ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

アルバネーゼ報告

 国連人権理事会から特別報告者としてパレスチナの人権状況の報告を求められたフランチェスカ・アルバネーゼさんが、6月30日、現下のイスラエルによる一方的なガザの破壊行為とジェノサイドを、直接的間接的に支援している企業を網羅する報告書を提出しました。雑誌『地平』10月号にその抄訳があり、恥ずかしながら、詳しい内容を初めて把握しました。かなり衝撃的です。「パナマ文書」によって、世界の政治指導者や著名人たちが、タックスヘイブン(租税回避)で蓄財や金融取引をしていた実態が明かされ、世界に衝撃を与えたことがありましたが、それと同じものを感じました。以下は「スウィッチニュース」からの引用です。
イスラエルのジェノサイドに加担している企業を公開、国連特別報告者【詳細】 – Switch News(スウィッチ・ニュース)
「パナマ文書」世界揺るがす - 日本経済新聞

……アルバネーゼ氏は報告書において、次のように指摘している。
「(イスラエルの)永続的な占領は、武器製造業者や巨大IT企業にとって理想的な実験場となっている。需要と供給が膨大である一方で、監視はほとんどなく、説明責任も全くない。投資家や官民の機関は自由に利益を上げている。企業はもはや占領に関与しているだけでなく、ジェノサイド経済に組み込まれている可能性がある」
アルバネーゼ氏は昨年、イスラエルパレスチナ自治区でジェノサイドを犯していると信じる「合理的な根拠」があると指摘。

 また報告書では、今回の調査結果が「イスラエルによるジェノサイドが続く理由」を明らかにしているとし、「それは多くの人にとって利益になるからだ」と理由を述べた。
 イスラエルが調達しているF-35戦闘機は、世界最大の兵器プログラムの一部であり、8カ国にまたがる少なくとも1600社の企業に依存しているという。
 機体の製造などはアメリカに拠点を置く「ロッキード・マーティン」社が行っているが、F-35戦闘機の部品は世界中で製造されている。
 特にイタリアのメーカーである「レオナルド(Leonardo S.p.A)」社は大きな役割を果たしていると指摘されており、日本の「ファナックFANUC)」株式会社も、兵器製造ラインにロボット機械を供給しているという。

 一方、テクノロジー企業はパレスチナ人の生体認証データの収集、保管をし、そしてイスラエル政府の利用を可能にしていると、報告書は指摘している。
 「マイクロソフト」や「アルファベット」、「アマゾン」はイスラエルに「事実上、政府全体にわたるクラウドおよびAI技術へのアクセス」を許可し、データ処理・監視能力を強化しているそうだ。
 アメリカのテクノロジー企業「IBM」は、イスラエル軍および諜報機関の職員の訓練に加え、パレスチナ人の生体認証データを保管している、イスラエルの人口・移民・国境局(PIBA)の中央データベースの管理も担っているという。
 アメリカの「Palantir Technologies」社は、2023年10月のガザ紛争開始以降、イスラエル軍への支援を拡大し、AIを使った自動意思決定やデータ処理、標的リスト作成に使用される自動予測型警戒技術(automatic predictive policing technology)を提供したと考えられている。

 報告書ではまた、アメリカの「キャタピラー」社や、レオナルド傘下の「Rada Electronic Industries」社、韓国の「ヒュンダイHD」、スウェーデンの「ボルボ・グループ」なども、ヨルダン川西岸地区における住宅解体や違法入植地開発のための重機を提供していると明らかにした。
 また戦費の調達には国債が重要な役割を果たしており、ガザ侵攻でイスラエル国債の信用が下がったにも関わらず、世界有数の銀行であるフランスの「BNPパリバ」やイギリスの「バークレイズ」なども上乗せ金利を抑制するために、介入したという。

 これに対し、イスラエルのダノン国連大使はアルバネーゼさんを激しく非難。米国もルビオ国務長官が彼女への制裁を発表しています。
イスラエル、国連特別報告者に反発 パレスチナ人「根絶」の指摘めぐり 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
米政権、アルバネーゼ国連人権特別報告者に制裁 国際刑事裁への支持に関連と - BBCニュース

 この様子は本邦のNHKのニュースでも報道されています。
米国務長官 国連の特別報告者を「反ユダヤ主義」などと非難 制裁発表 | NHK | 国連

 しかし、表面的な報道のせいか、両者が非難合戦をしているような構図にしか見えません。さらに言えば、それは、問題の出発点にすべきアルバネーゼさんの報告の中身に立ち入る前に、彼女のことを「イスラエルに対する厳しい批判で知られています」などと形容する文言を前置きし、彼女の名前を初めて聞く人たちを「誘導」するからでしょう。意図的に先入観をもたせようとしているとしたら悪質です。というより、おそらくは慣れっこになっているのでしょう。たとえば、オスプレイの墜落を「着水」という語に「読み替え」てしまうところに現れているように、こうした「政治的」報道をする際の「文法」というか「方程式」が体質として染みついてしまって、「自然」なかたちでこういう表現(伝達文)を「出力」するようになっている気がします(どっちにしても悪質性に変わりはないですが)。

 『地平』同号には、日本の商社伊藤忠の子会社とイスラエルの軍需大手の協業(覚書)を反対運動で解消させた話もあります。これはまあいいとして、日本の年金積立金を管理運用する独立行政法人(GPIF)が2024年3月末現在で、イスラエル国債を2,270億円、イスラエルに武器を供給する軍需企業の株式を11社分、合計6,398億円を保有していることが明らかになったと書かれていて驚きました(同誌、125頁 註2)。

 自分たちの年金積立金がイスラエルのあのような破壊と蛮行を支えるなど、あってはならないことです。どうにかして虐殺と破壊を止めなければいけないと思っているときに、こういう「事実」を突き付けられて、怒りと落胆が混じります。できることはしないといけないと思っていますが、朝から、何たることか!と怒っているところです。


 
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