ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

ナショナリズムという「魔法」

 今日は短く。
 高市首相が先日の衆院予算委員会の質疑で、「台湾有事」を「存立危機事態」にあたるという趣旨の答弁をしたことが、中国側をいたく刺激しているようです。中には(高市の)「汚い首」を「一瞬の躊躇もなく斬ってやる」という某中国外交官の反応などもあり、これには非常識の度が過ぎて?怒りや呆れより、笑いがこみあげてしまいました。そもそも10年前の安保関連法案の審議で「存立危機事態」などという特殊用語を考案した連中は、その一つとして「台湾有事」は織り込み済みだったでしょうから、それを今回具体的に聞かれたからって「正直」に答えたら、そりゃあ「当事国」にされた側は不愉快でしょうけれど、でも、(俗な表現をすると)「許さん、てめぇの首、叩っ切ってやる」とか、そこまで激高するものなのかと。高市にしても「やだー、もー、そんなこと聞かんといてぇ」とか、あいまい至極、政府の得意技に従って、笑って受け流しとけばよかったんでしょうけれど。ちなみに、政府(高市)は「台湾有事」をシーレーン防衛の名目などで「存立危機事態」とみなしているようですが、これが本当に日本国の存立に危機的な程の事態になるのかどうか、個人的には疑問なしとしません。
読む政治:「ライン越えた」 高市首相の台湾有事答弁、にじむ「安倍路線」継承 | 毎日新聞
【解説】 高市首相の台湾をめぐる発言、なぜ中国を怒らせたのか - BBCニュース

 それはともかく、こんなんでお互いが譲らずに、両国民の対立感情が煽られるのはよくないことです。ナショナリズムというのは本当に困った観念です。

 小生には北海道にも沖縄にも知人がいますが、北海道の人と沖縄の人が、あかの他人同士であっても互いを「同胞」だと信じて疑わないというのは、よくよく考えてみると、ある種の「魔法」にでもかかっているかのようです。逆に言えば、111㌔ほどしか離れていない台湾の人と与那国島の人の間に、「分断線」があるのを自明と考えるのも、かなり作為的で不自然です。国境という「近代の産物」に、我々みんな振り回されているなあ―― 『地平』12月号にある、文化人類学者の今福龍太さんの記事「いくつものフォルモーサへ 第11回 像は島々をめぐる」を読んでいて、改めてそう思いました。以下、引用です。

……写真家・東松照明の鮮烈な写真集『太陽の鉛筆』(1975)……沖縄・宮古八重山諸島において撮影された異色のドキュメンタリーともいうべき150枚の白黒写真を前半に、沖縄から台湾、フィリピン、インドネシア、マレーシア等の東南アジア島嶼域を移動しながらカラーで撮られた民衆の生き生きとした日常風景80枚を後半に置いて、東アジアの群島地帯が共有する、国家や文化の枠組みを超えた「風景の連続性」を示唆した、それは極めて刺激的な写真集であった。
 この写真集に横溢する「海」の偏在と、すべての写真が一つになって示す清々しいほどの「越境的=脱国境的」視線に誘われた大学生の私は、1978年春、いまだドルが流通し車輛が右側を走る那覇から船を乗りついで、日本列島の最西端の島、与那国島へたどり着いた。日本領土が果てる西の外れの岬「西崎(いりざち)」の断崖に立ち、そこから遠くはるかな水平線上にかすむ台湾の島影を見て心が騒いだ。東京という中心からの視線を解除し、「日本」の最果てに赴いて国家領土なるものの幻想の「自明性」を批判的に問い直し、周縁から中央を「眼差し返す」ことが私のひそかな目的だったが、それ以上に、海を隔てて隣り合うフォルモーサ(引用者註:台湾)の島の雄大な影を発見したことが、私に「国境」なる制度の恣意的な虚構性をはっきり教えた。日焼けした皺深い顔と手をもつ与那国の老漁師に聞くと、古くから島の漁民たちは対岸の花蓮や宜蘭からやってくる台湾漁民たちとまったく同じ海域で日々操業し、お互いに深い信頼関係を築きつつ、国境線の存在など気にかけずに同じ海を「共有」していたという。互いの漁船のあいだで、足りなくなった漁具などの貸し借りさえしばしば行われていたのだという。分断ではなく、繋がりを生み出す海。有機体として、すべてを共生の関係に導く群島の連なり。こうして台湾は、人間や事物のそのような脱国家的な連続性を示す特別の場所として、私の前にくっきりと立ち現れたのである。……

                 (『地平』2015年12月号、213-214頁)

 今回の中国側の反応に憤って、威勢よく好戦的なことを口にする人もいます。万が一にも、高市が言ったとおりの「存立危機事態」になり、これも万が一、日本が参戦することになったら、ナポレオンみたいに前線で指揮をとるならいざ知らず、傷つき、命を落とすのは、総理大臣をはじめとする政府高官では絶対にありません。『西部戦線異状なし』かなんかに書いてあったと思うのですが、もし、戦争になったら、国のトップ同士、タイマン勝負でケリをつけてもらうのがいいでしょう。習近平高市早苗に相撲をとってもらうのが一番です。あっ?! 女性は土俵に上がっちゃいけないんでしたっけ? それじゃ不戦敗ってことで……(笑)。




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