前回のブログで、今の段階でいくら何でも米国がイスラエルのイラン攻撃に加わるなどという暴挙(錯乱)はないと思っている(が、こればかりはわからない)などと書きましたが、ほとんど間髪入れずに、アメリカの「暴挙」を見せつけられて仰天しました。町中のTVインタビューでも(確か大阪の女性だったと思いますが)「こんなこと、許されるんですか」と呆れている人がいましたが、同感です。バカな(一部)人類が繰り返してきた愚行から、やっと導き出してきた紛争回避の決め事が、こうもあっさり破られるとは。ロシアもそうですが、国連の安全保障理事会の常任理事国という重い責任のある国がこれでは、世界秩序はどうなるのか。大変な時代になってきたなと改めて思います。
いつも勉強させてもらっている弁護士の宮武領さんのブログでは、国際司法裁判所は、国連憲章と国際法違反によりトランプに逮捕状を出すべきだと述べられています。プーチンに逮捕状を出すならトランプも同罪でしょう。
ドナルド・トランプ氏が大統領を務めるアメリカ合衆国がイランの核施設に攻撃。これは国連憲章違反であり、核施設を狙ったという点で国際法違反だ。国際刑事裁判所は戦争犯罪人トランプにも逮捕状を出すべきだ。 - Everyone says I love you !
宮武さんによると、今回のアメリカによるイラン攻撃は、まず、国連憲章第2条4項の「いかなる国も他国の領土保全や政治的独立を侵害する武力による威嚇または行使をしてはならない」という条項に違反し、かつ、イランがアメリカに武力行使をしたり威嚇した事実もないので、自衛権行使にも当たらない。加えて、攻撃対象が核施設なので、国際人道法(ジュネーブ諸条約)第1追加議定書第56条で禁じている「ダム、堤防および原子力発電所」の攻撃にもあたり、国際法の違反にもあたるということです。
一応国際社会の理解や「お墨付き」をもらってからやるという発想があれば、かたちだけでも国連安全保障理事会にイランへの攻撃を諮るという手もあったはずです。批判の多いイラク戦争時、あのブッシュjr政権でさえ、そんな「手順」を踏んでいました。ところが、それが首尾よくいかなかったせいもあるのでしょうか、今回は国際社会に対する「配慮」さえなく、完全な独断専行だったようです。自由の国アメリカには他国を攻撃する自由があるとでも言うのでしょうか。
前回も引用しましたが、『藤田省三対話集成3』の中で政治学者の故丸山真男さんはこう述べています。
……原理的な問題でいえば、法と自由……というのは不可欠だということ、法がなければ自由はなしという観念を徹底させなければいけないんですね。キケロかな、有名な「われわれは自由であるがために法の奴隷となっている」という。法の奴隷にならなければ人の奴隷になるんでね。人間の奴隷になりたくなけりゃ法の支配に服するということを言い出すしかない。その二者択一ですよ、実際は。だけどそのこと自身、全然ないでしょ。むしろ法から自由になりたいという。……
(同上書、30頁)
日本の首相も都合よく「法の支配」という言葉を振り回しますが、(まず一般市民よりも)政治権力者に法の支配(制約)があることをどれだけ意識しているのか疑わしいものです。トランプなどは、「法の支配」の意味さえ知らないのではないかと思われます。
攻撃後の米国ヘグセス国防長官の会見を見ました。トランプを賛美する彼の様子を見ていたら、さながらヒトラーを賛美しているゲーリンクのように見えました(たぶん、チャプリンの映画『独裁者』でヒンケルにおべっかをつかうヘリング元帥のイメージが重なったのだと思いますが)。時計の針が100年前に戻ってしまったような感じです(もちろん生きていないのでわかりませんけど)。ここには「法の支配」はなく、「人の支配」のみです。
アメリカでは来年FIFAのワールドカップが予定されていますが、イラン代表は同大会への出場が決定していて、「Guardian」紙によれば、イランとアメリカとの対戦を避けるために選択肢を検討する事態になっているという話があるそうですが、そんなレベルの話なんですかね。国際法に反するような国に自国の代表は送れない、試合などできない、そんな意見が出てきてもおかしくないと思います(実際、IOCからオリンピック出場を止められているロシアは友好国との国際競技会を独自に開く意向のようですし、関係ないけどもっとすごいのは、アメリカはドーピングOKの国際大会を来年ラスベガスで開く意向なんだそうです。もうやりたい放題です)。こうしたまともな意見も「政治とスポーツは別だ」みたいな話で、娯楽優先=スポーツ・イベント資本主義の力で押し流されるのでしょうか。それでは、トランプもアメリカも(イスラエルも)、絶対に反省などしないでしょう。
今朝、トランプが「イスラエルとイランの間で12時間の完全かつ全面的な停戦が合意された。その時点で戦争は終結したと見なされる」と、SNSに投稿したそうです。イランの高官は合意を認めたようですが、イスラエル軍はイランの首都テヘランの一部の地域に退避を通告しました。トランプ大統領のSNS投稿の後の話だそうです。ネタニヤフ、許すまじ!です。
“イスラエルとイラン 停戦合意” トランプ大統領がSNSに投稿 | NHK | トランプ大統領
