イスラエルによるガザの地上侵攻とジェノサイド(市民虐殺)が続けられ、ガザはおろかヨルダン川西岸を合わせたパレスチナ国家そのものを消滅させようとするイスラエルの傍若無人な蛮行に対し、「ニ国家解決」の原則に立ち返り、改めてパレスチナ国家の承認に向け、フランス、英国、カナダ、オーストラリア、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク、マルタなどが国家承認の方針を示す中、わが日本はこれに同調せず、承認を見送る(しない)方針を固めたと報道されています。先週、国連で日本は他の142カ国とともに、「ニ国家解決」に向けた「具体的かつ期限を定めた不可逆的な措置」を求める宣言を支持したのにもかかわらずです。G7でパレスチナ国家を承認しないのは日本と米国だけになります。今日9月18日付毎日新聞朝刊の一面の記事から。
政府、パレスチナの国家承認を見送りへ 仏英などに同調せず | 毎日新聞
……政府や与党内には、仏英などと共に国家承認を表明すべきだとの声もあった。超党派「人道外交議員連盟」は11日、「与野党国会議員206人の署名とともに、承認を政府側に強く要望。公明党の斎藤鉄夫代表は記者会見で「承認に向けた積極的な判断を政府に強く求める」と述べており、17日には同党外交部会が岩屋氏(外相)に承認を要請した。
一方、親イスラエル姿勢を取るトランプ米政権はパレスチナの国家承認に反対している。政府関係者によると、米国からは「イスラエルを硬化させて逆効果となる」などと説得されたという。日本は将来的には承認する構えだが、林芳正官房長官は17日の記者会見で承認について「適切な時期や在り方も含め引き続き総合的な検討を行っている」と言及するにとどめた。
……政府関係者は「パレスチナの国家承認がハマスを利する恐れもある」と指摘しており、最終的には唯一の同盟国で、中東問題で重要な役割を果たす米国との関係を重視した。
イスラム研究者の宮田律(おさむ)さんは、noteの記事でこう書いています。
日本政府、パレスチナ国家承認を見送る -ふがいない姿勢は中東イスラム世界をはじめ国際社会の日本への信頼を著しく下げる|宮田律
……日本がパレスチナ国家を承認することがどうしてイスラエル側の態度を硬化させるというのか。多くの米国の同盟国がパレスチナ国家を承認することで、すでにイスラエルは態度を硬化させている。国際法を破り続け、ジェノサイドを行うイスラエルが態度を硬化しても、それはイスラエルの問題であって、日本の問題ではない。パレスチナ国家承認は国際法でも認められた正当な行為だ。
「日本政府」という表現は無責任な響きで、私はまったく好まない。日本政府内のいったい誰がパレスチナ国家を承認しないのかを明らかにして、承認しないと主張する人物は国民の前で説明してほしい。ガザに関する人道外交議連でも日本政府の誰がパレスチナ国家承認を決定するのかという私の質問に(この時はメディアにもオープンだった)、外務省の中東一課長は「日本政府です」と答えていた。本当の理由は米国トランプ政権との関係を損ないたくないということを一義的に考えているのではないかと思う。
トランプ政権は歴代米国の政権の中でも親イスラエルの姿勢が顕著だが、高関税などの報復を外務省の幹部などは恐れたのかもしれない。しかし、繰り返すが、米国の同盟国が多数パレスチナ国家を承認するのだからトランプ政権も報復しにくい状態にある。今を逃せば日本は当分というか、半永久的にパレスチナ国家を承認できないことになるだろう。
……<中略>……
作家の佐藤優氏は今回の日本政府の決定はイスラエルとの対話の窓口を残したい石破首相のリアリズムが表れた決定だと朝日新聞にコメントしているが、アメリカのリアリストの著名な国際政治学者であるジョン・ミアシャイマーやステファン・ウォルトはイスラエル支援の立場が米国の国益を損ねるとずっと主張している。二人ともガザ戦争に反対しているが、ステファン・ウォルトは昨年5月に「フォーリン・ポリシー」電子版で、「リアリストがイスラエルの行動(およびアメリカの共謀)に反対しているのは、イスラエルとの連携が米国の国際的地位を掘り崩してしまうからである」と述べている。この考えに従えばその米国に追従することは日本の国際的地位を「掘り崩す」ことになる。
