ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「曖昧保守」の自民党と外国人受容

 「保守」思想と外国人受容は相対立するものなのでしょうか。「保守」思想自体が曖昧で、よく言えば柔軟性をもつことに加え、「保守」を自任する人々が実際のところ「保守」と「守旧」、「右翼」などを区別しているようにも見えないので(もちろん重なる部分はあると思います)、なかなか判然としませんが、総じて「保守」的な人々の外国人に対する視線には厳しいものがあり、特に移民や外国人の犯罪には敏感になる傾向があるのは否めない感じです。

 今日の毎日新聞の一面トップは、「自民 揺らぐ『保守』像」と題した記事でした。9月、選挙区の祭りの会場で自民党若手議員(財務政務官)は支持者から声をかけられたとのこと。以下、記事からの引用です。
多党化ニッポン:/上 自民、揺らぐ「保守」像(その1) 定義曖昧 惑う若手 | 毎日新聞

 厳しい残暑が続いていた9月中旬の週末。選挙区の東京都足立区を回っていた自民党の土田慎財務政務官(34)は、盆踊り会場で支持者の浴衣姿の女性(70)に声をかけられた。
 「総裁選は誰に入れるの。総理は誰になるのよ」
 土田氏は「まだ決めていないんです。誰になるのか分かりませんよ」と笑顔で応じた。「誰がいいと思いますか」と尋ねたが、女性は口をつぐんだ。
 女性は土田氏と別れた後の取材に、総裁選(10月4日投開票)では保守的な政治信条を持つ高市早苗前経済安全保障担当相(64)を推していると打ち明けた。
 「高市さんが総理にならないなら、私は参政党に投票するわよ」。女性は高市氏や「日本人ファースト」を掲げた参政は日本の政治を変えてくれるはずだと力説し、YouTubeの政治系番組を「夜に眠れなくなるほど見ている」と語った。
 保守層の一部が他党に流出している――。自民は今月2日にまとめた参院選の総括文書で、敗因の一つにそう記した。「自民党左傾化している」「政府・与党は日本人よりも外国人を優遇している」などの疑念が世論に生まれ、参政などの新興政党に票が流れたと分析。自民の理念が有権者に伝わっていないとして、「真の国民政党保守政党の立ち位置を明確化する」ことが必要だと強調した。……
……今回の総裁選でも各候補が「保守政党」としての再生を掲げるが、その意味するところは必ずしも明確ではない。参院選で論点となった外国人政策では、5候補とも対応を強化する考えを示している。
 30代の土田氏にとって保守かリベラルかという区分に大きな意味は感じられない。「中国を訪問するだけで『保守ではない』と言われるくらい『保守』が曖昧で定義できない言葉になっている」と戸惑いを口にする。

 「保守」を厳密に定義して、そこから真性「保守」と似非・亜流「保守」を峻別し、党の立ち位置を明確にしたところで、自民党にとっては票を失う効果しかないので、むしろ曖昧なまま定義しない方がいいのでしょう。
 しかし、外国人の受容をどうするのかは、「曖昧保守」の自民党であっても、国政上もっと議論があってしかるべきテーマです。現在の総裁選では、結局のところ「よい(品行方正な)外国人」には日本にいてもらってけっこうだけれど、そうでない外国人には厳正に対処すると、どの候補者も主張の凸凹を均してしまって、ほとんど差異はありません。その程度の見通し(認識)で、この先の課題とどう向き合っていくのか。

 たとえば、同じ毎日新聞の2面には消化器外科医の減少が著しく、2040年にはがん手術を担える人材が約5,000人不足するという記事(コラム)があります。
月議:外科医の男女格差=下桐実雅子 | 毎日新聞

 今朝のテレ朝のニュース番組「グッド!モーニング」では自動車整備士のなり手不足で、整備工場の「淘汰」が進み、東京のある区では、40あった工場が今10にまで減って、整備待ちが当たり前になっている厳しい現状がリポートされているのを見ました。

 他の業界でも同様なのは言うまでもありません。もちろん単純に少子化で日本人の人口が減っているからという理由だけでは説明できないでしょうけれど、このまま放置しておけば、ジリ貧で自壊していくだけです。自民党の総裁選立候補者に、単純労働を外国人労働に置き換えればいい程度の認識しかないとしたら、ことは重大です。世間的に評判のよろしくない「移民問題」に対し、「移民は認めない」などと忌避して、全般的な労働力としての移民問題に向き合わないわけにはいかないでしょう。

 むしろ、政治の常套手段ですが、世間の眼を外国人や移民など、総じて「外」に向けさせるのは、都合のよくないテーマが別にあるからだと勘繰りたくもなります。それが企業献金の問題であり、裏金問題の真相究明です。直近2度の国政選挙で大敗した大きな要因を棚上げして、「保守」層受けするネタをばらまけば、自民党の支持が回復するのではというのは安易な発想だと思いますが、こうした体質というか体臭を自民党はほとんど払拭できていません。
 実際、先日の小泉進次郎ステマ問題とそれに対する他候補や自民党内の対処を見ていると、自分たちには本当に甘い政党なんだな、と思います。自分に厳しくできないから、他者にも厳しいことが言えないわけで、「解党的出直し」とか「党の危機」とか称していますが、内心では、党の顔を替えれば、次の選挙ではまた勝てると多くの議員がたかをくくっているのでしょう。このあたりも地方で有権者と直に向き合っている党員たちとの認識のギャップがあるような気がします。

 長々と続く総裁選のために、国政はおろか、世界の事情からも遠い日本ですが、「鎖国政策」が無理なのは明らかです。「移民、やりません、私は反対です」ではなく、もっと国の将来を見据えた説得力のある議論が必要だと思います。




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