ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「国葬」の費用と業者選定のこと

 学校では学校生活の思い出写真集を「卒業アルバム」として子どもの卒業時に渡すことが慣例になっています。小生も教職員として何度かこの係になり、業者選定や撮影の手配などに関わったことがあります。業者選定については、1990年代くらいまでは、地元の写真屋さんとか、馴染みの業者に頼むことが多く、毎年だいたい同じところになる傾向がありましたが、世紀が変わった頃から、競争入札をする決まりになって、得体の知れない業者が参入するようなケースも出てきました。時代によって、学校規模(生徒数)によって、金額が変わってくるとは思いますが、単純に1冊1万円と仮定して、これに生徒数を乗じれば(実際は単価よりも総額の方が先だと思います)、けっこうな金額が動くわけで、業者にとっては、この仕事を3つか、4つ受注すれば、それでもう1,000万円かそれを超える仕事になります。修学旅行などは一人当たりの額がもっと高額ですから、業者にとっては、1校受注できるかどうかだけでも大問題でしょう。競争入札など面倒な作業とはいえ、公立学校で公金を預かる立場からすれば、子どもや親に対し、公正性を担保してきちんと業者を選びましたと説明できることは大切です(もっとも、最近はコロナ感染で卒業アルバムも修学旅行も、過去のようにはいかなくなっているという方が大問題ですが)。

 ところが、「下々」がこうやって手続きを踏んでいるのに、なぜか政府の関わる「業者選定」には不透明感がつきまといます。安倍氏の「国葬」について、官房長官は、税金をつかって葬儀をやるというのに、総額を明らかにするのは終わってからなどと「公明正大」からかけ離れたことを言っていますが、この「国葬」についても同様です。
 昨日、安倍氏の「国葬」の企画・演出の業務を、東京都内のイベント会社が1億7,600万円で落札したことが判明しました。入札したのは同社だけだったそうです。しかし、この業者、2014年から5回にわたり、「桜を見る会」の業務を落札していて、特に2017年から2019年の3年は入札前に内閣府と打ち合わせしていたことが発覚した “いわくつき” の業者です。

安倍晋三元首相の国葬、東京のイベント会社「ムラヤマ」が1億7600万円で落札 入札は同社だけか - 社会 : 日刊スポーツ

安倍元首相の国葬が「24時間テレビ」的 “お涙ちょうだい” 演出の可能性…落札した「ムラヤマ」は日本テレビHD100%子会社と判明 | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]

 当時の衆院内閣委員会でのやりとりをbuuさんが文字に起こしているものを拝見しましたが、普通こういう「前科」があったら、入札から外れてもいいくらいです。それが、「外される」どころか、中曽根合同葬も受注したうえに、今度の安倍国葬もほぼ独占的に受注するというのですから、これは安倍氏の亡霊が徘徊して差配しているのではないかと思えてしまいます。
https://twitter.com/buu34/status/1131797188068069376

 以下、2019年5月24日の内閣委員会で立憲民主党初鹿明博議員が「桜を見る会」について質問した部分の概略の引用です。
第198回国会 内閣委員会 第19号(令和元年5月24日(金曜日))

 初鹿:……総理主催の桜を見る会の予算が三倍に膨らんでいる、そういう指摘がありますので、その点について取り上げさせていただきます。……予算の額として計上しているのは1,766万6千円で、(平成)26年からずっと変わっていないんですよ。ところが、実際に支出した額というのは、26年が、この時点から予算額よりも多いんですよ、3,000万なんですよ、約3,000万。それで30年度は5,200万を超えているというように、1.5倍ぐらいに金額がなっていて、予算額からすると3倍になっている。
 この予算の計上の仕方というのは明らかにおかしいと思うんですよね。前年度、この予算の範囲で足りないんだったら、次の年は実際に使った金額に応じた予算計上をするべきだと思うんですよね。そもそも予算の範囲で事業は行うべきだと思います。これができないんだったら、やはりきちんと実際に合う予算額を出す必要があると思いますが、これは不適切だと思いませんか。……

