ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

今日2回目のデブリ回収

 大阪・関西万博開幕の「お祭り効果」で、ものにもよりますが、しばらくは様々な事件報道が薄められたり、かき消されたりすることがあるのではないかと心配しています。新聞では、この間に報道されないこと、ないし、報道されても「申し訳」程度の小さな記事に目を向けるべきと考えます。そう思っていたところ、今朝の毎日新聞の「総合・社会」面に、今日東電が福島第一原発2号機の核燃料デブリの2回目の取り出しに臨むという小さな記事がありました。
燃料デブリ、2回目の試験取り出しは15日着手 福島第1原発2号機 | 毎日新聞

 前回の回収作業は去年の11月でした。そのときに取り出したデブリの量は0.7グラムで、「耳かき一杯分」と言われました。今回は最大3グラムの採取を目指すそうですが、1~3号機の溶け落ちた燃料デブリの総量は推計880トンと言われています。このペースですべてを取り出すには、単純計算で100億年以上かかるという記事を以前読んだことを思い出しました。雑誌『地平』・2025年3月号でまさのあつこさんはこう述べています。

 2011年3月の福島第一原発(1F)事故から14年目を迎える。私たちは、1979年3月の米国スルーマイル島(TMI)原発事故や1986年4月のウクライナのチョルノービリ(チェルノブイリ原発4号機事故から、何を学び、何を学んでこなかったのか。前者から46年、後者から39年となる今、振り返る必要がある。
……

 チョルノービリから学ぶべきだったこと
 ……1Fと同じINES(国際原子力事象評価尺度)レベル7と評価されたチョルノービリ原発事故からも、学ぶべきことを学んでいない。そう気づいたのは2024年10月31日の東電会見だ。1F廃炉の最高責任者である小野明氏(福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデント)に、燃料デブリの取り出しは優先すべきことかと尋ねた時のこと。
 小野氏は、「チェルノブイリを見ていただくとわかるけれども、石棺方式をとったがために何十年も経ってから、当時固めたセメントの『象の足』が、経年劣化してボロボロに崩れて、外に舞い上がるような環境になって、慌てて巨大なドームを作った」との認識を示した。この認識は何重にも間違っている。
 日本では、チョルノービリ原発は、何もかもコンクリート詰めしたとの誤解があるが、「石棺」とは崩壊した建屋をコンクリートで覆った「シェルター」のことだ。「象の足」は、溶融燃料が下方向や横方向へ流れて固まった溶岩状の塊そのもの。事故から10年程度で崩れ始めたが、それで慌ててドームを作ったわけではない。約200トンの核燃料が広範囲に飛び散っていることがわかり、取り出しを断念し、1997年に欧州復興開発銀行(EBRD)がシェルター改善計画を立てて、新シェルター(NSC)を2018年までに完成させた。高さ110メートル、幅257メートル、長さ164メートル、設計寿命100年のNSC内で、将来的に廃炉作業が行われる。

 取り出し工法は未定
※要約:政府東電は燃料デブリの取り出し工法について、原子炉の中は非常に高線量で長時間人が入って作業することができず、気中・冠水・充填固化など、どの方法にも課題があり、決め切れていない。

 トラブル続きだった試験的デブリ取り出し
 そんな中で実行されたのが、二号機の燃料デブリの試験的取り出しだが、トラブルが続いた。まず、取り出し装置(ロボットアーム)の開発が遅れ、英国から装置が届いたのが、2023年4月。取り出し開始目標の2021年12月を過ぎていた。装置を、原子炉格納容器の貫通部(制御棒駆動機構を交換するためのハッチ)から挿入する構想だったが、同年6月、ハッチのボルト24本中15本が固着して開かないと判明。4ヶ月を費やしてそれを剥がし、ハッチを開けたら、そこは溶融堆積物で塞がれていた。
 堆積物を取り除いた段階で、ロボットアームの不具合が明らかになり、結局、以前の調査で使われた釣竿式の装置(以後、テレスコ装置)が採用された。
 しかし、2024年8月の開始当日に、テレスコ装置を押し込むための5本のパイプの組み立て順が間違っていて中断。組み立て直して9月に再開したが、今度は装置先端につけた4台のカメラのうち遠隔操作に必要な2台が映らず、また中断。記者会見ではカメラの耐放射線性、耐熱性についての質問が繰り返されたが、装置先端には温度計も線量計も室温計もつけておらず、東電は、温度も線量も以前の調査でわかっており、カメラの性能は耐性を備えているとしか回答できなかった。原因不明のまま予備カメラに交換して、作業を再開し、11月7日、ついに完了した。……
……今回の試験的取り出しのために東電が計画した被ばく線量は、作業開始から装置撤去まで610人mSv(ミリシーベルト)*。トラブル解決のために作業が増えたため、計画線量は960人mSvへと上乗せされたが、実績では取り出しただけで(未撤去)620人mSv。一人当たりの被ばく線量を低減するために、一日数時間の作業に70人前後の班体制で臨み、作業人数は延べ2,527人となった。
*集団線量の単位:610人mSvは610人が1mSv被ばくした線量を示す。
 こんなペースで880トンを取り出すなら、単純計算で100億年以上、2兆人以上が必要になる。チョルノービリで燃料デブリの取り出しの長期中断を決めたのは賢明な選択だとわかる。

 優先順位の見直しは?
 筆者は、事故処理で最優先すべきは、燃料デブリの取り出しではなく、地下水が原子炉建屋の地下に流入するのを止めることではないかと考えてきた。そうでなければ、燃料デブリに触れた汚染水が増えつづけるからだ。燃料デブリ取り出しの非現実性が明らかになったと思い、東電と原子力規制委員会に、記者会見の場を利用して尋ねてみた。
 しかし、2024年10月31日の会見で、先述した福島第一廃炉推進カンパニーの小野プレジデントは、「我々、燃料デブリはできるだけ早く出さないといけないと思っている。変な言い方ですけど、管理が我々の手の中にあるわけではないんですよ、あれ。(略)完全に管理しないといけない。それをなるべく早く達成するのが僕は一番大事だと思います」と強調。……

<以下略>
(まさのあつこ「フクシマ“廃炉”は可能なのか」、『地平』・3月号、83-88頁)

 小生はこの件で東電と政府を信用していません(この件に限りませんが 笑)。実際上不可能なデブリの取り出しにこれだけ執着するのは、他の意図や力学が働いているのではないかと勘ぐってしまいます。



社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村