毎日政府備蓄米の販売に世間の注目が集まり、さながら「新小泉劇場」の様相です。今朝の毎日新聞の川柳欄は、この備蓄米をお題にした句を選りすぐっています。
仲畑流万能川柳:米あって当たり前だと思ってた | 毎日新聞
米あって当たり前だと思ってた 藤沢 松竹梅さん
備蓄米GPSのタグ付けろ 西宮 サバさん
配給の時代が来そう日本米 諏訪 平谷妙子さん
備蓄米タネもしかけも有り消える 宇部 ねこじじさん
米騒動どこかで誰かボロ儲け 大和郡山 苦気さん
備蓄米放出せずに配給を 大津 石倉よしをさん
備蓄米嫁いだ先でまた備蓄 妙高 池田 慎一さん
政府からJA移動だけの米 東京 エイリアスさん
株価より米価安定願います 逗子 オタルさん
備蓄米備蓄している奴がいる 兵庫 昔のジョーさん
原因は越後屋溜める備蓄米 桐生 香坊さん
自民党「米」扱いで票決まる 栃木 とちじーじさん
下がるっていったじゃないかコメ価格 日立 小雪さん
米すらも把握できない農水省 秩父 有朋さん
タワマンに住み減反の憂い説く 青森 よしのまちさん
日曜に大きなスーパーで買い物をした折に、お米のコーナーを覗いてみたら、値札に2,000円の表示が見えたので、おっ!? 話題の備蓄米がいよいよ棚に並んでいるのかと思って、よく見たら、2㌔のブレンド米でした。周りにも数人同じような買い物客がいましたが、みんな「まだ売ってないのね」と言いながら、売り場を後にしました。コンビニではすでに1㌔388円で販売しているところも増えているようです(小生はまだ目にしていませんが)。
しかし、農村のコメ農家の息子の感覚では、「非常事態」とはいえ、古古古米(2021年産)を食用にするのはどうなのかという思いはあります。先月某党の代表が「1年たったら動物の餌になるようなもの」と発言して糾弾されていましたが、感覚的には彼の言っていることはそんなにズレた発言ではないのです。実際、町中の穀物商に米の買い取りを頼むと、古米まではOKですが、古古米はちょっと……と引かれてしまいますし、かりに引き取ってもらえても、くず米と同じとまでは言いませんが、値段はけっこう買い叩かれます。おととし、フードバンクにお米を寄贈しますと申し出たら、古米まではいいけれど、古古米以下はご遠慮願いたいと言われました。管理技術が向上して、今や13℃前後で恒常的にコメを保管できる時代になりましたが、時間がたてば食味が落ちるのは避けられません。古古古米が食べられないことは決してありませんが、売り物としては出せないというのが普通の感覚だと思われます(つまり5㌔1,800円で安いコメを提供してくれてありがとうという空気が蔓延していますが、古古古米なんだからほんとはもっと安くなってしかるべきで、その分また儲けてるのがいるのかも、ということです)。それを政府は非常時に備えるという名目で、古古古米どころか、ひょっとしたら古古古古米(2020年産)まで大事に備蓄しているかも知れません。我々だって水やレトルト食品など、非常時の備蓄品は消費・賞味期限などを見ながら適宜入れ替えますが、20万トンずつ5年程度で順次入れ替えるという政府備蓄米の制度(発想)自体にも問題はないのか。
それにしても、最初は、なんで備蓄米を「単体」で売ることにこだわるのか、もっと販売方法を緩くして、ブレンド米にして(混ぜて)売っても可にすれば、コメ全体の価格が下がるだろうに。備蓄米だけ安く売ったって、他のコメの販売価格が同じように連動はしないだろうと思ったのです。……しかし、いや、そうではない、と思い直しました。
進次郎農水大臣の頭の中まではわかりませんが、市場に安い米を出せば、全体の平均価格だけは確実に下がりそうです。5㌔の販売価格で言えば、ブランド米5,000円+他・ブレンド米など3,000円の平均価格4,000円よりも、ブランド5,000円+他4,000円+備蓄米1,800円の平均価格3,600円の方が低くなるわけで!!(われながら、ちょっと計算が単純で乱暴過ぎますが 笑)、つまりは、その他のコメの価格が下がるかどうかは別にどうでもいいんで、とにかく、短期的に全体の平均価格が「下がりました」「下がっています」という事実が必要で、それをメディアに報道してもらって(させて)、世間の人が「ああ、そうなんだ」と実感する。「小泉農水大臣に代わってコメの値段が下がったなあ」「任命した石破首相のおかげだわ」と思わせる――それでいいわけです。参院選を前に、支持率が上がらない石破政権にとっては、そこに狙いがあるのではないかと想像します。実際、「観測気球」ではありませんが、「進次郎米」による内閣支持率の向上や参院選への効果を指摘する記事が散見されます。
小泉進次郎が内閣支持率を押し上げ「参院選で過半数とる」調査結果が信用できない理由 | アサ芸プラス
「進次郎効果」で政党支持率が激変――世論調査が示す“主役交代”のリアル│SAMEJIMA TIMES
米の値段が安くなるのは一般論としては好ましいことですが、選挙とのギブ・アンド・テイクということになると、従来のバラマキと何ら構図が変わらないわけで、そのウラで、選択的夫婦別姓や政治資金規正法(企業献金禁止)の法改正はなおざりにされていると考えると、メディアも我々もしっかりしないといけないと思います。
