば、(国の現状はこうだけど)こうあって欲しいと文句や注文をつけるものもあります。国を人間に置き換えれば想像がつきますが、好きな相手であるほど(好きという感情を「素直」に伝えられず?笑)、文句や注文をつけたがる人もいます。世の中、というか、人の感情や心情は単純ではないと思います。
別の記事には専門家のコメントもありました(以下の引用元をまとめた記事と思われます)。
読む政治:為政者が表現を萎縮させる怖さ 国旗損壊罪を考える 志田陽子教授 | 毎日新聞
……武蔵野美術大学の志田陽子教授(憲法)は、こうした行為(日の丸にバツ印)について「現在の日本国のあり方を是認できないという表現にも見える。ましてや、参政党に賛同できないという意味で掲げているとすれば政治的言論の自由の範囲だ」との見方を示す。
19年に安倍晋三首相(当時)の演説にヤジを飛ばした男女2人を北海道警が排除したことを巡る訴訟では、警察官の一部の行動が憲法が保障する「表現の自由」の侵害と認定された。
これを踏まえ、志田教授は「選挙の候補者は、自分に賛同しない意見表明は受忍すべきもので、刑罰をもって抑える理由はない」と指摘。日の丸にバツ印を付ける行為は「国旗損壊罪を正当化するだけの立法事実(根拠)にはならない」と明言した。……
「日の丸」には国のシンボルとして不幸な過去があります。戦争、占領、植民地……心情にマイナスの刻印をされている人が内外にいます。詳しくは触れませんが、戦後の国家体制のスタートにあたり、新しい国章や国歌を制定するプロセスを踏んでおけば、避けられたはずの問題もあるでしょう。その時に向き合うべきだった過去を棚上げしたまま、指導要領改定による学校での指導、国旗・国歌法の成立、入学式・卒業式での教職員への服務強制などの「強制」措置を経て、今日まで来てしまったと思います。「国旗損壊罪」をこうした流れの中に置けば、その先に何が待っているのか。気味の悪いものしか見えません。
学校で働いていた頃、ある教員が髪の毛を栗毛にして(染めて)きた一生徒に対して、「お前は俺が気持ちよく授業をする権利を奪っている!」と言って(「指導」して)いたことを思い出します。普通に注意してもたぶんダメだと思ったのでしょう。「理論武装」(笑)というか、彼なりに「理屈」を考えたのかもしれませんが、それにしても「(教員の)権利」って、これを聞いた時にはびっくりしました(本人、自慢げだったのが、またびっくりでしたけど 笑)。
でも、参政党の神谷代表の「(バツ印の日の丸によって)国をおとしめることをされることで、多くの人の人権が傷つけられる」という「理屈」もこれと同レベルでしょう。国と個人(の人権)を重ね合わせて人権侵害って何? です(そういや、参政党の憲法草案には「基本的人権(の保障)」という語=概念はないようですね)。
政治家がいったん街頭に立てば、身びいきしてもらえる人ばかりではありません。自身に批判的な意見をもつ人を含め、市井にはいろいろな人がいます。一番大事なことは、その(一部の支持者でなく)いろいろな人たちの声をできるかぎり政治に反映させることでしょう。気に入らない人や行為を(国家を持ち出して)排除することではないと。そう考えれば、「国旗損壊罪」の創設はみんなの利益や幸せにはならないと考えるのが妥当だと思います。
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