ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

アイテムとしての「電力需給逼迫」

 時事通信が9月9日から12日に行った世論調査によると、岸田内閣の支持率は前月比でー12.0ポイントの32.3%、不支持率は同+11.5ポイントの40.0%で、初めて不支持率が支持率を上回ったということです。安倍氏国葬についても「反対」は51.9%、「賛成」は25.3%とのこと。この1ヶ月余りで様相は一変しました。
内閣支持32%、発足後最低 国葬反対51%―時事世論調査:時事ドットコム

 細野豪志衆院議員(自民党)が、支持率低下に「動じる必要はない」とTweetしていますが、併せて、GX(グリーン・トランスフォーメーション 脱炭素エネルギー転換)や電力システムの安定などをテーマに自民党が闊達に議論していると妙にアピールしています。「電力システムの安定」と「統一教会」を並べて、「国民にとって大事なこと」はどっちかと問うような物言いは少々引っかかります。
細野豪志 on Twitter: "内閣支持32%に動じる必要はない。自民党のエネルギー調査会では原発、再エネ、電力システムの安定など課題が闊達に議論された。GX会議の年内取りまとめに向けてエネルギー危機への対応が議論される。統一教会以上に国民にとって大事なことがある。与党の責任は大きい https://t.co/7ayrrnbe6K" / Twitter

 そういえば、昨日の夕方、政府が、この冬も夏に続いて節電要請をするというニュースを見ました。前もって警告しておこうという意味合いなのかもしれませんが、まだ9月半ばだしなあ、と。それに、今夏、電力受給が逼迫しそうなので節電を要請すると騒ぎ出したのは5月下旬だったと思うので、それから考えれば、ずいぶん早くに打ち出した感じがします。
 昨日(9月15日)付のNHKより(太字は当方が施しました)。
経産省 この冬の電力需給の「予備率」全国で3%確保の見通し | NHK | ウクライナ情勢

経済産業省は15日の審議会で、ことし12月から来年3月までの電力需給の見通しを示しました。
この見通しでは、10年に1度の厳しい寒さを想定していて、需給が最も厳しくなる来年1月の供給の余力を示す「予備率」は、
 ▼東京電力東北電力の管内で4.1%、
 ▼中部電力北陸電力関西電力中国電力四国電力九州電力の管内で4.8%、
 ▼北海道電力の管内で7.9%などとなっています。
また来年2月は、
 ▼東京電力東北電力の管内で4.9%、
 ▼そのほかの電力会社の管内は6%以上と、
全国すべての地域で安定供給に最低限必要な3%の予備率を確保できる見通しです。

ただ、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、火力発電の主な燃料であるLNG液化天然ガスの調達をめぐる状況は予断を許さないほか、ここ数年は想定を超える厳しい寒さで電力需要が高まるケースも相次いでいるとしています。
15日の審議会では、夏に続いてこの冬も、節電要請を行うことについて検討することが了承されました。
これを受けて経済産業省は、数値目標は設定せず、ことし12月から来年3月にかけて全国を対象に、無理のない範囲で節電を呼びかける方向で調整する方針です。

松野官房長官は、午前の記者会見で「この冬の電力需給は、6月時点における見通しから、火力発電所の復旧前倒しや原子力発電所の稼働により改善する見通しとなったものの、東北・東京エリアの来年1月の予備率が4.1%と見込まれるなど、依然として厳しい見通しだ」……
そのうえで「電力の安定供給確保に向けて、引き続き、休止中の火力発電所の稼働や必要な燃料調達、原子力発電所の稼働の確保などに全力で取り組む。節電要請の必要性については、経済産業省の審議会での議論の結果を踏まえ適切に対応していきたい」と述べました。……
 

 用心に越したことはないので、「10年に1度の厳しい寒さを想定」というのは、大げさと思いつつ、まあいいとしても、「ここ数年は想定を超える厳しい寒さで」というのはどうなのでしょうか。気象庁が出しているデータを見ると、地域によってちがいはあるにせよ、全国的にここ5年で寒さが目立つのは2017年末から2018年の冬シーズン、および、しいて追加すれば、今年の1・2月です。これで「ここ数年」というのだとしたら、今年の1・2月という直近の記憶に引っ張られ過ぎです。もちろん数日間大寒波に見舞われて電力需要が一時的に高まって、にっちもさっちもいかなくなるということもあり得ますが、それなら、言い方も変わってくるでしょう。どういう「想定」をしていたのかわかりませんが、結論ありきの我田引水的な強弁であることは否めません。

         北日本   東日本   西日本 
16年12月  +0.4  +1.0  +1.3
17年 1月  -0.1  +0.2  +0.3
    2月  +0.7  +0.2  -0.1
   12月  -1.2  -1.0  -1.6
18年 1月  +0.3  -0.7  -1.1
    2月  -1.2  -1.0  -1.6
   12月  +0.1  +0.8  +1.0
19年 1月  +0.2  +0.3  +0.9
    2月  +0.4  +1.4  +1.4
   12月  +0.4  +1.4  +1.4
20年 1月  +1.3  +2.5  +2.6
    2月  +1.1  +2.0  +1.6
   12月  -0.7   0.0  -0.5
21年 1月  -1.0  +0.1   0.0
    2月  +0.7  +2.0  +2.1
   12月  +0.5  +0.2   0.0
22年 1月  -0.2  -0.6  -0.2
    2月  +0.1  -1.0  -1.4
(※数字は平年値との±℃)
気象庁|過去の地域平均気象データ検索

 気象庁は、ラニーニャ現象が収まっていないので、今年の冬について、西日本に寒気が入りやすく、寒くなるのではないかと予想しています(昨年は予想的中でした)。その限りで、電力需給が厳しくなるゆえ、節電にご協力をという話なら、ケチもつけませんが、選挙前や政権批判が強まるタイミングになると、急に「電力」の話が持ち出されるとなると、どうにも世論操作のにおいが漂ってきます。

 安倍氏が亡くなり、旧統一教会を介した北朝鮮とのパイプが失われれば、以前のように北朝鮮がジャスト・イン・タイムで日本海にミサイルを飛ばすことはなくなると囁かれていて、これをすべて真に受けるわけにもいきませんが、しかし、北朝鮮のミサイルが、ある時期、国民の危機感を煽り、やっぱり最後に頼れるのは政権与党=自民党だという国民の「保守性」に作用する「現状維持の方程式」の役割を果たしてきたことは、的外れではないでしょう。もし、安倍政権時代のようにミサイルが飛ばなければ、その「代替品」として、同時にまた、原子力発電もやむなしという気分にさせる「装置」として、「電力需給逼迫」は格好のアイテム(小道具)です。インパクトは大きくなくても、国民の生活感覚にはじわじわと効いてきます。通奏低音のように響かせておいて、ちょっとした寒波であっても、メディアを使ってタイミングよく大々的に騒げば、世論が大きく左右されること、受け合いでしょう。「数値目標を設定せず」というのも、あとで妥当性を検証されないようにする予防線ではないかと思えます。
 もちろん、これは見方が穿っているだけかもしれません。しかし、旧統一教会から寄付を受けていた事実のある細野・衆院議員から、「統一教会」以上に「大事」な問題があるなどと言われて、この件を出されると、釈然としません。少なくとも「統一教会問題にケリをつけたら(次は)」と言うべきでしょう。
収支報告書に旧統一教会系の寄付 自民調査、細野氏記載なし:中日新聞しずおかWeb






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