ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

国家承認と二国家解決のゆくえ

 イスラエルによる現在のガザ攻撃を止めるため、国際社会が動きました。12日、国連総会でサウジアラビアとフランスが共同提案したイスラエルパレスチナ紛争の2国家解決と平和的解決を求める決議は、賛成142カ国、反対10カ国、棄権12カ国と、圧倒的な支持で可決採択されました。
OIC:世界は今、ニューヨーク宣言に盛り込まれた措置を実行に移すべき|ARAB NEWS

参考)
 ・反対:イスラエル、米国、アルゼンチン、ハンガリーミクロネシアナウルパラオパプアニューギニアパラグアイ、トンガ 計10カ国
 ・棄権:アルバニアチェコカメルーンコンゴ民主共和国エクアドルエチオピア、フィジーグアテマラモルドバ北マケドニアサモア南スーダン 計12カ国

 並行して、フランスほかにパレスチナの国家承認の動きもあります。日本は検討するようですがわかりません。フランスに続いてイギリスも承認すれば、常任理事国5か国中承認していない国は米国のみとなります。いっそうイスラエルとこれを支援する米国が国際社会で浮いた存在になります。今までが今までなので、実効性を疑問視する声もありますが、この線でイスラエルと(それ以上に)米国を「孤立」させていくことが戦略的に有効と思えます。雑誌『地平』10月号で、パレスチナイスラエル研究が専門の早尾貴紀さんもこう書いていました。

……イスラエルは米国の後ろ盾があるからこそ、世界的な非難をものともせずガザ・西岸でのジェノサイドと乗っ取りを公然と進めることができている。
 だが、逆に言えば、イスラエル支持が米国の国益にならないところまで孤立させられれば、米国はここまで逸脱した姿勢を取ることはできなくなるだろう。そうすればイスラエルのジェノサイドも止まるだろう。……

      (早尾「世界はこの報告書を受け止められるか」、同誌、103頁)

 もちろん、「だが、……」以下の話が実際困難で、できていないから「虐殺」が “止まっていない” わけですが、これは道筋というか、方向性自体は間違っていないと思っています。ただし、批判もあります。ガザ出身で日本で暮らしているパレスチナ人のハニンさんは、同誌の座談会でこう述べています。

 日本は長年、「二国家解決」を主張してきましたが、そう言いながら、そのうちの一つを国家として承認しないのは皮肉なことです。いま、G7に名を連ねる欧米諸国が承認するかどうかが話題の中心になっていますが、それは偽りの希望だと感じますし、私たちはそれらの国がパレスチナの存在をやっと発見するのを待っているわけではありません。すでに世界の多数の国々がパレスチナを国家として承認しています(国連加盟193カ国中147カ国が承認)。これに対して、G7の国々はパレスチナ武装解除すれば国家承認するなどとさまざまな条件をつけていますが、そんな条件付きの承認はパレスチナ人に対する侮辱です。想像してみてください、あなたの首に膝を押し当てられて窒息させられている時に、まわりの人は加害者を押しのけて罰する代わりに、あなたが存在するかどうかを話し合っているんです。
 現代世界においては国家承認は重要ですが、最優先すべきはイスラエルの虐殺とガザとパレスチナに対する残虐な封鎖を解除し、パレスチナを解放することです。そして、国家承認を話題にするなら、イスラエルという偽りの国家の承認を取り下げることが、パレスチナの国家承認と同じくらい大事な話です。文字通りパレスチナ人の血肉の上に作られている「イスラエル」に、存在する権利はありません。

        (「日本の路上からジェノサイドに抗議する」、同誌、127頁)

 形式的に平等を保つためならば、続いてイスラエル側の言い分も載せるべきなのかもしれません。しかし、両者が五分というか「対等」ならともかく、そうではなく、圧倒的(死活的)にパレスチナが劣位におかれる現状では、イスラエル側の主張を同量載せても実質的平等にはならないでしょうし、焦点が(いっそう)曖昧になりそうなので、略します。

 最後に、今朝の毎日新聞6面(国際面)にあった、カイロ支局長・金子淳さんの「サンデーコラム」より引用します。ガザの住民がハマスに拘束されたイスラエルの人質の写真を掲げたデモを行い、彼らの解放を訴えたという記事です。
サンデーコラム:極限ガザ 無言の写真の訴え=金子淳・カイロ支局長 | 毎日新聞

……ガザの住民がイスラエルの人質に連帯を示す行為は想像以上にリスクが大きい。ハマスに見つかれば拘束や拷問の危険もあるはずだ(註:イスラエル市民との交流が発覚し、主宰者のアマンさんはハマスに拘束されて拷問を受け、すぐには釈放されなかった)それなのに、なぜこのようなデモを行ったのだろう?
 デモを企画したのはNGO「ガザ青年委員会」の創設者でエジプト在住のパレスチナ人、ラミ・アマンさん(年齢略)だった。取材を申し込むと、デモの目的をこう説明してくれた。
 「イスラエルだけではなく、世界に向けたメッセージでした。ガザの人たちだって普通の人間であり、たとえ誰であろと、人を殺すことに反対しているのです。そのことを世界に伝えたかった」
……ハマスによるロケット弾攻撃に対する報復としてイスラエル軍空爆や地上侵攻に踏み切り、およそ3週間で約1400人が死亡した。
 アマンさんが驚いたのは(一時)停戦後のハマスの反応だった。「1400人も殺害されたのに『勝利』だとして祝ったのです。きっと10万人が殺されても、彼らは『勝利』を祝うでしょう」
 このとき痛感したのは「ハマスは住民の声を代表していない」という思いだった。「本当のパレスチナ人の声を届けたい」……ハマスによる越境テロを知った。イスラエル人たちの遺体を映した動画が次々と流れてくる。そのとき、こんな恐怖がこみ上げてきた。きっとイスラエルの人々は「パレスチナ人はみんなハマスなのだ」と思うだろう―。
 アマンさんが今年6月、ささやかなデモを思い立ったのは、このとき感じた怖さが根底にある。ガザのパレスチナ人は全員がハマスというわけではない。多くの人はもちろん、イスラエルによる殺りくには反対しているが、それと同時に、ハマスによる人質の拘束や民間人の殺害にも決して賛同しているわけではない。……
 「パレスチナ人も、日本人やイスラエル人と同じ人間だ。私たちはパレスチナ人に対するステレオタイプと闘っているんです」……「ガザの住民こそが人質解放を求めて声を上げなければならない。それは我々の責任なのです」……

 もちろん政治の世界では「敵の敵は味方」ですから、イスラエルはアマンさんたちに「利用」価値を見出すかもしれませんし、逆にハマスはアマンさんの善意が「敵方」に利用されることを怖れるでしょう。しかし、こうした「政治的力学」を超えて、イスラエルによるほぼ一方的な破壊と殺りくを一刻も早く止めなければならない――これは総意だし、こう思う人はイスラエル側にもいるでしょう。「総意」をどうやってイスラエル(とアメリカ)を囲い込む「鎖」にできるか。


 
 
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