 井野政府参考人桜を見る会につきましては、準備、設営に必要最低限となる経費を前提に予算を計上しているところでございます。他方、実際の開催に当たりましては、その時々の情勢を踏まえ必要な支出を行っており、結果的に予算額を上回る経費がかかっているところでございます。来年度以降につきましては、これまでの予算計上の考え方及び実際の支出状況などを踏まえつつ対応してまいりたいと考えております。
 初鹿:何か、結果として多くかかったような言い方をしているんですが、それはうそでしょう。何でかといったら、会場設営業務、飲食物提供業務というように、2つの業務を企業に受注させているわけですよね、入札をして。もうこの時点で金額がオーバーしているわけですよ。つまり、結果としてふえているんじゃなくて、最初からこの予算よりも多く支出することを決めてやっているわけですよ。これはやはり不適切過ぎると指摘をさせていただきます。
 その上で、この会場等設営業務、見ていただきたいんですが、まず、飲食物提供業務もそうなんですが、ずっと同じ会社がとり続けているんですね。ずっと同じ会社なんですよ。
 それぞれいきますけれども、まず会場等設営業務なんですが、26年は744万6,600円でした。それが、平成30年になると1,600万、31年は1,800万と倍以上になるんですよね。設営ですから、人数が、参加者の数がふえれば、それなりに対応する人もふえるから多少ふえることはあり得るのかもしれませんけれども、それにしても、人数のふえ方に比べて金額のふえ方が大きい。
 一人当たりの金額というものを割り出してみました。そうしたら、26年は一人当たり544円だったのが、31年は997円と倍になっているわけですよね。つまり、一人当たりの経費も上がっている。こうやってウナギ登りになっているんですよ。
 また、私、非常に不可解だなと思ったのは、これは一般競争入札なんですが、実は、入札がきちんと行われたのは26年だけで、……26年は確かに3社応募していて、ムラヤマが落としているんですね。それ以降は一者応札なんですよね。ずっと一者なんです。
 私は何が一番不可解かというと、同じ業務を行うわけです、桜を見る会と。それで、きのう確認をしたら、参加者数は、入札を行う時点では前年よりふえるのかどうかわからないということなんですね。つまり前年と同じことをやるのに、このムラヤマという企業は前年よりも高い金額で入札しているんですよ。
 確認ですけれども、一般競争入札ですから、予定価格があって、予定価格をオーバーしたら落札できないですよね。

 井野:御指摘のとおりだと思っております。
 初鹿:ここを皆さん考えてもらいたいんですよ。前年やったのと同じことをやる、入札で一番安い金額が落とされる、入札する時点では競争相手がいるかどうかわからない、その段階で前年よりも高い金額を毎年入れているんですよ。不自然だと思いませんか。入札の金額が前年よりも高い、そういう自信がなければ高い札は入れられませんよ。まあ、26年は入札をしたから、もしかしたら予定価格よりもかなり安くとったかもしれません。しかし、これを見てください。27年が1,000万だったのが、28年は1,400万。前年と同じことをやるのに400万円も高い金額を入れる。結構な勇気ですよね。これは、どう考えても、この予定価格を知っていたんじゃないかと疑わざるを得ないような、そういう状況です。……
  井野:同一業者が続いているとの御指摘でございますけれども、一般競争入札への参加はそれぞれの企業の判断によるものでございまして、当該業務につきましては、公正な一般競争入札を経て、結果的に同一業者が落札しているというものでございます。
 初鹿:私が問題にしているのは、同じ業者がずっと落札していることを問題にしているんじゃなくて、同じことをやっているのに次の年に高い金額を入札している、なぜ高い金額を入れられるのかということが不自然じゃないのかと言っているんですね。
 落札率を聞けというお話がありましたが、きのう、落札率をでは出してくれと言ったら、そうすると予定価格がわかるから公表できませんというお答えだったんですが、これはやはり不自然なので、落札率、予定価格が幾らだったのか、全て、もう済んだことですから、明らかにしてください。いかがですか。

 井野:終了した事業の落札率、予定価格につきましても、同種の契約の予定価格の類推が容易となりますので、非公表とさせていただいております。
 初鹿:それだと不可解なことがわからないから、これは公表すべきだと思いますよ。
 では、何で、毎年同じことをやるのに高い金額を入れられるのか、その根拠を教えてください。仕様書が明らかに変わっているようなところがあるんですか。どこでこの予定価格が変わるのか。
 予定価格の決定は誰が行って、積算はどなたがやっているのか、どういう根拠があるのかということをまず教えてください。

 井野:予定価格の積算方法ですとかその決定過程の御質問でございますけれども、予定価格は、その内容を公表することにより、予定する価格が類推され、公正な競争が阻害されるおそれがございますので、積算方法を含め、非公表とさせていただいております。
 初鹿:皆さん、これ、納得できますか。与党の皆さんも納得できますか。さすがに与党の皆さんだって、こんな、同じことを毎年やっているのに、どんどんどんどん予定価格が上がっていて、その予定価格に合うように同じ業者が金額を上げて入札し続けている、これを不自然だと思わないでいられるのか。本当に不思議ですよ。皆さん、多分、不自然だと思っていると思います。ぜひ、予定価格、済んだところでいいですから、公表することをお願いをいたします。答弁はもういいです。……
<以下略>

 卒業アルバムや修学旅行の金額や業者の選定に疑義が生じて、学校からこんな説明をされて納得する保護者はおそらくいないでしょう。それを懲りもせずに、政府も業者も「国葬」でまた同じことをやろうというのでしょうか。




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