首相指名をめぐって連日多数派工作が続いているようです。立憲から統一候補を打診されているタマタマは、基本政策の一致がないと安定的な政権運営ができない云々と難色を示していますが、要するにわざわざ立憲と組むよりも自民と組んだ方が「安全」だと思っているわけで、去年から何度も自分を袖にした相手の方がいいっていうんですから、立憲はもう諦めて、次の選挙で正々堂々第一党となって政権を獲る方向へ踏みだしたほうがいいように思います。自民党政権を終わらせるせっかっくのチャンスでしたが、金権腐敗の自民党政権から決別すべきだと思っている野党ばかりじゃないことがはっきりしました。でも、公明党が連立から離れて、次の選挙で自民党の議席が増えるよりも、減る可能性の方が大きくなったわけですし、タマタマの「本音」もよくわかりました。それは「マイナス面」ばかりでもないでしょう。
今日の新聞を見ていたら、欧州議会の経験からは(多数派による)政権と議会多数派は必ずしも一致しないでよい、というインタビュー記事がありました。欧州比較政治が専門の網谷龍介さんはこう言っています。
多党化ニッポン:「定食メニュー型政党ではもう満足しない」 欧州で注目、少数派政権 | 毎日新聞
……欧州と同様に、日本でも政党の数が増えているのは、社会的に人の求めているものが多様化しているからだ。これに対して、「ビッグテント」という言い方で、政党がもっといろんな人を統合することが重要だという考えもあり、それには一理ある。
ただ、一つの政党や、一つのプログラム(政策)でたくさんの人を引きつけること自体が事実の問題としてもう難しいのではないか。
学生にはよくこういう例え話をするが、昔は「定食メニュー」提供型の政党があって、中華がいいか、イタリアンがいいかという選択をしていた。今、皆さんはそれで満足するだろうか。肉は食べない人、炭水化物は取らない人、身体的な理由で特定の物質を外さなければならない人もいる。
とすれば2大政党には戻らないことを前提に、政治のあり方を考えていくのが生産的だろう。先ごろ仏独を訪れた日本の超党派議員による視察団のように、政治家や官僚、メディアが、多党制の下での政治運営に頭を悩ませているのは、正しい模索の方向性であると思う。
その中で、近年の欧州の議論に見られる方向の一つに、議会の固定的な多数派が難しいなら、それと政権の継続性を切り離せないかという発想がある。
英国モデルの議院内閣制では、議会の多数派イコール政府であり、多数を失うと政権は倒れるということになるが、そこに少し距離を置くことができないかという考え方だ。……
モデルとされているのはデンマークなど少数派政権の経験が長い国である。国際的に学術的な注目も高まり、少数派政権の比較研究も出てきている。
日本では、政権の安定と多数派形成を直結させて考えている人が多いだろう。公明党は自民党との連立解消を表明したが、その前段階では自民党が野党の一部を加えた形での連立拡大を模索していた。
しかし、連立を拡大しても政権運営のリスクはなくならない。たとえば、高市早苗氏が総裁に就任した自民党が右側に軸足を動かし、そちらの支持を得たとしても、左側や中道寄りの有権者が離れ、再び多数を失う可能性はある。
とすれば議会の多数派と政府を直結させる発想を少し緩めた形での政治運営を、政治家の皆さんの創意で慣習として形成していくことが、望ましいのではないか。……
「議会の多数派と政権が直結しない政治運営」——要は石破政権がやってきたことかなと思いますが、でも、高市総裁と自民党はそういうのは嫌なんでしょうし、タマタマも同じく嫌なんでしょう。いざとなったら合意ではなく、多数の力で押し切る――それがこれまでの日本の政治だったわけです。相互の信頼も何もあったもんじゃない。こういう手法ばかり使ってきたために、社会にこれを「文化」として根づかせてしまった一面もあるでしょう。転換が求められていると思います。
タマタマは総理大臣にはなりたい、というか「なる覚悟はある」みたいなので、立憲のみなさんは全員首班指名ではタマタマに投票するけど、連立は組まずに閣外協力でいいんじゃないですかね。これなら基本政策なんぞ別に一致しなくてもいいし(小生には、一緒に政権を担うのに決定的と言えるほどの差異とは思えません。「敵方」はもちろん「弱点」のように突いてくることはあるでしょうけれど、大げさな、という感じがします)、是々非々で政策協議はできるし。たまたま、キャスティングボートを握っただけで(多数派側から譲られているのに)、二たまじゃなくて、二またかけていい気になっているタマタマもびっくりでしょ。ここまで来たんだから腹をくくれってことですよ。ねっ、いいアイデアでしょ、安住さん(笑)。
