生徒:あれぇ、今日はこんなに人が大勢集まっちゃって、「総合的な学習の時間」の授業はないのぉ?
生徒:うん、何でも祝賀会をやるんだって。
生徒:祝賀会? 何の?
生徒:トランプ先生がノーベル平和賞を受賞するから、その前祝いをやるそうだよ。
生徒:えっえー!?
生徒:ノーベル平和賞って秋に発表されるんでしょ。今はまだ8月だよ。
生徒:ずいぶん、気が早いというか、うぬぼれが過ぎるというか……。
生徒:ノーベル戦争賞の間違いだろ。イランに爆弾を何発も落としておいて、何が平和賞なのよ。相変わらず恥知らずな御仁だなぁ。
トランプ:こらこら、また陰で悪口を言ってるやつがいるなぁ。
生徒:せんせー、今日はノーベル平和賞の前祝いをやるって聞いたんですけど、本当ですか?
トラ:ああ、本当だ。
生徒:まじですかぁ。せんせー、ノーベル委員会から何か連絡でもあったんですか?
トラ:ないけど、ノルウェーのストルテンベルグ財務相に賞を受諾すると前もって電話をしておいた。
生徒:財務大臣とノーベル委員会は関係ないと思うんですけど。なのに、そんな電話で圧力をかけるようなことして。
トラ:それにイスラエルのネタニヤフ君が推薦状を送ってくれている。
生徒:国際指名手配中の人物から推薦されたら、普通は逆効果でしょうに。
トラ:亡くなった日本の「名総理」安倍シンゾー君もかつて私を推薦してくれたことがあるんだ。
生徒:「迷走理」の間違いでしょう。そういう人たちが何人推薦したって、何の箔付けにもなりませんよ。受賞候補にさえなってないんじゃないですか?
トラ:そんなことはない。昨日私はアラスカでぷーちゃんと会ってウクライナ戦争について首脳会談をしたんだ。オバマは演説しただけで受賞できたんだから、それに比べたら、私のほうは実際に交渉に汗をかいて何倍も世界平和に貢献している。もう、私の受賞は決まったようなもんだ。
生徒:首脳会談って、停戦は実現しないし、ほとんど何も成果が上がってないじゃないですか。プーチンに結局すっかり丸め込まれちゃって……。
生徒:そうですよぉ。プーチンが停戦に応じなかったら、強烈な経済制裁(二次関税)を課すって言ってたのに。それっていったいどこに行っちゃったんですかぁ。
生徒:これじゃまた「TACO(Trump Always Chickens Out トランプはいつもビビって逃げる)」とみんなから揶揄されちゃいますね。
トラ:まあ、待て、待て。細かいことは言えないが、大筋で合意ができたから発動を見送っただけで、交渉に何も進展がなかったわけじゃない。
生徒:「合意」って、要するにロシアが占領中の東部をロシア領として割譲するって話でしょ。ウクライナのゼレンスキー大統領や欧州各国がそんな条件飲むわけないですよ。
トラ:そりゃ、わからん。ゼレンスキーが次に会ったとき、何と言うか。このまま戦争を続けてもウクライナにメリットがないと英断ができれば、戦争は止まる。
生徒:それじゃ、戦争を始めた側の「やり得」じゃないですか。そんな収拾の仕方じゃウクライナの人はもちろん、国際世論だって納得しませんよ。
生徒:それに、実は別個に、プーチンと北極海の航行や資源開発をめぐってディールしたんでしょ。
トラ:何を不謹慎な。
生徒:エプスタイン問題もあるから、四六時中話題を提供して、はぐらかしてないといけないし……。
生徒:要するにせんせーは不動産取引のノウハウはお持ちだけど、そういうのは外交とか停戦・和平交渉には不向きだということですよ。ノーベル平和賞なんて、お門違いも甚だしいです。
石破:せんせー、ノーベル委員会から電信が入りました。
生徒:えっ?! まさか……。
トラ:よしよし、読み上げたまえ、ルーム長。
石破:はい。「米国大統領ドナルド・トランプ殿。本委員会は熟議を重ねた結果、貴殿に『ノーベル平和残念だったで賞』か『ノーベル平和よくがんばったで賞』を贈ることを決定した。いずれか受賞を希望される方を〇で囲んで折り返し本委員会に連絡されたし。以上」
トラ:な・に・ー!?
生徒:ノーベル委員会では、せんせーのやってることは、小学校の行事の特別賞レベルの評価なんですねぇ。
生徒:みんな、潮が引くように帰っていきますよ。
トラ:むぅ、まだノーベル平和賞の正式発表までには時間がある。私は絶対にあきらめんぞー!
生徒:はぁ……。
