今日も短く(のつもりで)。
今の高校生が将来なりたい職業の1位は男女とも「教員」!?――率直に驚きました。これは「学校の教員」にとどまらず、広く「教員」という意味なのかと「勘ぐって」しまいますが、近年の教員採用試験受験の不人気ぶりからすると、にわかには信じられません。逆に、もし、本当に「教員」が若い世代に人気の職業であるとしたら、現状では、そのまま大学に進んで、学校教員への道を選択しない若者が多数となる現実とは何なのか、その齟齬、ギャップを見ないわけにはいきません。
高校生のなりたい職業、1位は教員に【ベネッセ教育総合研究所・東京大学社会科学研究所調査】|EdTechZine(エドテックジン)
「給特法(公立学校の教職員の給与に関する特別措置法)」の改正案が3日前の6月11日に参議院本会議で可決されました。現行の公立学校教職員の残業代は、労基法に基づくものではなく、月給の4%を一律支給する「教職調整額」が上乗せされるかたちがとられています。本改正により、来年の1月からこの支給率は段階的に10%へ引き上げられることになります。
しかし、学校で日々働いている多くの教職員が望んできたことが、「手取りを増やせ」でないことは、本ブログでも以前から書いてきたとおりです。岐阜県の公立高校の教員で、ずっとこのことを訴え続けてきた西村祐二さんは、「教師を殺す気か」と、次のように言っています。
「教師を殺す気か」現役教員が語る"沈みゆく教育現場"、給特法改正は「評価できない」 - 弁護士ドットコム
「自転車操業のようだった」教員になってからの7年間
「スーパーに行くことすら考えられなかった。生活のことは全部、妻に任せていた」
そう語る西村さんは、教員になってから7年間を「自転車操業」と振り返る。
朝6時に起床し、授業準備から1日が始まる。定時は午後5時までだが、その後も3時間以上の残業が日常だった。帰宅後も夜10時から11時半まで翌日の授業準備に追われ、精神的な余裕はまったくなかった。
これは決して例外ではない。文科省が2022年度に実施した教員勤務実態調査によれば、月80時間以上の「過労死ライン」を超えると想定される教員の割合は、小学校で16.6%、中学校で36.6%に上っている。自宅での持ち帰り仕事を含めれば、実態はさらに深刻だ。
「減らしても、また増える」業務削減は"いたちごっこ"
政府や自治体は、学校行事の見直しや外部委託の導入など、教員の業務削減を進めている。
しかし、西村さんは「何かを減らしても、また新しい業務が加わる」と"いたちごっこ"のようだと指摘する。
たとえば、コロナ禍に学校行事は縮小されたが、一方で「GIGAスクール構想」が始動。1人1台のタブレット端末が配布され、教員は機器管理やICT対応に追われた。
議論が進められている次期学習指導要領においても、授業時間の削減は明言されていない。
「業務は減らないのに、『早く帰れ』と求められる。(結果として)持ち帰りの仕事が増えるのでは」と西村さんは危惧する。
「手取りを増やせ」とは誰も言っていない
改正給特法では、時間外手当の代替として支給されている「教職調整額」について、現行の月額4%から年1%ずつ引き上げ、2031年には10%とする方針が盛り込まれている。
しかし、西村さんは「手取りを増やせとは誰も言っていない。教師を殺す気かと思う」と厳しく批判する。
とくに問題視しているのは、教員勤務実態調査の継続が明言されていない点だ。
「調査さえ継続してくれたら、やっぱり残業時間は減らなかったと明らかになるし、そこからもう一度、議論が起きるはず。調査すらしなければ、ブラックボックス化してしまう。(働き方改革に)やる気が感じられない」と憤る。
教員不足の現実、「定員割れ」の異常事態も
教員不足は、いまや全国的な危機となっている。
2025年度の教員採用試験では、佐賀県と宮崎県で小学校教員の倍率が「0.9」倍となり、ついに「定員割れ」が発生した。出願者数が採用人数を下回る異例の事態だ。
西村先生のもとにも、教職課程に進んだ卒業生から不安の声が届く。
「いつも朝早く来て、夜帰っている姿を見る。本当に教職に就いていいのかと。『そんなことないよ』とは言えない。(実際)その通りなんです」
かつて「安定した仕事」として人気だった教職も、いまや「ブラック」と揶揄されるのが現実だ。
「いろんな人が声を上げているから、数年後にはマシになっているかもしれないとか、一緒に現場に入るなら一緒に変えていこうよと伝えたい。それが正直な思い」
「このままでは船が沈む」
西村さんは今の学校教育の現場を「沈みかけた船」にたとえる。
「荷物が多すぎて沈みかけている。そのうえ給特法という法律で(船底に)穴が空いている。そのなかで荷物も減らさず、教員という船員も減る中で、なんとかみんなでバケツリレーして水をかき出しているような状態です」
だからこそ国には、教職を志す若者が未来や希望を持てるような政策を求めたいという。
「この船には教員だけでなく、子どもたちもたくさん乗っている。教育という船を沈めてはいけない。給特法の下では限界が来る。そのときに、もう一度、抜本的な議論をすることが大事です」
昨日はこんな記事も見ました。山梨県の私立の中学校で、免許のない教科を教える「無免許運転!」が横行していたという話です。今はどうかわかりませんが、こんな話は千葉県内の公立学校では30年前から普通にありました。
山梨:教員免許持たない職員に国語の授業担当させ、自身も無免許で理科・数学の授業…私立中の元校長に罰金命令 : 読売新聞
1990年代の千葉県内のある中学校の話です。新採で社会科が専門の教員に、理由はよくわかりませんが、社会科の授業は持たせず、美術と英語の授業をやってもらうことになったそうです。おかしいと気づいた保護者がPTA総会で、「美術の〇〇先生は専門外の英語を教えているそうじゃないですか。どうなってんですか!」と抗議したと。〇〇先生は「いや、実は美術も専門外でして……」と言いたかったけど、言えなくなってしまったのだとか。こういう「違法行為」が今もそのまま続いているとは思いませんが、教員に何でもやらせる「風土」は残存している感じがします。
小生の教えた子どもたちの中にも教職に就いた人がいます。自分の教え子が教職を目指してくれるのはうれしいことです。けれど、子どもから「わたし、先生になりたいんです」と言われると、(当時も今も)上の西村先生と同様、躊躇せざるを得ません。
「いろんな人が声を上げているから、数年後にはマシになっているかもしれないとか、一緒に現場に入るなら一緒に変えていこうよと伝えたい」――この西村先生の思いをもっともっと多くの人々が受け止めて、変革の後押しができないものかと思います。
