ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

国葬の「踏み絵」効果

 「二度目の梅雨明け」の炎天下に共同作業が入って朝からけっこう忙しかったです。今日も短く。

 日本人は和を尊ぶとよく言われます。これが個性を押し潰す同調圧力のスローガンとしてよく利用されるので、あまり真に受けるわけにもいきませんが、百歩譲って、結果として、無意味な争いが避けられ、個々の命が守られるのであれば、一定程度認めるにやぶさかではありません。しかし、政治権力が国民に対立の種を撒いておいて、「和を尊べ」と言うのだとしたら、それは国民に「踏み絵」を迫ることになるのではないか。その結果、「和が尊ばれる」保証がなくなる危険性もあります。
 亡くなった安倍氏の葬儀について、政権は危うい舵切りをしたように思います。

 7月23日付のデモクラシータイムスでは、安倍氏国葬をめぐる国論の分断が議論されていました。出演者のひとり、ジャーナリストの齋藤貴男さんの、国葬についてのコメントを聞いていて、国葬の「踏み絵」効果が心配になりました。以下、話の概略です。

「安倍国葬」国論の分裂と統一教会 コロナ再拡大の危機的状況 WeN20220723 - YouTube

 ……僕は、安倍さんが国葬に値するかどうかというのは、悪いんですけど、どうでもよくて、どれほど立派な人でも、国葬などやってはいかんと思っているんですね。官房長官が、これは押しつけるものではないと言ったり、学校などを休みにしないと言ってますが、自治体によっては、学校が勝手に休みにしたりするでしょう。中曽根さんのときは内閣と自民党の合同葬だったんですけど、そのときも国立大学のかなりの部分が半旗を揚げたりしていますよね。だから、強権的な首長がいる自治体の学校はたぶん休みにするでしょうし、黙祷もやったりするでしょう。ですから確実に「神格化」につながると思います。
 もうひとつ、国葬を行う根拠があまりにひどい。内閣府の設置法がどうのと言ってますが、その法律では、国の儀式は内閣の仕事だと言っているだけですから、何でこれを国の葬式にしなければならないのかという根拠には何もなっていない。単に事務的な手続きを書いてあるだけなんですから。それなのに、そこに書いてあるから閣議決定だけでいいという、そんなめちゃくちゃな話はないんで、これはすでに法治国家じゃないんじゃないのかと思いますね。
 最近少しずつ言われるようになってきましたが、一番怖いのは、こうやって国葬に反対の意見を上げている人はいっぱいいるわけですね。中には有名人もたくさんいます。そういう人たちのネットの記事を見ると、それに対する罵詈雑言がものすごいんですね。今までもそういう誹謗中傷はありましたけど、それに輪をかけて凄まじい非難があると。そういう状態を見ていくと、これをきっかけに、これが、あるべき「国民」とそうでない「非国民」とを分ける「踏み絵」にされるんじゃないかと思います。もうすでに社会は分断化されていますが、その分断の溝がさらにさらに深まって、あまり言いたくないけれど、第二第三の惨劇につながりかねない。それほどの恐怖を覚えています。とっくの昔にバラバラにされた社会を、国が率先してさらに無茶苦茶にしようという異常さはちょっと信じがたいですね。今からでも遅くないから、これはどうしても止めてもらいたいと思います。……

 国葬に対する賛否は調査機関によって異なるとは思いますが、番組で紹介されたアンケート調査(「SNSこちら編集局」の登録者対象 母数不明)では、
 安倍氏の「国葬」に
 〇賛成         31.0(男37.0 女25.4)
 〇どちらかといえば賛成 12.8(男 9.7 女15.1)
 〇どちらかといえば反対 16.1(男12.7 女18.5)
 〇反対         33.5(男35.3 女31.9)
 〇どちらともいえない   7.5(男 5.3 女 9.1)
  

年代別では、
 ☆20代で 賛成・どちらかといえば賛成が 59.4 
      反対・どちらかといえば反対が 36.5
 ☆60代で 賛成・どちらかといえば賛成が 31.6
      反対・どちらかといえば反対が 60.4

と世代差が大きくなっています。

 これだけでは何とも言えませんが、茂木幹事長が断言するほど、国葬賛成の世論が趨勢とは言えないように思います。こんな状況に問答無用なやり方を錦の御旗で飾ると、どういうことになるか。嫌なことを想像してしまいます。




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