5月3日憲法記念日。日本国憲法の施行から78年となりました。今朝の毎日新聞には、「改憲「賛成」21% 機運停滞」の見出しが見えます。4月12・13日に実施された世論調査によると、石破内閣で憲法改正を行うことに賛成は21%、反対は39%、わからないが39%だそうです。
毎日新聞世論調査:きょう憲法記念日 改憲「賛成」21% 機運停滞 毎日新聞世論調査 | 毎日新聞
一口に「改憲」と言っても、憲法のどの条文をどんな風に変えるのかを抜きに、ただ賛成・反対を訊いてもあまり意味はないと思うのですが、たとえば、「自主憲法制定」とか「押し付け憲法反対」を唱える人の中には、自分は「自主、自主」と言うわりに、他人の自主性を認めようとしない傾向があったり、自分は何かを押し付けられるのは嫌なくせに、人には何かを押し付けたがる人が意外に多かったりします。一般的に、他人から「こうしろ、ああしろ」と、何かを押し付けられるのは確かに嫌なことですが、でもたとえば、アルコール中毒の人が他人から「お酒もほどほどにしなさいよ」と言われて、「押し付けがましいことを言うな」、「俺の自主性を尊重しろ」などと曰うとしたらどうでしょう。
今の憲法は「占領軍」に押し付けられたと言われても、自分たちでは基本的人権を尊重すべきというような憲法はつくれなかったのですから(実際、「占領軍」から自分たちでつくってみろと言われてつくったら、大日本帝国憲法の二番煎じみたいなのしかつくれず、ダメだしされた案が多かったわけで)、たとえば、現行憲法の第11条には「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」とありますが、こういう内容ならば個人的に「押し付けて」もらってほんとによかったと思っています。念のために申し添えますと、現憲法を一方的な押し付けと考える人たちは、実際の憲法の制定過程をよく知らないか、誤解している人たちで、日米の合作という理解の方が妥当でしょう。
さて、3日前の話になりますが、4月30日に立憲民主党が選択的夫婦別姓のための民法改正案を提出しました。これが通るかどうかは後半国会のひとつの焦点です。
立民 選択的夫婦別姓 導入のための民法改正案を提出 | NHK | ジェンダー
自民党の中には「選択的夫婦別姓」をかたくなに拒絶する人がなお多くいますが、こういう人たちと「押し付け憲法反対」「自主憲法制定」を主張する人たちが重なるというのは、何というのか滑稽に思えます。「選択的」って言ってるのだから、別姓にしたくない人はそれでいいわけです。個々の夫婦の自主的な判断を尊重しましょうと言ってるだけなのに、自主的に憲法を制定しなければならないと考えるこの人たちは、他人の「自主性」を尊重しようとはしないで、不利益を被って嫌な思いをしている人たちに自分たちの価値観を「押し付け」ようとする――自己中心的というか、欺瞞というか、矛盾したスタンスをごり押しするところが This is the……です。経済界からも要請されているように、いいかげんに「世界標準」に揃えないと、「世界のてっぺん」なんて笑い話にしかなりません。
そう思っていたら、おもしろい記事を見つけました。去年の7月23日付「婦人公論」に載ったエッセイストの酒井順子さんと憲法学者の木村草太さんの対談です。「夫婦別姓」に反対する人たちは「家族の一体感が失われる」ことを危惧しているとよく言われますが、木村さんに言わせると、本音は別のところにあるみたいです。少々引用をお許しください。
憲法学者・木村草太×酒井順子 婚姻について学ぶ「家制度の始まりから現在まで。導入される前は夫婦別姓だった」 《選択的夫婦別姓》《同性婚》の現在地<中編>|人間関係|婦人公論.jp
「選択的夫婦別姓」に反対する人の本音とは
酒井 民法750条には「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」とあり、戸籍法でも婚姻届を提出する際、夫婦が称する氏を記載することが定められていますね。
木村 それが夫婦同氏制です。
酒井 「夫又は妻の氏」とあるのに姓を変えるのは女性が圧倒的に多く、2022年の内閣府の調査によれば全体の95%だとか。
改氏による職業上、日常生活上、精神的な不便・不利益が指摘されて半世紀は経ちますし、今年に入って経団連が選択的夫婦別姓導入の実現を政府に求めたこともありました。壁は政治ですか。
木村 1996年に、法務省の法制審議会が答申した夫婦別姓を認める法改正案が、自民党議員の反対多数で国会提出に至らなかった、ということがありました。別姓反対論者は戸籍制度を守るとか伝統的な家族観とかもっともらしいことを言っていますが、本音は違うと思いますね。
酒井 「家族の一体感が失われる」とかそういうことですか。
木村 選択的夫婦別姓が導入されたら、自分の妻が氏を変えたいと言い出すかもしれない。単にそれが嫌なんですよ。「妻に嫌われてるかもしれない」と不安を抱いている夫層が多いから。
酒井 え、そんな理由!?(笑)
木村 そんな理由でも、男性にとっては恐怖だと思いますよ。だって夫婦同姓でなきゃいけないまともな理由なんて、一度も聞いたことがないでしょう。往々にして、表に出せないくらい本音が恥ずかしいときほど、うさん臭い説明になりやすい。(笑)
酒井 それは驚きです! 木村さんはどういう点からその確信を得られたんでしょう?(笑)
木村 この問題を研究して長いので、当事者の話をたくさん聞いてきましたから。直接話を聞けば、本音はわかります。
酒井 じゃあ、自民党議員の多くが、わりとそういう不安を抱えているわけですか。
木村 加えて、その不安に共感する支持者も多いと考えている。いずれにせよ、不安を感じているのはこれから結婚する人より、すでに結婚している人たちです。
酒井 まあ、家父長制への幻想というか思い入れが大きいとは思っていましたが、妻子に離反されることが怖いんですね。でも自分が「嫌われてる」という自覚はあるんだ……。
木村 家父長制は、家長が自分の氏のなかにいる人に対して絶対的な支配権を持つシステム。……自分の支配下にあるはずの妻が、氏を変えたいと言い出すのが怖い。
すでに結婚していて同氏でうまくいっているなら、他人が別氏で結婚したところでどうでもいいじゃないですか。なぜあんなに頑なに反対するのか。どこかでわがこととして考えているからでしょう。
もしそうならば失笑ものですね。まあ自業自得でしょう。
自民党の「小心」な議員のことは一笑に付し、後半国会には注目しています。
