ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「不動産に詳しい」が「歴史を知らない」大統領の妄言

 「米国はガザを統治する。ガザを所有し、不発弾などを解体し、敷地を整備し、破壊された建物を撤去し、経済発展によって多くの雇用と住居を提供する。……“中東のリビエラ”と言われるような素晴らしい場所になる可能性を秘めている」

――トランプ米国大統領の妄言にいちいちコメントを求められても、識者は困惑するばかりでしょう。しかし、かように「犯罪的なレベル」で無知蒙昧かつ非道な人間が、21世紀の世界の一大国の大統領であるのが現実です。
トランプ氏「誰もが気に入る」、波紋広がる「中東のリビエラ」構想巡り | ロイター


 石破首相は念願叶って明日トランプ大統領との日米首脳会談に臨むそうですが、共同記者会見をやらない(見込みな)のは「得策」というか、先見の明がありました。「同盟国」の為政者として、こういう輩を少しは諫めてほしい気はしますが、トランプ個人の機嫌を損なわないのが日本の「国益」だそうですから、会見場であれこれ質問されて「ボロ」を出したら大変です(もちろんこれは嫌味というか洒落です)。

 それにしても「中東のリビエラ」って、リビエラなんて、森進一の歌でしか知りませんが、BBCの解説によると、「トランプ氏はこの10日間、ガザのパレスチナ人をエジプトとヨルダンが「受け入れる」というアイデアについて頻繁に言及していた」そうなので、「思いつき」とはいっても、大統領周辺では既知の話でしょうし、記者も集まるネタニヤフとの共同会見で堂々と(得意げに)話すのですから、政権としてまんざら「想定外の突飛な話」でははないのかも知れません(ますます重大ですけど)。BBCは次のような解説記事を載せています。
【解説】 トランプ氏のガザ「一掃」計画、「国際法違反」とみなされるのは不可避 - BBCニュース

……トランプ政権の中東特使、スティーヴ・ウィトコフ氏はこれに先立ってこの日、トランプ氏を「不動産に詳しい男だ」と述べ、同氏の提案がどういう性質のものか簡潔に言い表した。
トランプ氏は、ガザが「中東のリヴィエラ」になると述べた。リヴィエラは、リゾート地として有名なフランスからイタリアにまたがる地中海沿岸地域の呼称だ。
アメリカがガザを「引き取る」との発言については、記者団から、アメリカ軍がこれに関わるのかとの質問が出た。「我々は必要なことをしていく」とトランプ氏は答えた。
トランプ氏の提案は、1948年のイスラエル建国、そして1967年の第3次中東戦争から続く、パレスチナをめぐるアメリカの立場を最も急進的に覆すに等しいものだ。パレスチナのガザとヨルダン川西岸は、第3次中東戦争を経てイスラエルが軍事占領している。
ガザは、イスラエル建国をめぐる戦争で故郷を追われるなどしたパレスチナ人が定住した場所だった。
それらの人々とその子孫は、今日に至るまで、ガザ人口の大多数を占めている。
トランプ氏の提案が実現すれば、現在ガザで暮らす200万人以上が、アラブ諸国のほかの場所、あるいはそれ以外の場所に「永久的に再定住」することを余儀なくされる可能性がある。
さらに、従来の意味での「2国家解決」の可能性を消し去ることになりうる。パレスチナ人やアラブ諸国は、追放計画だとして、かたくなに拒否するだろう。
ネタニヤフ氏の政治基盤を形成し、超国粋主義的な入植運動に関わるイスラエルの人々の大半は、トランプ氏の発言を支持している。「ガザが今後、イスラエルにとって脅威にならないよう」にするというネタニヤフ氏の目標を実現するための手段が、現実味を帯びてきたとみている。
一方で、パレスチナの一般住民にとっては、集団的懲罰行為に等しいものといえる。

 今次のガザ地区での破壊のきっかけはハマス側からの攻撃と拉致に対するイスラエル側の報復ですが、パレスチナイスラエルの紛争のそもそもの発端は、シオニストパレスチナ移住とイスラエルの建国にあります。それから半世紀以上の時間が経過し、この間シオニズム至上の教育が続けられた結果、シオニストパレスチナ人は共存どころかますます隔絶された関係に陥っています。パレスチナ人に対するイスラエルシオニスト政権の姿勢をトランプは、ある意味忠実にトレース(追認)しているだけかも知れません。

 「移住」と言えば、神話化された19世紀の米国大統領リンカーンにこんなエピソードがあります。
 南北戦争の最中、リンカーン大統領はホワイトハウスではじめて自由黒人(奴隷でないという意味)の代表と会見し、こう言いました。「あなた方黒人と私たち白人とはあい異なる人種で、そこには他のどんな2つの人種の間に存在するよりも大きな違いがあります。…….奴隷制度とその土台としての黒人がいなかったならば、今の戦争はありえなかったと思います。ですから、あなた方と私たちとは、別々に生活することが双方にとってよいのです」。そして、奴隷解放後の黒人の移住計画(候補地はアフリカかカリブ海の島々)に同意するよう求めたそうです。
 この話を聞きつけた当時の黒人解放運動の指導者フレデリック・ダグラスは、自ら創刊した黒人解放雑誌で以下のように述べたということです。

 「馬がいたからその馬を盗んだ」と言い訳する馬泥棒や、「やつがポケットの中に札束を入れて見せびらかすから、俺はその金を取ったまでだ」と言い張る強盗は、この点で、大統領と同様大いに尊敬に値します。しかし、馬泥棒をさせたのは、罪のない馬ではありませんし、強盗をさせたのも、ポケットの札束ではありません。そして、邪道なこの戦争が引き起こされたのは、 黒人がいたからではなく、泥棒や盗みや暴力に訴えても、馬や金や黒人を自分のものにしようとする人々の、残忍で野蛮な貪欲心のためなのです。
(本田創造『アメリカ黒人の歴史』、同『私は黒人奴隷だった』等による)

 トランプも同じように「パレスチナ人がいなかったならば……」と言い出さないとも限りません。小生の「妄想」だと思いたいのですが……。

 あと、もうひとつ重要なことですが、国際刑事裁判所から逮捕状が出ているネタニヤフを平気で受け入れることに強く抗議します。パリ協定からの離脱、WHOからの脱退に、今朝の新聞では、国連人権理事会からの脱退、ユネスコ=国連教育科学文化機関への加盟も見直す等々、この間の米国による目に余るルール無視、国際秩序への挑戦と破壊行為は看過できません。
トランプ大統領がネタニヤフ首相との共同記者会見でガザ市民の全員強制移住を打ち出し、「アメリカがガザを所有する」「土地を平らにして経済発展を作り出す」「パレスチナ人は喜んでガザを離れる」と言い出す(呆) - Everyone says I love you !




社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村