今朝新聞を眺めていて、「は!?」と思ったのですが、イスラエルのネタニヤフ首相がヘルツォグ大統領に恩赦を請求したという記事を目にしました。「恩赦」っていうのは普通、有罪が確定した人、服役中の人に与えられるものだと思うのですが、ネタニヤフは贈賄、詐欺、背任の罪などで起訴され、現在公判中の身で、罪が確定したわけではありません。これまで自身の不正行為を繰り返し否定してきたはずですから、「恩赦」を求めるということは、自ら有罪を認めているということにならないのか。それだったら「恩赦」の前に、まず、自分の罪を公けに認め、国民に謝罪をし、「服役」か何かをするのが順番だと思うのです。それをすっ飛ばして何が「恩赦」にしてくれ、なのか。
<追記>調べたら、法務省のHPに、恩赦とは、国家刑罰権を消滅させたり、裁判の内容や効力を変更させたりする行政権のことと書いてあります。「裁判の内容や効力を変更する」ことの中には、実質的に裁判自体をなかったことにして、被告を無罪放免にするようなことも含まれるんですかね。素人的には釈然としませんけど……。
以下、ロイターからの引用です。
ネタニヤフ首相が恩赦請求 汚職事件で公判中、大統領「真摯に検討」 | 毎日新聞
ネタニヤフ氏、恩赦要請後初の出廷 大統領「最善の利益考慮」 | ロイター
【テルアビブ 1日 ロイター】-イスラエルのネタニヤフ首相は1日、自身の汚職裁判を巡ってヘルツォグ大統領に恩赦を要請後、初めて出廷した。野党議員らが恩赦に反対姿勢を示す中、ヘルツォグ氏は同日、恩赦要請が議論を呼び、多数のイスラエル人を不安にさせていることを認めた上で「最も正確かつ厳密な方法で処理される」と強調した。「国家と社会の最善の利益のみを考慮する」とも表明した。
ネタニヤフ氏は2019年に収賄、詐欺、背任の罪で起訴され、20年から裁判が始まった。ネタニヤフ氏は、自身の不正行為を繰り返し否定している。11月30日にネタニヤフ氏の弁護団が公表した書簡では、頻繁な出廷が首相としての職務執行に負担となっていると指摘し、恩赦は国益に資すると主張した。……
権力者が「国益」などという言葉を振り回すときは、当人の「私益」や「私事都合」を疑うべきでしょう。裁判所から呼び出されるのが、首相としての職務執行に支障をきたすというのも、今さら感満載です。2年以上も「ハマス掃討」を叫んでガザに軍事侵攻をし、これほどの殺戮と破壊を繰り返しておいて、この間公判に呼ばれることでどんな具体的な「支障」があったというのでしょうか。
普通の国民であろうと一国の宰相であろと、同じ法に服する。裁判を受けて、罪を犯したと認められれば罰せられ、償いをする――それが、民主社会のあり方としては当然で、これを失えば、国民の倫理全般が揺らいでしまいます(ガザの件では、イスラエル国民の平均的な倫理観はかなり崩れていると思わざるを得ませんが)。被告人を権力者ゆえに特別扱いすることが「国家と社会の最善の利益」に沿うとは到底思えないのですが、これもイスラエルの世論次第では大統領の判断を動かしかねないのでしょうか。
つけ加えれば、ネタニヤフは国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪や人道に対する罪で逮捕状を出されています。おかげで、ICCに加盟する124カ国に渡航すると逮捕される身の上となっています(米中ロは加盟していないようなので、「自由」な行き来が可能なのは、主要国ではこの3国くらいです*)。こちらについては、国際社会での「職務遂行上」重大な支障になっていないのか。こちらの「恩赦」を求めてもいいくらいだと思いますが(制度設計がどうなっているのかは「知らんけど」です)。当然ジェノサイドの罪を認めて法の裁きを受けるべきなのは言うまでもありません。
先月には米国のトランプ大統領がヘルツォグ大統領にネタニヤフの「恩赦」を求める書簡を送っているんだそうです。これは11月12日、今から3週間前の話です。いくら「恩赦」の権限がヘルツォグ大統領にあるといっても、罪があるのかどうかまだ確定していない人間を「恩赦」にはできないでしょう。しかも、普通の感覚で言ったら、他国が自国の裁判に口を差し挟むどころか、実質「無罪放免」にしろと要求しているわけで、ヘルツォグ大統領はイスラエルを代表して、米国トランプ政権に対して不当な干渉だと怒らないといけないでしょう。
こういう法を遵守する意識や精神を欠いた輩、無法者たちには、政治の舞台から降りてもらわないと、国内的も国際的にも法治主義が正常に機能せず、「(人治)放置社会」に向かっていく一方です。
トランプ氏、イスラエル大統領にネタニヤフ氏の恩赦を要請 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
*追記(2025/12/3)
ネタニヤフは国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているので、ICCに加盟する124カ国に渡航すると逮捕される身の上と書きましたが、もちろんこれは当事国がサボタージュしなければの話で、実際は、イスラエルの蛮行に異議を唱えたり、断交する国はごく少数なので、実際上、ネタニヤフは米国、中国、ロシアに限らず、あちこち飛び回っているようです。雑誌『地平』(2026年1月号)掲載の抄訳「アルバネーゼ報告(続編)」には、こう書かれています。
……国際刑事裁判所(ICC)に事態を委ねたのはわずか7か国で、多くの国がICCの逮捕状の実効性を損なおうとし、少なくとも37か国が非協力的または批判的で、逮捕義務の回避を意図していることを示唆した。米国はICCの機能を麻痺させるために制裁措置を科し、英国はICCへの資金拠出を脅かした。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は欧州空域を自由に往来し、2025年4月にICCから脱退したハンガリーも訪問した。(同誌、29-30頁)
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