公明党が自民党との連立政権から離脱して今日で3日。誰が総理大臣に指名されるか予断を許さない混とんとした状況が続きますが、公明党の組織票を失った自民党にとっては、かりに高市総裁が次期総理大臣になれたとしても、すぐに解散総選挙をうてる状況ではなくなりました。11日(土)の毎日新聞には、公明党との選挙協力が解消されたために、小選挙区で落選する可能性のある議員は25~45人と試算されています(下線は当方が施したもの)。
公明の協力なしなら…自民、小選挙区の25~45人が落選危機か | 毎日新聞
自民党と公明党の選挙協力解消に伴い、毎日新聞は協力解消が次期衆院選での自民候補の当落にどの程度影響しそうかを試算した。2024年の前回衆院選で、小選挙区で当選した132人のうち、25~45人が小選挙区落選の危機にさらされそうだとの結果になった。比例代表を含む当選者全体(191人)の13~24%に当たる。公明も小選挙区当選者4人らの再選に黄信号がともる。
自民公認で公明から推薦を得ていた小選挙区当選者について、得票数が1万減った場合と2万減った場合の2パターンで試算した。不記載問題で前回自民から公認を得ず、無所属で当選した萩生田光一幹事長代行らは試算の対象外とした。
公明は支持層の高齢化で集票力に陰りがみえるとはいえ前回衆院選で596万、今年7月の参院選で521万の比例票を得ている。公明は原則、衆院小選挙区や参院選挙区で自民の支援に回り、代わりに比例で自民の支援を受けてきた。公明の比例票には自民支持層らの票も含まれる模様だが、公明だけでも289ある衆院小選挙区で平均1万票以上を獲得する力はあるとの見方が多い。
次点との差が1万票未満だった自民現職は25人。元沖縄・北方担当相の島尻安伊子氏(沖縄3区)は1769票差、前官房長官の松野博一氏(千葉3区)は3139票差だった。票差が1000未満だった現職も5人いた。
票差が1万~2万だった現職は20人。2万票差は、仮に公明が次点の野党候補の支援に回った場合、公明票の影響が倍増することを踏まえた試算となる。
2万票が動いた場合、選対委員長の古屋圭司氏(岐阜5区、次点と1万4706票差)や元防衛相の稲田朋美氏(福井1区、1万6578票差)らも厳しい戦いを強いられそうだ。……
新聞には2024年の衆院小選挙区選挙で、次点との差が10,000票以内だった自民党議員の名前も表になっていて、票差が少ない順の11人は以下のとおりです(きりよく10人にしようと思ったら、11番目の人物が千葉選挙区だったんで)。
栃木 3区 簗 和夫 178票差
群馬 3区 笹川博義 214 〃
東京10区 鈴木隼人 591 〃
富山 1区 田畑裕明 738 〃
秋田 1区 富樫博之 872 〃
千葉10区 小池正昭 1,643 〃
山口 2区 岸信千世 1,724 〃
沖縄 3区 島尻安伊子 1,769 〃
東京18区 福田かおる 2,182 〃
埼玉16区 土屋品子 2,665 〃
千葉 3区 松野博一 3,139 〃 ほか14人
(2025年10月11日付毎日新聞・第2面)
しかし、今日テレビを眺めていたら、JX通信社の米重克洋さんが同じ趣旨の話をしていましたが、こちらの試算結果では52人になっており、自民党にとってはもっと「衝撃的」です(下線については同じ)。ここでは米重さんがYahoo!に上げていた記事から引用します。
自公連立解消により、次期衆院選に生じる影響を選挙結果から試算してみた(米重克洋) - エキスパート - Yahoo!ニュース
……今回は2024年衆院選の実際の得票数などのデータを用いて、仮に自民党が公明党の支援を失った場合、小選挙区の当落がどの程度動くのかを試算した。……
試算の結果、2024年衆院選で自民党候補が小選挙区当選した132選挙区のうち、実に52の選挙区で当選者が入れ替わる結果となった。加えて、それとは別に10選挙区では自民候補と次点候補の得票差が5ポイント以内の接戦となり、当落選上に下がってくることも分かった。
