ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

イスラエル駐日大使の投稿について

 11日、今年のノーベル平和賞日本被団協日本原水爆被害者団体協議会)が選ばれ、大きな反響がありました。受賞の報せを受け、箕牧智之(みまき としゆき)代表委員が記者会見で、「パレスチナガザ地区で、子どもが血をいっぱい流して抱かれているのは、80年前と同じ、重なりますよ」と述べた一言に、イスラエル駐日大使のギラッド・コーエン氏が反応し、X(ツイッター)に「ガザと80年前の日本を比較することは不適切かつ根拠に欠ける」と投稿しました。彼は、こう述べています。

……箕牧 智之代表委員によるガザと80年前の日本との比較は、不適切かつ根拠に欠けています。 ガザはハマスによって支配されています。ハマスは女性や子どもを含むイスラエルの民間人を標的にしながら、自らの市民を人間の盾にするという二重の戦争犯罪を犯すテロ組織です。 ハマスはこれらの行為を意図的に行い、人道に対する重大な犯罪を犯しています。 女性や子どもを含む1,200人が殺害され、251人がガザへと拉致された昨年10月7日のハマスによる大虐殺に対して、日本被団協 代表委員からの声明は見当たりませんでした。 このような比較は歴史を歪曲し、テロの犠牲者を貶めることになります。 ※写真は拉致されたシリ・ビバスさんと子どもたち。当時クフィールくんは10ヶ月、アリエルくんは4歳でした。彼らは今もなお、ガザでハマスのテロリストに人質として捕らわれています。<写真略>
https://x.com/GiladCohen_/status/1845233991454163208

これに対し「恥知らず」などと批判する投稿をいくつか目にしました。はっきり言って、講演でも論考でもない箕牧氏の「些細」な発言の一部にムキになるところが、後ろめたさの表れではないかと感じます。

イスラエル駐日大使、被団協代表委員のガザ発言批判 Xの投稿で | 毎日新聞

「恥ずかしくないのか」「恥を知れと言いたい」(出所は略します)――まったく同感ですが、どうも、それだけではまだ「言い足りない」気がしてきました。

 今朝の毎日新聞の1面は少し異例でした。衆院選明日公示のニュースを脇に押しやって、トップに据えられたのは、イスラエル軍が戦闘で使用している砲弾には、無数の細かい金属片が混入され、その分殺傷能力が高まっていること、これを住宅密集地で使っているために、負傷者の中には外見上皮膚に1~2㍉程度の小さな穴が開いているだけなのに、体内では筋肉や内臓が引き裂かれるなど、異常な大けがを負っている例が多いことを伝える記事でした。結果、この金属片のせいで、手足を切断しなければならなくなった人が、昨年10月の戦争開始から12,000人以上、そのうち4,000人が子どもということで、記事には少女の写真が付されています。横になってスマホを操作している女の子の左足はギプスで固定され白い包帯が巻かれていますが、よく見ると、右足の下がないのです。

ガザで4000人の子供が手足切断 イスラエルが使った「特殊兵器」 | 毎日新聞

 イスラエルのコーエン大使は、自らの投稿にハマスの人質となった母子の写真を(わざわざ)掲載していますが、では翻って、右足を失ったこの女の子の写真にはどんな感想をもつのでしょう。「ハマスは……人道に対する重大な犯罪を犯している」と記していますが、この子をこんな目にあわせたイスラエル軍には「人道上の罪」がないのか。この子の親ならもちろんのこと、そうでなくとも、自分の子どもがこんな目にあわされて、「先に手を出した自分たちが悪いんだからしかたない」「自業自得」だなどと思う人はいないでしょう。そもそも、この女の子はイスラエルに何をしたというのでしょうか。ハマスがテロ組織というなら、現状イスラエルハマス以上のテロ国家です。殺害されたイスラエル側の人の数字を出すなら、殺されたガザの人々の数に触れないのは不公平、というより卑怯です。「大虐殺」や「歴史の歪曲」などという言葉(非難)を他者には向けても、自分には向けない。

 箕牧氏は3歳のときに広島で被爆したそうです。「ガザでの紛争で傷ついた子どもたち」を見ていて「原爆孤児」を思い浮かべ、「(姿が)重なる」と述べても何ら不自然さはありません。
ガザで傷ついた子どもたち「原爆孤児と重なる」。被団協の箕牧智之さんが言及【ノーベル平和賞】 | ハフポスト WORLD

「不自然」なのは、命と生活を破壊し尽くされたガザの人々について一切触れない、考えようとしないコーエン氏の方です。この投稿は取り下げてしかるべきです。



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