今日は短く。
政治家にとって「外遊」とは何なのか、文字通り「外国に遊びに行く」感覚なのではと思うことがたびたびです(「遊」とは「よその土地に出かけて、学んだり、見聞を深めたり、気晴らしをすること」を意味するようですが、今や「気晴らし」が主になっているようです)。それを最初に感じたのは、小泉純一郎元総理のときでした。どうしてこの国へという疑問とともに、とにかく頻繁に出かけていた記憶があります。調べてみると、在任期間の5年余りの間で、回った国・地域が49と、まるで公費で外国旅行ができるうちにとにかく行ってしまえ、ということなのではと思えるほどです。安倍晋三氏に至っては、それをはるかに超える80カ国・地域です。氏にかぎらず、首相であれば、4・5月のGW中に、どこかに出かけるのが恒例になっていて、これは、税金をつかった外国出張というより、お供を引き連れた「特権者御一行様」の外国旅行という感覚ではないかと思います。
総理大臣の外国訪問一覧|外務省
首相の外遊、5年1カ月で76カ国・地域 小泉氏上回る:朝日新聞デジタル
それでも外交上、誰かが国を代表して出て行かないといけない場合は確かにあるでしょう。先頃英国のエリザベス女王が亡くなって、葬儀をするとなれば、遠い日本からでも弔問するのは普通の成り行きです。天皇は英国留学の経験があるので、自ら赴く意向であるというのも、これまた普通の成り行きでしょう。しかし、岸田首相が自分も行くと「名乗り」を上げるのは、どんなものなのでしょう? やはり、その意図や思惑に訝しい感じをもってしまいます。
昨日9月12日付神奈川新聞の記事より。
岸田首相、英女王国葬参列を検討 沖縄敗北を外交で挽回? | カナロコ by 神奈川新聞
「しくじり対応」とか「瞬殺」とか――自民党の関係者というのは、カメラを向けられると「お答えは差し控える」と何もしゃべりませんが、匿名だと実に「愉快」(痛快)なことを言いますね。
それはともかく、記事によれば、岸田首相はもともと今月下旬にニューヨークで行われる国連総会に出席予定だったので、その前に英国に立ち寄って国葬に参列し、各国首脳と対話の機会を持つという「戦略的」構想をもっているとのことです。もちろん、この「戦略」には、失態続きの上に、沖縄の知事選開票速報で「瞬殺」「ゼロ打ち」された「汚名」挽回の気持ちが働いているかも知れません。しかし、もし、「気晴らし」の意図が含まれるなら(いや、この場合、「気晴らし」でなくとも)、帰国後、手痛い仕打ちにあうように思います。
天皇が参列するのに首相も参列すべきなのか、という疑問はもちろんですが、外務省関係者が「安倍氏の国葬がかすみかねない」と懸念するように、岸田首相が英国の国葬に赴いて弔問外交の「一員」になれば、その一週間後の安倍国葬儀の弔問外交は二番煎じ以下になるわけですから、あれほど強調していた国葬儀の大義名分はさらになくなるでしょう。自分で自分の首を絞めているようなものです。そして、見ている多くの国民は、やはりどこか誇りを傷つけられたような気持ちがして、思うでしょう。この政権ではやっぱりダメなんではないかと。
「日本を代表し両陛下が出席される見込みなのに岸田総理が出向く必要があるのか。それなら早く国会を開け」「それとも安倍氏の国葬の来賓が貧弱で物足りないからか」という立憲民主党の幹部の皮肉には、「バイデン大統領(主人)が参列するから岸田総理(ハチ)も行くのか」あるいは「日本にいなければ壺を見なくて済むからね」を加えてもいいと思います。
<追記>
国連総会は9月20日から26日までニューヨークで開かれるようです。岸田首相は、19日の英国葬に出て、国連総会にも顔を出してと、「国葬儀」の前の週は忙しくなりそうです。葬儀委員長だけに、くれぐれもご自愛のほどを。
それにしても、どうして「国葬儀」を9月下旬にやることにしたのか。「お別れの会」というなら間が空くのもわかりますが、葬儀で故人の死から2ヶ月以上も間を開ける。ひょっとして五輪汚職の捜査が関係してるんでは……。
国連総会と日程丸被りで海外要人から総スカン…岸田首相「国葬」の大誤算(2ページ目) | 女性自身
<追記2>
顛末。首相も側近たちも「入れ食い」状態の魚だということがわかりました。
「招待枠もないのに先走り」岸田首相が英女王国葬参列見送り 準備の関係省庁から不満(カナロコ by 神奈川新聞) - Yahoo!ニュース
↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。