今日は短く。
今朝の毎日新聞の「移民と社会」と題する特集記事には、興味深いことがいろいろと書かれていました。特に、外国人居住者が多いことで知られる群馬県大泉町(外国人の人口比約20%)の住民の生の声を紹介した記事は、現実をよく反映している感じがしました。「外国人を毛嫌いしている人は少ないが、外国人を好きという人はもっと少ない。私は嫌いではないですよ。嫌なことをされたこともない。ただ、そもそも知り合いはいないんです」――この60代の女性の声はおそらく「平均的」ではないかと思います。
移民と社会・Deep-M:接点希薄な共生の町(その1) 日本人「知り合いいない」 | 毎日新聞
商売で外国人と直に接している人たちの声はよりリアルです。「外国人のおかげで商売ができるのは事実。アパートの大家だって元々は外国人を嫌っていたが、今はみんな入居させている」「金払いの悪い人もいるけど、それは日本人も同じ。ガス工事で外国人の自宅に入るときれいに整頓している家もあるよ。約束を守らない外国人もいれば日本人より真面目なやつもいる。根本は変わらないのでは」。
取材した記者も書いています――「外国人には出て行ってもらいたい」と断言する70代の男性もいたが、そこまで嫌悪している人はあまりいない。外国人とは距離をおきつつ、「何となく好きではない」と感じる人が多いように思えた――おそらく、そのあたりが多数派と考えてよいのではないでしょうか。
移民と社会・Deep-M:接点希薄な共生の町(その2止) 外国人とつながる兆し 学校では当たり前の存在 | 毎日新聞
おもしろいなと感じたのは、五十嵐彰(大阪大学)さんへのインタヴューをまとめた記事です。それによれば、SNSなどを見ると排外主義的な意見があふれ、世論の多数派を占めているような印象があるが、日本人の実相はそれほど排外的ではなく、他人にそういうポーズをとっている人が意外に少なくないのではということでした。つまりは、排外的に見せて(話を合わせて)いるだけだというのです。以下引用です。
移民と社会・Deep-M:接点希薄な共生の町 排外的に見せたがる日本人 五十嵐彰・大阪大学人間科学部准教授 | 毎日新聞
外国人との間に十分な交流があれば排外主義は減る傾向にあることを示す研究結果もある。私の研究においても、外国人が10%を超える自治体では、友達になったり会話したりする機会が増えるため、両者の関係が好意的になるという結果が出た。
とはいえ、日本人の外国人に対する見方を把握することは簡単ではない。
排外主義に関する質問を投げかけ、自身の回答内容が他の人に知られる状態とそうでない状態に分けたところ、知られるケースのほうがより排外的な回答をしていたことが分かった。この結果は欧米とは全く逆だった。
日本人は外国人に対して厳しい視線を保つことが社会的に望ましいと感じ、本心でないのに排外的な回答をしたとみられる。SNSなどで排外主義的な意見があふれているが、この研究は多くの日本人が実際はそれほど排外的ではないという可能性を同時に示している。
「同調」的というか(「長いもの?」にまかれたふり)、ある意味、「見栄」や「虚勢」を張っているところもある感じがします。とはいえ、この国の歴史が歴史ですから、庶民的な(国籍を越える)助け合い精神に一定の信を寄せつつも、ポピュリスト的扇動者の言動には注意しないといけないと思います。
