ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

……そして、恨みだけが残る

 イランとイスラエルの戦闘を伝える報道を見ていると、日常に溶け込んだ戦争に違和感というか、やるせない気持ちになります。自国の安全とか、国家の威信とか何とか、自国民を煽る物言いには事欠きませんが、事実は、昨日まで普通に暮らしていた人々が、この蛮行によって死に、住まいを失い、人生や生活を破壊されているということです。それを周りは止められず、娯楽を交えたテレビ放送などで様子を見るしかない。「劇場」見物や消費財と変わらない――他の多くの人は、何とかならないのかと思いつつも、自分の毎日を生きているという感じです。

 国際社会が「社会」であるなら、こんな機能不全状態であってはならないでしょう。
 今朝の毎日新聞の記事に、カナダに集まったG7の首脳たちは、イスラエルによるイラン攻撃を巡り「国際法上の懸念がある」などと名指しはせずにイスラエルを批判したり、双方の自制を求めたりする発言をしていたことが……判明した、とありました。
G7内で「国際法上の懸念」の声 イスラエルの攻撃巡り 石破首相ら | 毎日新聞

 「国際法上の懸念」じゃなくて「違反」です(明確に!)。それに、名指ししないでこれがイスラエル批判になるはずもない。もし、イランがイスラエルに対してしかけたことだったら、G7は絶対にこんな大甘な対処はしないでしょう。

 同じ毎日新聞の国際面の解説記事にはこうあります。
イスラエル・イラン:イスラエル・イラン、武力衝突 見えぬ「終結」のかたち 発生1週間 識者、長期化の見方も | 毎日新聞

……エジプトのイラン専門家、アラア・アルサイード氏は「紛争の解決は遠い」とみる。「イスラエルは、単に核施設を破壊するだけでなく、イランの抑止力そのものを完全に排除することを目指している」と考えるからだ。
 「イスラエルはイランがウラン濃縮や核施設を放棄すればいったんは攻撃をやめるかもしれない。だが、イランの近隣国への影響力が払拭されるまでは、安全保障は不完全なままだと認識している」……。
 今回のイスラエルの攻撃で、イランは安全保障が根幹から揺さぶられた。将来的にイスラエルの攻撃を抑止するには、弾道ミサイルを上回る新たな兵器の開発が必要だと考えても不思議ではない。
 アルサイード氏は「イランは(安全を)『保障する武器』がなければ体制の存続は難しいと感じたはずだ。今後、ひそかに核兵器の開発を進める可能性がある。この戦争はイランから核兵器を遠ざけるものではない。むしろ核兵器だけが自国を守れると確信させる機会になった」と指摘する。

 アルサイード氏の見方が正しいとすれば、イスラエルがイランの核施設をいくら壊し、指導者を殺害しても(犯罪!)、イランは核兵器をつくるのを止めない。むしろ、いっそう核に拘泥するということでしょう。つまり、この攻撃(戦争)は逆効果ということ。イランはどこかの国みたいに、戦争に負けると、鬼畜米英と言ってきた国の忠犬になるような国ではないということです。

 イスラエルのネタニヤフ首相は走るのを止めたとたんに(汚職で)捕まりそうだから、走り続けるしかない。だから、ハマスヒズボラを実質殲滅しても戦争を止められない。保身のため(だけ)に多くのイスラエル国民を巻き込んで。
イスラエルの紛争を終わらせないネタニヤフ首相の事情、汚職疑惑や米大統領選…理由はハマス根絶だけではない(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)

 国際社会が「社会」として機能しない以上(もちろん、可能性のあることはすべきですが)、残っているのはイスラエル国民の世論変化、良識しかありません。





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