今日はイチローさんがアメリカの野球殿堂入りしたニュースを見ていて感じたことを書きます。
現役時代の一挙手一投足もそうだったし、引退記者会見のときもそうだったし、イチローさんは常に全身「野球少年」でした。いつもファンを思いやり、楽しませようとする姿勢、職人気質というか信念を曲げずに駆け抜けていく姿は、今でも「大味」なアメリカ式の野球(ベースボール)に、不思議な波紋を呼んだと思っています。もちろんそんなことを言っても、こちらが知らないだけで、人としての揺らぎや迷いはいろいろあったと思いますが、記録的にも、人格的にも、一日本人選手として云々するようなレベルを超えた存在です。大谷選手もすごいけど、イチローさんはまた別格だと思います。(弓子夫人のつくった)カレーライスが大好きなところも共感しています。
事前に「プレッシャーで押しつぶされそうで、えらいことになっています」と述べていたスピーチも、なかなか笑わせます。一番笑えたのは(他の人もそうだと思いますが)、次の箇所でしょうか。
イチロー米野球殿堂入り式典英語スピーチ(全文と和訳)
……私がここに立っている最大の理由(は)……私の技術が他の誰より優れていたからではありません。3000本安打や、1シーズン262本安打という記録は、記者の皆さんが評価してくださった成果です。
…ただし、一人を除いては、ね(笑)。ちなみに、その記者さんへの「家に招待して一緒に食事をする」というオファーは、もう期限切れです(笑)。
それから、個人的に最も心動かされたのは、次の部分です。
……私のことを記録で評価する人は多いです。3000本安打、ゴールドグラブ10回、10シーズン連続200本安打。なかなか悪くないでしょう?
でも、真実を言えば、野球がなければ、私は「ただのアホな奴」と言われていたかもしれませんよね?(笑)……野球は、ただ打って、投げて、走るだけのものではありません。野球は、人生で何が大切かという価値判断を教えてくれました。世界や人生に対する私の考え方の礎になりました。
子供の頃、私は「野球はずっと続けられる」と思っていました。でも年を重ねるにつれて気づいたのです──45歳までプロの最高レベルでプレーを続けるには、すべてを野球に捧げなければならないということを。
「チームのためにできる最高のことは何か?」と聞かれたことがあります。私の答えは「自分に責任を持つこと」です。自分に責任を持つというのは、言い訳をしないということです。ヒットが出なかった日、キャッチできなかった日、「いいピッチャーだった」とか「太陽が眩しかった」とか言うのではなく、「もっと自分にできたことがあったのではないか」と正直に向き合うことです。そうすることでチームメイトを支え、ファンを裏切らずにすむのです。
<中略>
私が記者の皆さんに認めていただいたような記録を達成するには、19シーズン、毎日、小さなことに注意を払い、徹底して継続することが必要でした。
私は毎日、自分の道具を自ら手入れしました。グラブの糸のほつれでエラーすること、スパイクの汚れで滑って走塁を失敗すること、それらを防ぎたかったのです。
オフシーズンでも私はルーティンを欠かさず、キャンプ初日にはすでに肩を万全にして臨みました。マリナーズの実況アナウンサー、リック・リズさんが「ホーリースモーク!イチローのレーザービーム!」と叫んでくれるのを心待ちにしながら。……
イチローさんが「国民栄誉賞」を受けないところも、小生個人としては実にいいところだと思っています。もちろん過去の受賞者の顔ぶれを見れば、イチローさんもその一人として「ふさわしい」と誰も反対などしないでしょうけれど、端的に言って、この賞が有名スポーツ選手の政治利用という側面は否定できませんし、(あきらめ悪く 笑)3回も打診してきた政府に対し「人生の幕を下ろした時にいただけるよう励みます」という返事には「さわやかさ」というか、「らしさ」が出ていて微笑ましいと思います。
今回の殿堂入りで一点「難癖」をつけるとすれば、殿堂入りのパレードでイチローさん夫妻がトラックの荷台に乗せられた(載せられた)ことでしょうか。どんな理由があるのかわかりませんが、こういう場合、普通はオープンカーじゃないんですかね。イチローさんは気にしないかも知れませんけど……。
イチローさん 「光栄に思う」 米野球殿堂入り表彰前に会見 | NHK | #大リーグ
それはさておき、イチローさん、ほんとうにおめでとう。そして、ごくろうさまでした。こちらも、ありがとうと言いたいです。
