今日は通院の日でした。朝から忙しないのに、所用ができて近所回りをしてから病院へ行くことになり、少々焦りました。でも、結果、検査の数値が悪くなったということもなかったし、先生からもダメだしはされず、終わってホッとしました。ところが、帰りに薬局へ立ち寄ると、顔なじみの薬剤師さんが……
「あのー、4月から皆さんにお話しているんですけど、現在マイナ保険証はお持ちですか?」
「いいえ。」
「そうすると、今の保険証は有効期間が過ぎると、更新されませんので。」
「あれ、でも、資格確認書というのは出るんでしょ?」
「はい、そうなんですけど、それも1年ですので……。ちなみにマイナカード自体は……お持ち……ですか?」
「いいえ。」
「そうなんですかぁ。……あのぉ、先日(薬剤師の)「勉強会」でも話題になったのですが、よろしければ是非マイナ保険証に切り替えていただいてですね……。」
「……って言うように、言われてるんですか?」(笑)
「いや、まあ、その、マイナ保険証は医療関係の人手不足対策や仕事量の低減にも役立ちますので。」
「はぁ? どういうことでしょう?」
「たとえば、どこかのお医者にかかっている人が、急に歯が痛くなって歯医者さんに行くことになるとですね、マイナ保険証があれば、歯医者さんも今服用しているお薬の情報をすぐに知ることができて、時短で人助けになるとか……。」
「いつもお薬手帳は持ち歩いてるから大丈夫です。それに何十種類も薬を飲んでるわけではないので。さしたる手間ではないといっても、マイナ保険証から情報を引っ張り出すより、お薬手帳を見た方が早いと思うんですが……。」
「あとですね、急に救急車で運ばれるなんてことになったとき、救急救命士さんもカードがあれば短時間ですぐにお薬の情報を把握できますので、これも人助けになるでしょうし……。あっ、もちろん、あんまりそういうことはないかも知れませんが……。」
「いや、それはわかりませんが。」
「ということで、是非ですね、機会があれば、マイナ保険証への移行をお考えいただいてですね……。」
この薬剤師さんに申し上げてもしかたがないので、喉元から出かかった言葉は飲み込みました。
――保険証を廃止せずに、運転免許のようにマイナカードと旧来の免許証を両方使えるようにすれば、何の混乱もなかったし、正す機会は何度かあったのに、河野太郎元大臣が単に先走って保険証を廃止すると言明してしまったばかりに、メンツを保つため依怙地になって、良識ある声に一切耳を傾けず、機会を失ってずるずるとここまで来てしまったのが混乱のおおもとです(そもそもマイナ保険証にするかどうかは「任意」ですから)。まず、河野元大臣が国民に対し「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と謝罪し、一部給与減額などというさして痛くもない責任の取り方ではない、しかるべきかたちの「政治責任」をとり、今後マイナ保険証と旧来の保険証は両方使えますと言えば、前向きに考える人が逆に増えるのではないでしょうか――。
しかし、この薬剤師さんの説明を聞いていると、自身がこの「理屈」に得心していないからでしょうけれど、全然説得力がありませんでした。だいたい「人助け」のためにマイナ保険証をつくれってんですから、強引というか、ついに人の「善意」に訴えかける手法できたかと、少し驚きました。そう言えば、知人が職場で自分はマイナカードをもっていないと言ったら、職場の長から(たぶん笑ってだと思いますが)「君は非国民だね」と言われたとか。情への訴え方も硬軟いろいろだと思うのですが、「非国民」も「人助け」もあまりセンスがあるようには思えません。
マイナ保険証への一本化は後期高齢者に限って来夏まで延期という東京新聞の記事も見ました。――「コロコロ変えないで」「普通の保険証でよくない?」――ほんとにそうです。
マイナ保険証への一本化、75歳以上は2026年夏まで猶予期間に 政府の方針転換、対象者はどう思った?:東京新聞デジタル
