ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「正直、公正、石破茂」

 昨日、ロシアのプーチン大統領について、20年も前の古い記事を読んで、興味深かったので、早朝まではそのことを書くつもりでいました。しかし、今朝新聞を眺めていて気が変わりました。

 毎日新聞・日曜の11~13面の「日曜クラブ」には、放送タレントの松尾貴史さんと心療内科医の海原純子さんのコラムが連載されています。松尾さんのコラムは4回に3回くらいは時事評論で、時に(いや、度々)日本の政治家の「生態」を痛快にぶった切る内容が多いのですが、海原さんが政治ネタを取り上げることはまれなケースで、今朝の新聞では、その珍しいことが、しかも二人とも同じネタをとりあげるという、ごくごくレアなことが起こりました。少し引用させてください。
 まずは、松尾さんから。

……石破氏の思想体系全てを知っているわけではないけれど、人柄は誠実じゃないかな、と思っていたのも事実。安倍氏が首相だった間の総裁選で、自身のスローガンとして「正直、公正、石破茂」と掲げた。その時も、おそらく本当にそう自覚しているのだろうと私は思っていた。石破氏がそれを掲げると、安倍氏を「不正直、不公正だ」と批判しているようだと横やりが入った。……
……総裁選の最中、候補だった小泉進次郎氏が「首相に就任したら直ちに衆議院を解散する」と主張したのに対し、石破氏は「国民に判断材料を提示するプロセスが必要」という趣旨の発言をしていた。にもかかわらず、総裁になった途端、悪い意味で「豹変」してしまった(引用者註――「君子豹変す」の「豹変」は、本来間違いを認めて是正し、その名誉を新たにするの意味で、それとは逆だということ)。間髪入れずに解散・総選挙だという。うそをつくつもりはなかったのかもしれないが、総裁選で石破氏に投票した勢力からの強いプレッシャーがあったのは想像に難くない。
 国民の多くが困窮する経済状況の改善も後回し、大地震で壊滅的な被害を受け、さらに激甚な豪雨で悲惨な状態になってしまった能登の、復興に道筋をつける補正予算の審議もしない。「今選挙をやれば勝てる!」という浅ましいもくろみで解散してしまった人物だったことに、ただただ驚いている。裏金などの疑いが残る議員の検証も調査も不十分なまま、旧統一教会とのつながりを断ち切れない、いわゆる「壺議員」と向き合うこともなく、選挙を「簡略化したみそぎ」としか捉えていないような所業ではないか。……

松尾貴史のちょっと違和感:総裁になったら豹変 迷走の結果なのか? | 毎日新聞

 つづいて、海原さんは以下のように書いています。

 毎日新聞の日曜日の連載をまとめた文庫本がオーディオブック化されることになった。その話を書こうと思っていたが、石破茂首相就任後の言動を見聞きして気分が変わった。
 今回の自民党総裁選は、関心を持つ人も多く、討論会の中継を見る機会もこれまでになく多かった。……
 ある報道番組で、能登地方の被災地の方々の一日も早く復興を支援してほしいという切実な声を総裁選前の石破さんに聞いてもらったとき、それを聞いていた石破さんは信頼できて期待が持てそうな気がした。
 首相になったら真っ先に被災地の支援を政府一丸となってスタートし、インフラを復旧させて、住まいや心が休まる場を提供してくれるのではないかと期待した。
 そうした期待が一瞬にして消えた解散・総選挙発言であった。私は政治評論家ではないが、ひとりの国民として、またひとりの心療内科医としてこの時期の解散・総選挙についてあんまりだ、と思う。この時期の選挙は被災地の人々や役所にとり酷であることは間違いない。
 これは例えば、大けがをして病院に運ばれてきた人がいるときに、医師が病院内にいるのに「病院改革改善の会議をしているのでしばらくそのままお待ちください」と言うようなものではないか、と思った。痛みを抱える人は不安と怒りが起きて病院に対する不信が起きるはずだ。
 被災地の映像を見ると息をのむような悲惨な状態だ。80歳の女性が家の片づけをしながら、「地震の時より心が折れる」と語っていた。濁流で流された少女の父親が涙をこらえて取材を受けていた。心の危機は一刻も早い支援が必要で、政治でしかできないことがたくさんあり、それを今すぐにしてほしいと思う。

