ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

人口減社会と無法労働

 人口減少社会についての報道をいろいろと目にします。先週、厚生労働省の発表で、去年1年間に生まれた日本人の子どもの数が68万6,061人と、70万人を下回ったことが大きなインパクトを与えていると思われます。2023年(2年前)の政府の予想では、出生数が70万人を切るのは2043年だったそうですから、20年近くも前倒しになったわけです。政府がどんな試算をしたのかわかりませんが、想像を超えるペースで人口が減っているのは確かでしょう。
去年の出生数68万6061人 初めて70万人下回る 合計特殊出生率は1.15に 厚労省 | NHK | 少子化
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 人口減(子どもの数の減少)の主たる理由としては、まず「結婚の減少」が挙がることが多いです。あとは、上のTBSの「Nスタ」の冒頭での街頭インタヴューで30代の女性が話しているとおり、「……育休が取れなかったりとか……産め産めって言ってるわりには(支援などが)全然ダメ」なことです。

 構造的な問題だと思うので、何かひとつの対策でどうこうできないと思いますが、雑誌『地平』の最新号を見ていたら、竹信三恵子さんの「ルポ無法労働――非正規公務員の荒野」にこんな記事が載っていました。

 公務員といえば安定――。そう考える人は少なくないだろう。各種ある「結婚したい人の職業人気ランキング」でも、「公務員」は軒並み最上位に位置づけられている。
 だが、非正規公務員の世界に足を踏み入れると、そこには「無法労働」とも見える無保護と不安定が渦巻いている。そんな非正規公務員自治体で約74万人、国で約15万人。すなわち、一線で公共サービスにあたる公務員の大半が非正規であり、さらにその先に、これに支えられる私たち住民がいる。……
 ……(広島県の)アキコ(仮名)は40代。2018年に一年有期の「臨時職員」として(町役場の)事務関係の職務に就き、2020年度から国が新設した一年有期の公務員「会計年度任用職員」へと職名を変えつつ、五回の更新を経て通算6年間、働いてきた。……
 状況が一変したのは2024年9月、自らの妊娠を知ったアキコが所属課の上司に報告してからだった。それまでは「戸籍制度にも強いので助かる」と上司から言われ、仕事の上での失敗もなく、順調に任用を更新されてきた。町には非常勤職員にも適用される「職員の育児休業等に関する条例」があり、育休は取得できると思っていた。
 だが、上司の一声は、「いつまで働くの?」。妊娠したらやめて当たり前と思っていたのかと驚いた。アキコはシングルだ。やめれば収入が途絶える。
 気を取り直し、「出産予定日は3月下旬。4月から育休を取りたい。職場に復帰したらまたがんばります」と話した。ところが、続く10月の上司との面談で、上司はこう言った。「会計年度任用職員は4月から3月末までの会計年度で終わる働き方。仕事始めの4月時点で休んでいる人は更新できない」「産後また働きたいのであれば、また一から面接を受ける必要がある。どこの部署で募集が出るかはわからないが」。
 「あなたの代わりの人を雇えばその人の賃金の分、負担が増え、税金から出される」「看護師や保育士のような特別な資格があれば囲い込みが必要かもしれないが」とも言われた。6年間の実務で培ってきた熟練とスキルは評価の対象にもされていなかったことに、そのとき気づいた。
 それまで、任用を更新するかどうかの面談は年度末が近づいた2月か3月に行われてきた。10月の更新打ち切り発言は妊娠の報告が原因としか思えなかった。「地方公務員の育児休業に関する法律」では、育児休業を理由として不利益な取扱いを受けることはないとされている。これは育児休業などを求めたことによる不利益扱いではないのかと疑問を持ち、町としての見解を聞きたいと、アキコは総務課に説明を求めた。すると、なぜか再び直属上司が対応し、「妊娠や育休が問題なのではなく、『トータルな勤務態度』に問題があった」と、理由を変えてきた。
