ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「はんこ」と「写真」

 あまり詳しくは書けませんが、行きがかり上、「身寄り」がなく亡くなった方の遺品の整理をすることになり、数日いろいろなものを片付けたのですが、予想どおりというか、たくさんの写真が出てきてしまい、どうしたものかと困惑しました。結局、何枚かだけは残して、あとは処分することにしましたが、さすがにこれは他のものとちがって「機械的に」というわけにはいきません。

 そんなもやもやとした感じをもって、法学者の水島朝穂さんが自身のHPに掲載している11月14日付記事「『はんこ』と『ベルトコンベア』――法務大臣という職(その2)」を読みました。先週「死刑のはんこ」発言などがもとで葉梨康弘法務大臣が辞任しましたが、「ベルトコンベア」という表現が、写真の「機械的処分」と「共振」したほか、死刑という刑罰と法務大臣の職責や、歴代の法務大臣が死刑とどう向きあってきたのかについてなど、いろいろと考えさせられました。
平和憲法のメッセージ

 記事で、オウム真理教の教団幹部の死刑が執行された2018年7月6日の前夜、赤坂の議員宿舎では「赤坂自民亭」なる酒宴が開かれていたことに触れられていて、改めて当時のことを思い起こしました。この夜、西日本には記録的な大雨が降り「大雨特別警報」が出されていましたが、酒宴はその最中の催しであり、世間から大きな非難を浴びたことはまだ記憶に新しいところで、ある意味、自民党政治の象徴と言ってもいい話だと思いました。当該部分の引用をお許しください。

死刑執行の前夜、飲み会を仕切る法務大臣
2018年7月6日、オウム真理教元代表松本智津夫麻原彰晃)死刑囚ら教団元幹部7人の死刑が執行された。執行前夜、赤坂議員宿舎で開かれた「赤坂自民亭」なる飲み会において、「死刑のはんこ」を押した上川大臣が「女将」(おかみ)役をやったとされている。首相の隣に座り「いいね」のポーズをとっている(片山さつき参議院議員ツイッター2018年7月5日22:58の写真)。親指を立てるのはツイッターの「いいね」もあるが、中東では非常に下品なしぐさで、ヨーロッパでもギリシャでは侮辱のサインになるという。死刑執行命令書への署名と「死刑のはんこ」のために使った右手を、その直後にこのように使ったわけである。しかも、この時間帯は、西日本に「大雨特別警報」が出され、「西日本豪雨」として記録される大きな被害が出ていた頃だった。直言「「危機」における指導者の言葉と所作(その2)――西日本豪雨と「赤坂自民亭」」をお読みいただきたい。
この「直言」のなかで、上川を私はこう批判している。「…同一事件で7人もの大量の死刑執行を命令してその執行を翌日に控えて、それを決定した本人が「いいね」ポーズをとるというのは、大臣以前に人間としてどうなのか。末席でおとなしく飲むのではなく、「女将」役で場を盛り上げたようなので、なおさら理解できない。この政権はとっくに底が抜けているが、これはあまりにもひどい。…」と。

 水島さんは終わりに、「『死刑のはんこ』という言葉を葉梨が広く意識させてしまったことにより、死刑執行の最終手続である大臣署名のハードルが一気にあがってしまったのではないか。今後、法務大臣は死刑の決裁にあたり、常に『葉梨康弘』というトラウマを抱えていかなければならない。」と書いています。
 そうであって欲しいと思いつつも、死刑決裁のはんこ(花押)がトラウマになるような感覚の人が、現状、法務大臣に任命されるようにはあまり思えません。「死刑のはんこ」が死刑の終わりの始まりとなるかどうかは、葉梨大臣がウケ狙いの「はんこ」発言をくり返し、それが受容された「土壌」とどう向きあうかという問題でもあると感じました。そういう「土壌」はそこら中にありますから。



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