むごたらしいガザ戦争に反発するイスラム世界の若い層は、かつてオサマ・ビンラディンがそうであったように、米国に強く反発し、テロを考えていく可能性もある。その米国に従えば、日本や日本人も危険に陥れることになる。実際、日本人が「イスラム過激派」のテロの犠牲になったのはイラク戦争支持やイラクに自衛隊を派遣した時など日本が米国の戦争に追従した時だった。ウォルトは「ガザ地区を爆撃し続けることで、ガザ地区を石器時代に戻してしまったところで、アメリカの安全が確保されるわけではないし、さらなる繁栄が保証されるわけもない。もちろん、イスラエルの安全も増進されることがない。」と述べているが、そのアメリカに追従し、ガザの人々を多数殺害するイスラエルに配慮することで日本人の安全が増すことはまったくない。
もちろん、パレスチナの国家承認をすれば事態の悪化を止められるなどと即効性を期待するのは楽観的過ぎるでしょう。武器取引反対ネットワークの杉原浩司さんは、『地平』の対談記事「日本の路上からジェノサイドに抗議する」の中で、こう述べていました。
杉原 いま、イギリスやフランスなどが言及しているパレスチナの国家承認は、パレスチナに武装解除を迫るもので、とても危うい側面をもった動きです。もちろんパレスチナを国家承認すべきではないとは思いませんが、前提として、イスラエルに直接的に制裁をかけることが必要です。パレスチナの国家承認が、イスラエルに制裁をしないアリバイにされてはいけない。日本政府は国家承認と同時に、ジェノサイドや占領を続けるイスラエルに対してただちに制裁をかけるべきです。……
(『地平』2025年10月号、127頁)
今朝の毎日の社説は、
……承認は象徴的な意味合いが強く、直ちに事態が改善するわけではない。だが、既に承認している約150か国に続き、主要7か国(G7)の3か国が加わる意味は大きい。パレスチナへの連帯を示すことにつながるからだ。……
社説:パレスチナ国家承認 危機打開へ首相は決断を | 毎日新聞
と書いています。
「ニ国家解決」を求めているのに、パレスチナ国家を承認しないとは、これいかに。唯一の被爆国をうたい、核兵器廃絶を唱えながら、核兵器禁止条約を締結しないどころか、締約国会議にオブザーバー参加さえせず、核兵器保有国と非保有国との「橋渡し」を務めると言うがごとし。これは、常に米国(主人)にお伺いを立てないと行動できないポチ(忠犬)だと吐き捨てることもできますが、要するに精神が「事なかれ」の塊だからということでしょう。
もし、そうでなければ、「忠犬(忠臣)」は「忠犬(忠臣)」なりに、主人に対し吠えること(上申ないし諫言)はできますし、イスラエルやハマスとの交渉や仲介に貢献する余地はあるでしょう。あとで責任を負わされるのはまっぴらだから、傍観するというこの精神態度。情けないです。
少し前、第二次安倍政権時代に「積極的平和主義」なる語が喧伝され「絶対的平和主義」を嘲る風潮がありましたが、当時「積極的平和主義」を唱道していた人たちは、今こそパレスチナの平和のために積極的に行動すべきときです。えっ!? 日本のことじゃないから関係ないって?
今朝の新聞の「みんなの広場」にはこんな投書もありました。
みんなの広場:大食い番組 ガザに思いはせよ=無職・山口敬司・73 | 毎日新聞
本欄で中身のない民放番組への批判の投書がいくつか掲載された。同感だが、もっと厳しく苦言を呈したい。それは大食い番組についてである。制作者も出演するタレントも、パレスチナ自治区ガザ地区の現状を知らない人はいないだろう。
イスラエルに食料の供給を阻まれて、ガザでは大人はもちろん乳児や子どもたちがやせ細り、命の灯が消えようとしている。その様子を番組関係者はどう見ているのだろうか。遠い地球の片隅での出来事だとでも思っているのだろうか。
常人では食べきれないほどの量を、これでもか、これでもかと食べさせて笑いを取る。ガザをはじめとした世界各地だけでなく国内でも満足に食べられない人たちが多いというのに。
一片の理性や現実を見る力があれば、こんな番組は作れないだろう。ガザの惨状を自局のニュースで見ていないか、見ても何も感じない関係者は即刻、業界から退場願いたい。