 「勤務態度の問題って何ですか」と聞くと、「勤務中に他の部署に行って長く話をしていたり離席していたりすることがあった」「決まった曜日に休んでほしかったのに休む曜日がまちまちだった」「夏の服装に露出が多かった」「交通費は自宅から役場までの分が支給されているのに、たまに違う場所から出勤していたのは不正ではないか」などと言われた。
 だが、勤務中に他の部署に打ち合せに行くことは職場の円滑な意思疎通のためでもあり、正規職員もやっている。休む曜日がまちまちだったのは、正規職員にはある妊婦健診のための特別休暇制度が、会計任用職員には説明がなく、自力で工夫して妊婦健診の時間をひねり出してきたからだ。これについて注意を受けたこともない。後出しジャンケンのような理由付けによって、自力で懸命に工夫してきた努力を否定された気がした。
 「夏の服装」については「クールビズ」の一環としてノースリーブでも働いていいかと総務課長に確認し、問題ないと言われていた。交通費に至っては、個人のプライバシーを監視されているようで、薄気味悪かった。
 ……産休までが、「任用」の終わる3月末まで、と言われた。産休は、法律で産前6週間、産後8週間とされているから、普通5月下旬までは取得できるはずだ。出産手当金もアキコから問い合わせてようやく書類が届いた。任期が終わる3月末には健康保険証も返せと言われた。これでは4月から母子ともに困窮する。
 「会計年度」という一年ポッキリの働かせ方を盾にとり、都合のいい時は「再任用」として働かせつづけ、妊娠・出産となると捨てる。「少子化対策」と叫んできた行政が、率先して少子化を促進しているような気がした。……
<中略>
 ……(竹信さんが町役場の総務課で)「……女性が雇止めになったのは妊娠のせいではなく、勤務態度が理由ということだったが、どのような勤務態度が問題だったのか」と聞くと、課長は、服装でも交通費でもなく、「他の職場に出向いて話をしていたことです」と答えた。
 「他の部署に行って話をすることなんて正規の職員も含めて誰でもやること。それで任用を打ち切りとは重すぎないか」と聞くと「そういうことをする職員はいないと思う」と答えた。……課長はまた、「会計年度職員は一年の会計年度で仕事は終わるという原則なので、複数回の更新を前提とした『雇い止め』というそちらの表現は適切ではないのでは」とも言った。
 これまで育休を取った女性たちと、今回の女性とはどこが違うのかは、結局わからなかった。ただ仮に上司が「妊娠したら退職して夫の傘に入るもの」と思い込んで育休を認めなかった場合、職員が育休法違反と抗弁すると、役所は理由を「勤務態度」に変え、その妥当性を追求されたら「管理運営事項」と突っぱねることが、制度上、不可能ではないことはわかった。それが「会計年度限りで任用される職員」であれば、年度末なのだから自然にいなくなって当然、という形で闇に葬ることは、そう難しくない。……

                    (『地平』2025年7月号、34-41頁)

 取材を受けた町も、これはヤバイ、何とか「違法」と言われないようにと、あれこれ理由をしつらえようとした挙げ句(さすがにノースリーブで働いたからとは言えず!)、結局「管理運営事項」(安全地帯?)に抵触するみたいなところへ逃げ込みをはかったというところでしょう。あまり詳しくはありませんが、「管理運営事項(規則)」をもちだせば、勤務時間や具体的な労働条件や環境などの話とちがって、一般論としての勤務状況みたいな話で押し通せるということなんでしょう。それにしても、他の部署で話をしたのが解雇の理由って、まったく不当(な言い訳)です。
 2023年の調査では非正規労働者労働人口の37%で、全体の約4割を占めています。上の引用は町役場の非正規職員の例ですが、正規職員に比べて、給与のみならず、こうした不利な待遇をされながら、日々働き(働かされ)、おそらく正規職員だったらあり得ない理由で「解雇」されている事実(差別待遇)はもっともっと世の共通認識にならないといけないと思いました。




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