ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

再エネ発電への貢献度

 今朝の新聞によると、連立政権協議で自民党は維新の協力を得られる見通しがたったようで(閣外協力らしいです)、「連立」ではなく「連携」、自慰じゃなくて自維連携ということになりそうです。自民党参議院では(何と!)NHK党と会派を組むようです。烏合というのか、当たりかまわずというのか、まあ「同類同士」でまとまってわかりやすいと思います。この際、他も含めて「同類」はみんな一緒になってさらにわかりやすくしてほしいです。
自民、連立「本命」は維新か 高市氏周辺は副首都構想「丸のみでも」 | 毎日新聞
立花孝志氏、なぜNHK党の斎藤議員が自民会派入り?「賛否両論あると思いますが…」(スポニチ) | 毎日新聞

 石破さんの退陣発表以後、延々と「政治空白」が続いています。自民党が維新とくっつくんだから、高校無償化はもちろんやるんでしょうけれど、私立高校の一部は来月出願のところも出てきます。「突貫工事」で何とかなるのか、何か「欠陥パッケージ」になりやしないかと、はなはだ不安です。
 昨日の東京証券市場は高市首班指名の可能性が高まったと見て、前日の下落から一転して大幅反発となりました。株価上昇よりも?もっとギアを上げないといけない課題がほんとは目白押しなのですが。

 今朝の新聞には、今年上半期における再生可能エネルギーによる発電量(太陽光+風力+水力+バイオマスなど)が、史上初めて石炭火力による発電を上回ったとする英国シンクタンク(エンバー)の発表に関連する記事がありました。エネルギー政策も重要課題なのですが、世界の趨勢からすると、日本の出遅れが目立つと書かれています。以下引用です。
世界の再エネ発電量、石炭火力を上回る 日本出遅れ 25年上半期 | 毎日新聞

……エンバーの調査は、世界の電力需要の9割超を占める主要88か国が対象。国や地域ごとの分析では、中国は世界最大の温室効果ガス排出国だが、再エネの拡大では世界をリードしている実態を明らかにした。
 太陽光は世界的に増加したが、そのうち55%は中国が貢献した。石炭火力の依存度はなお大きいが、国内発電量は前年同期から2%減らした。発電量の温室効果ガスの排出量も横ばいに転じつつあるという。
 インドも太陽光は25%、風力が29%と記録的なペースで増えている。
 一方、欧米では太陽光が大きく伸びたものの、化石燃料による発電も増えており、脱炭素への道のりには不安も残る。
 米国では太陽光が3割増となったが、風力と合わせても電力増加分には満たず、石炭火力による発電も17%増えた。
 トランプ大統領は気候変動を「史上最大の詐欺」と言い切り、石炭や天然ガスといった化石燃料産業を後押しする姿勢を鮮明にしている。……
 日本についても言及した。太陽光の発電量は、送電線の空き容量不足で発電を一時的に止める「出力抑制」の頻発がたたって前年同期から0.4%減少したと指摘。発電地域の偏りや送電線網の開発・運用ルールに課題を抱えていることで世界的な太陽光拡大の波に乗れない現状が示された。
 エンバーによると、経済協力開発機構OECD)加盟38か国では、合計で石炭火力による発電をピーク時の07年から23年時点で52%削減し、電源構成比率は17%となっているが、加盟国の一つである日本はピーク時の17年から9%しか発電量を落とせておらず、電源構成比率も32%と高い。一方で太陽光と風力の電源構成比率12%と、例えばEUの27%など多くの国・地域から後れを取っている。

 エネルギー政策の研究者・白石賢司さんも昨年の朝日新聞Globe+の記事でこう述べています。
再生可能エネルギーの導入、なぜ日本は遅れている?専門家「技術やコストでなく…」:朝日新聞GLOBE+