52選挙区の所在を都道府県別に見ると、東京で8選挙区、神奈川で6選挙区、埼玉で5選挙区、福岡で4選挙区などとなった。都市部や首都圏のベッドタウン、近畿圏の一部など、公明の比例得票が相対的に厚い地域での当落の入れ替わりが顕著だ。中には高市総裁の新体制で執行部入りした党幹部の選挙区も含まれている。
なお、この試算をもとに実際の選挙への影響を考えるにあたっては、他にもいくつかの留意点がある。
まず、自民党候補から公明票がただ差し引かれるのみに留まるかは不透明だ。前回衆院選で、公明党は小選挙区に11人の候補を擁立した。公明党の流儀に照らせば本来は全員当選を期するところだが、結果、4人しか当選できなかった。次期衆院選で自民党の協力を得られないとすれば、小選挙区では1人も当選できない可能性が高い。それを防ぐためには、自民党以外の他の野党と連携し、選挙で協力することが考えられる。その場合、公明票が単に自民党候補から流出するだけでなく、野党候補の得票に上積みされる可能性がある。2024年衆院選の結果に基づき、1選挙区あたり約2万票の公明票があると仮定すると、自民候補と野党候補の間で4万票分の得票差へのインパクトが生じる。このような動きが全国に広がれば、影響は52選挙区どころではなく、飛躍的に拡大する。公明党が小選挙区全てから撤退するならともかく、そうでなければ影響は甚大だ。自民党からすれば、公明党との関係を修復し、他の野党を分断する戦略がとれるかが死活的に重要となるだろう。
加えて、試算の前提となっている2024年衆院選直前つまり石破総裁選出直後の自民党支持率と、高市総裁選出直後の自民党支持率を比較すると、後者の方が低いことにも留意したい。不人気とされる石破氏の総裁就任後よりも、高市氏就任後の今の方が自民党支持率は低いのだ。
例えば共同通信の世論調査では、石破氏の総裁選出直後の24年10月1〜2日調査での自民党支持率は42.3%だった。一方、高市氏の総裁選出直後の25年10月4〜6日調査では33.8%にとどまっている。
「高市政権になれば石破政権時より自民党支持率が上がり、戻ってくる票もある」との指摘もあるが、現時点ではまだそのような効果が数字の上では見られないことが分かる。
また、2024衆院選時には今よりも党勢が限定的で、小選挙区の多くで候補を立てていなかった参政党、国民民主党などの存在も考慮する必要があるだろう。つまり、前回衆院選では多くの小選挙区で保守・右派層の受け皿が自民党候補に絞られていたところ、次回衆院選では受け皿が分散する可能性があるわけだ。
仮に高市氏が内閣総理大臣に選出された場合、この公明の「撤兵」を補う支持構造の再建が最も重要なテーマとなるだろう。小選挙区では最も多くの得票を獲得した1人が当選する。それゆえ、支持構造を再建できずに選挙に臨めば、劇的な後退が十分にあり得る状況になっている。少数与党下で求められる「調整」や「妥協」と、高市氏の「カラー」や「らしさ」の発信をどう両立できるかが、高市政権の命運を左右しそうだ。
二つ目の下線部は抑制された形になってはいますが、少数与党から脱却することに前のめりになって、公明党の了解を得ることもなく(顔も立てず)、一足飛びに国民民主党との連携(交渉)に飛びついてしまう高市新総裁とその幹部のみなさんの「調整力」(というか気配りのなさ)では、ちょっと無理なんでは……というニュアンスも個人的には感じとれます(偏向ですかね 笑)。
いずれにしても、自民党の多くの議員にとって、公明党の票が離れることは死活的に痛手で、これと政治資金問題や裏金問題にケリをつけるのと、どちらを優先すべきか、自民党内からも若手の議員などから次第に声が出てくるような感じがします(まともな人たちであれば)。高市さん個人も正念場ですけど、党自体も正念場なんじゃないでしょうか。知恵袋がいなくなったとはいっても、百戦錬磨の強かな政党ですので、「油断」は大敵ですけれど。