 (支援には、①直接支援=水や食料、②情報支援、③共感支援=現場で話を聞くなどのほか)……第四に「援助への期待」という支援がある。これは「あの人なら何かやってくれるだろう」という期待感と希望が心を支える支援になるということなのだ。人は暗闇の中でも一筋の希望があると心を支えることができる。医療も同じだが病気になったとき病院に着いて信頼感の持てる医師の顔を見たとたん不安が消えた経験をお持ちの方もいるのではないだろうか。援助への期待とはそういう心の支えだ。……
新・心のサプリ:それ、今ですか?=海原純子 | 毎日新聞

 立憲民主党の野田氏も、党首討論で「あの(能登の)被災地を見て選挙ができると思ったのか。到底できないと思うはずだ。その目は節穴なのか」と石破氏を強い口調で批判していました。
野党“裏金隠し解散”と批判 石破首相「判断国民に委ねたい」衆議院解散を前に党首討論 | NHK | 国会

 もちろんリーダーの立場になって組織の舵取りを担うとなれば、組織内のパワーバランスをとらざるをえず、個人的な思いに反することでもやらざるを得ない面はあるでしょう。これはたとえ政権交代立憲民主党が政権を担うことになったとしても同じことが起こるでしょうし、これはどんな政党、どんな個人にでも起こりうることで、石破首相の場合も、党内力学を勘案すれば、「本意でないこと」をやむなくしていると、「好意的」に解釈することもできなくはありません。しかし、個人的には、現状で選挙どころではない被災地の状況を顧みていないという一点をもって、この掌返しの解散・総選挙はアウトだと思っています。

 とはいえ、選挙は今月27日です。実務を担う職員にはぼやいている暇さえないでしょう。能登の市町村では日常業務(当然災害復興の仕事も含まれます)の隙間に選挙の準備をしているという話です。輪島市の職員が、「せめて、11月なら…」とため息をついたという新聞記事を読んで、痛切な思いがしました。
「せめて11月なら…」 二重被災の渦中に衆院選、能登のため息 | 毎日新聞

「投票先考えるどころでは」
 投票所も地震や豪雨の影響で通常通り開設できない。輪島市では20カ所のうち2カ所が使えない見通し。このうち、西保地区は道路が寸断されて開設自体が困難に。坂本課長は「西保地区は多くの人が市役所近くの仮設住宅におり、こちらの投票区に併せることを検討している」と説明。町野地区は2カ所のうちの一つが避難所とボランティア拠点となっているため、仮設住宅の集会所を期日前投票所とする。
 珠洲市も投票所19カ所中6カ所が避難所になっており、投票所を10カ所に集約する。投票時間も午前7時~午後6時とするなど、全面的に短縮する。市内の若山公民館も避難所となっていて、今回は投票所が開設されない。豪雨で自宅1階が泥水につかり避難している女性(77)は「被災直後の状況を見た上で、解散・総選挙の話をしてほしかった」と訴える。生活の見通しが立たず、投票先を考える余裕もないという。地元地区は高齢者ばかりで、運転免許を返納した人もいる。「足が悪く、投票所へ行くバスがなければ投票を諦めるしかない」

 ポスター掲示板の法定数通りの設置も難しい。珠洲市選管は、首相就任前の石破茂自民党総裁が解散を口にする前から、掲示板の設置数について議論してきた。通常145カ所に設置するが、土砂崩れの危険性などを考慮し、今回は80カ所程度になるという。
 掲示板の設置数は投票区の人口と面積に応じて決まる。県選管によると、今回は1投票区あたり1カ所でよいという見解が国から示されている。市選管は各仮設住宅を経由する市営バスを利用し、投票を呼び掛けていく。陣祐喜和・市総務課行政専門員は「日程が迫っており、しっかり準備するしかない」という。

立会人の確保も見通せず
 投票立会人の確保にも困難がつきまとう。公職選挙法は、各投票所に選挙権を持つ立会人を2~5人置くと規定している。輪島市ではこれまで文書を郵送して依頼してきた。坂本課長は「これまでお願いしてきた人の中には、遠方も含めて避難している人が相当いると思う。十分確保できるか、全く見えない」。準備期間が短いことも負担となっている。市選管には専任職員がおらず、日々の業務の合間に準備を進めているためだ。坂本課長は「せめて、11月なら……」とため息をついた。

 石破氏個人をいくらなじっても、自民党が選挙の結果、過半数割れにでもならない限り、国民の大半はこれを受け入れた=承知したということになってしまいます。こうなると、石破氏が「人でなし」というより、国民(の総意)が「人でなし」ということでしょう。そうならないよう一票を投じないといけないと改めて思います。



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