 地球温暖化を防ぐため、日本を含めた先進諸国は、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするという野心的な目標を掲げている。そのために化石燃料からCO2を出さない再生可能エネルギーへの転換は必須であり、現在の技術でも脱炭素化の大部分は十分に実現可能だというのが世界的な共通認識だ。
 電力は、最も脱炭素化しやすいエネルギーだ。現在の世界全体の発電量のうち再エネ比率は約13%だが、太陽光と風力を中心に、今後7、8割を占めるようになると考えられている。
…………
 私たちが昨年3月に発表した日本の電力脱炭素化に関する報告書では、既に商用化されている技術で、CO2を排出しないクリーンエネルギーの比率を2035年までに9割にできることを示した。現在の日本の再エネ比率は約2割だが、太陽光と洋上を含む風力を中心に再エネを7割まで増やして蓄電池を活用することを想定している。この研究では、日本の政策目標に合わせてクリーンエネルギーに原子力を含めたが、電源構成の1割強に低減しても問題ないこともわかった。
エネルギーの安定供給のために、輸入品である「天然ガスを増やさないといけない」という議論をしばしば耳にするが、疑問だ。自給可能な再エネへの転換こそが、国際情勢に影響されないエネルギー安全保障の強化にもつながる。………
 「コストが高いので再エネを導入できない」というのも誤りで、私たちの試算ではむしろ、再エネ比率を上げることで2020年と比べて6%削減された。
 日本の再エネ導入が欧米や中国と比べて遅い原因は、技術でもコストでもない。必要なのは、政策や制度の策定や見直しだ。再エネの導入を前提に含めた送配電網の整備計画や、需給バランスに合わせた柔軟な価格設定による電力需要の誘導なども有効だろう。発送電の分離が実質的に行われていないという問題もある。産業構造の変化も必要で、実現には強力な政策が不可欠だ。
 電力の生産側には痛みをもたらす変化かもしれないが、脱炭素化という目標がある以上、避けては通れないことを理解するべきだ。現に、世界は再エネを中心とする社会に向かって進んでいる。日本でも十分に実現可能な未来像だ。そのための計画と行動がいま、求められている。

 個人的には地熱発電をもっと増やせないのかと素朴に思いますが、コストはともかくとして、温泉関係者の警戒感が根強いのか、うまく進まないようです。
日本で地熱発電が普及しない「本当の理由」 世界3位の地熱資源大国だが… | クーリエ・ジャポン

 参考までに2024年の主な国の再エネ比率を載せておきます(数字は%)。
世界の電力 | 統計・マップ | 自然エネルギー財団

        太陽光  風力  地熱   水力 バイオマス  合計
ブラジル     9   14   0   56    7   87
スウェーデン   1   31   0   48    7   87
デンマーク   11   54   0    0   15   79
ポルトガル   13   23   0   31    5   72
チリ      22   12   0   30    6   70
カナダ      1    7   0   58    1   67
スペイン    20   23   0   15    3   61
ドイツ     14   27   0    6    9   56
イギリス     5   27   0    2   13   47
イタリア    12    7   2   17    4   41
アイルランド   0   32   0    3    5   40
オーストラリア 19   13   0    5    2   39
フランス     5   10   0   17    3   35
中国       8   11   0   14    1   34
日本      10    2   0    9    4   25
アメリカ     6   10   0    6    2   24
インド      7    5   0    8    2   22
韓国       6    1   0    1    3    9
全体平均      6.8     8.0       14.2    *2.5   31.6

*数字は地熱とバイオマスを合算したもの)       

 高校無償化などは言うに及ばず、政策一つで救われる人は少なくないわけで、個別の政策課題として、選挙ウケするものに関心が向かいがちです。実際、再エネの優先順位もなかなか上がってこないのでしょうけれど、原発再稼働と同じくらいの「執念」があれば、決して現状と同じではないと思うのですが。しかも、年々世界中で暑さが厳しくなっている状況からすると、国際社会の一員として貢献しなければならない重要課題です。新政権は、この「票になるか・ならないか」式の短視眼をこのまま続けていくのでしょうか。




社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村